79話 VRなチャットで癒され――るはずが、なぜか押し倒された
「メジャーデビューしたのに、わざわざ古参のところに足を運んでくれる……アイドルの鏡ですね……!」
「こ、こんなのすぐに忘れられますって……」
謎の身体異常を覚えた僕は家に帰ってから制服を脱ぎ――流れるように今日の服はちょっと丈も短ければ肩も出ていて胸元も危ない、挑発気味のワンピース――そしてVRゴーグルとか機材諸々を装着。
ちなみに今日に限っては胸元の詰め物は無し。
……だってあんなすっごく重い爆偽乳を2日間も吊り下げられていたんだ、肩こりも酷いし、外したら外したで明らかに重心が後ろになって、なんか後ろにすっ転びそうで危ないし……。
「おやレイちゃん、今日もかわいいねぇ」
「お前、今日も来てるのか……邪魔はするなよ」
「さぁてねぇ」
そんなこんなで無事、学校での打ち上げを終えた僕は日常/VRなチャットへと戻ってきたんだ。
「すごいですよねぇレイさん、フォロワーの爆発っぷり」
「あれがバズってやつか……」
「まぁレイさんならいつかって思ってましたけどね」
「そ、そうですか……」
――バーチャルの世界は、基本的にお互いを褒め合う文化。
良くも悪くもだけども大変に居心地が良いところなんだ。
結構頻繁に入り込んで出てこられなくなる事案が多発するのも、さもありなん。
うん……これ、自制できないと本当に危険な技術だよね……いつかフルダイブとか実現したらどうなっちゃうんだろう。
「けど、まさか……!」
「レイさんが、俺たちにこんなサービスを……!」
「あはは……このヒカリ――ちゃんがひと晩で用意してくれまして」
「ひと晩で――まぁ30分くらいでさくっとね」
そんな僕は、いつもの銀髪紅眼ケモ耳尻尾のシアノちゃんのアバターにメイド服の衣装を――しかもまた爆乳で。
「ふぅ……」
「でかい」
「ぷるっぷる震えてるよな」
「すごい……」
「触りたい人は触って良いですよ?」
「!?」
「!!!!」
「!?!?」
「おっと、それには俺ちんの許可を得てからにしてくだせぇ」
「……お前は僕の何なんだ……」
「なにって……プロデューサー的な?」
と、リアルでもただのシリコンスライムだったし、バーチャルでもただのデータだからってことで――リアルよりもさらにばいんばいんぶるんぶるんばるんばるんと荒ぶる胸元を見せつけるも、なぜかヒカリが前に出て邪魔をする。
「まぁ彼氏さんが居るからしょうがないか……」
ぽつり。
フレンドさんのひとりが、謎の言葉を口ずさむ。
「えっ」
「え!?」
「レイさんに彼氏……居るの……!?」
「炎上? 炎上案件ですか??」
「? 何言ってるんですか? 居るはずないじゃないですか」
「えっ」
「え?」
「えっ」
「え??」
「???」
なんだかすれ違いが起きているらしいけども――僕、男だよ?
男同士とかに偏見は特にないけども、僕自身はそういう傾向とかないし。
「え、でも……」
「ヒカリさん……」
「? ヒカリ?」
前に出て邪魔をしているヒカリの前に出ると――なぜか硬直している悪友。
「? おーい」
「 」
?
マイクでもおかしくなったかな……いや、そうならヘッドセットで見えなくてもひと声掛けてくれるはずだし……うーん?
「……まさか、彼氏ってこのチンピラ撃退の……」
「イケメン紳士がお姫様抱っこしたぼいんメイドさんを守りながら脚で吹っ飛ばすこの動画は……?」
「あ、はい。これはうちのクラスでの――どうせ知ってますから言いますけど、男装したヒカリ。ここにいるこいつですから」
「 」
「あっ……」
「あ、あー!!」
「あ、なるほど……」
「あの、やけに物知り顔な新規のフレンドさんたちが言ってたのって……」
「普段からのおふたりの態度とか近さとか……あー、なるほど……」
?
なにがなるほどなんだろう。
まぁ声を低くしてしゃべってるし、男っぽいし下品だしだから慣れてないと男に聞こえるけども、ここのフレンドさんたちは長い付き合いだからヒカリが肉体的には女だとは……知ってたと思ってたんだけどな。
リアル女子だけの女子会集会とか行ってたはずだし……もちろんバーチャルの。
「……つまり?」
「この動画とか写真の通りの関係性と……」
「あー」
「だーからいつもヒカリさんがレイさんを……」
「え? てことはレイさん、本当に男なの!?」
「そうだって、最初から何度も言ってるのに。信じてくれないんですから、もう」
「 」
「 」
「ああ、彼らはそっとしといたげてください」
「かわいそう」
「最後まで認めたくなかったんだよな。分かるよ」
「男の娘なのが良いんじゃないか!」
「女装子ですけど??」
わいわい。
軽い冗談を――そっか冗談だ、僕が無駄にバズった分いろいろあるだろうからって気を遣ってくれてのなんだ――交わしながら、次第にテンションも落ちついて普段通りになっていく、いつものフレンドさんの輪。
インスタンスへの上限人数から誰かが抜けるたびに新しくフレンドさんが入ってきて、また同じような気の遣い方をしてくれる。
ああ……VRなチャットがあったかいって本当だ。
あったかすぎてリアルからバーチャルに実質的に移住しちゃう人が多発して問題になっているのも、これまたさもありなん。
「ここのレイさん、かわいいですよねー」
「ちょっと、ワールドの壁一面にこの場面の動画流さないでくださいよー」
「良いじゃないですか、かわいいですし」
「そうですよ、まさに守られてる姫って感じですし」
「ひ、姫って……」
――――――――――ずくん。
「っ……」
まただ。
また――おへその下辺りが、腹痛とも違う熱いなにかが、一瞬だけど意識を刈り取ろうとしてくる。
あと、なぜか体に力が入らなくなるし、顔も急に火照ってくる。
息も荒くなるし……これ、なんなんだ……?
「……?」
「………………………………」
「ということは……レイさんには彼女さんが居るってことで?」
「いえ、僕には特段――」
「――ちょいと失礼」
――――――――――ぷつっ。
「……え? お、おい、なにを――」
急にヘッドセットの電源が――手動でオフにした表示が出て、落ちる。
慌てて外すと、デスクトップの画面では――フルトラッキングの状態なのに急にヘッドセットだけ落ちたもんだからすごいポーズになってるだろう僕を見て慌てているフレンドさんたちが映っている。
「ヒカリ、冗談も――――――――――」
「レイちゃん」
「え?」
――――――――――どさっ。
僕の体が――「2日間の労役のせいで、自然重心を背中に向けてた」僕の体が、押されるままに後ろへ――ぽふんと、ベッドへ倒れる。
「………………………………?」
「……レイちゃん」
「ヒカリ、それ、まだ続けるの? もう普段の『レイきゅん』じゃ――」
「レイちゃん」
ぎしっ。
「え?」
仰向けで倒れた僕の上に――同じくフルトラの機材だけを身に付けた状態のヒカリが――天上に背を向けているために顔がまったく見えない「彼女」が、乗っかってくる。
「……さすがに、半年掛けてこんだけアプローチしてるんだからさぁ……そろそろ、理解ってもらわないと……ね?」
◆◆◆
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