76話 女装メイド服喫茶な学園祭 8
「……クソッなんだ今の!?」
「な、なにしやがる!」
「いやいや、人のお姫様に手ぇ出して言うセリフがそれ? ほら見てよこの白くてほっそい手首と、萌え袖とか手袋とかセーターとかで隠さなくっても絶対バレないちっさい手の甲! おかげで自撮りが拡散しても意見が半々どころじゃなくお姫様認定のこのおてて! こーんなに赤くなっちゃって……」
「………………………………?」
え?
僕は宙に浮かんで……いや、体を支えられて?
「レイちゃんがかわいすぎて思わずその場でいただくなる気持ちはよく分かるけどさぁ。――――こちとら半年以上ずっと我慢してずっと育ててんの、プロの育成なの。そんな子を完成間近で、しかも勝手に奪おうだなんてさぁ……」
え?
育成?
なにが――って、これ!?
「ぼ、僕、ひか、光!? お前、なにを――」
「レイちゃんはかわゆいそのままで籠の中のお姫様してて。自然体の君がかわゆいんだからさ」
「え?」
「もう、にぶちんだなぁ。――――いい?」
ぐっと――光の、男装のために顔を後ろで束ね、顔は男らしく見せるメイクをしていて――一瞬、男にも見えるその顔が近づいてくる。
「――レイちゃんのハダカは、俺以外誰にも見せたくないって言ってんだよ」
「え、裸。………………………………!?」
「お、珍しくこういうのが通じるねぃレイちゃん。普段さりげなく言ってもぜんっぜん――」
「――イチャついてんじゃねぇぞおら!」
「よっ」
「女は早いもん勝ちだろ優男!」
「だね」
ぶんっ、ぶんっ。
「ひっ……」
「だーいじょうぶ。俺ちん、こう見えて鍛えてるからさ」
人を攻撃するのに躊躇のない拳や脚が飛んできて、思わず身をすくめるも――ぎゅっと抱きしめてくれる感覚。
「レイちゃんはインドアでぽわぽわしてて、なのに自分の価値に気づいてないもったいない子。そこがいいんだから、そのまま育てないとさぁ」
「え、育てるって……」
恐怖が薄れると、さっきの言葉が浮き上がってくる。
僕の裸を、人に見せたくない。
それって――いやいや、僕は男で、だから。
「いやぁ、大変だったんだぜぃ? クラスと学年と学校で根回しして、レイちゃんのこと気になってるっぽい子に先制攻撃したり撃退したり、あと野郎も時間経過でもりもり増えてきたし。ラブレターとか今どきあるんだねぇ……全部回収しといたけど」
たったっと走ったり、くるっとターンしたりと忙しく景色が変わり――ただ抱かれている状態で体を硬く丸める以外にできることのない僕は、気がついたら悪友だったはずの男装女子の肩にしがみついていて。
「レイちゃんもレイちゃんでオートメス堕ちとかオートメス堕ち巡回とかするから気も抜けなくてねぇ……ふらふらふらふら歩くし。あ、ご両親にはもう話通してるし、なんならうちの両親とディナーとか何回かお互いにする仲になってるから、あとはレイちゃんの気持ち次第なとこまで埋め切ってるんだけど」
「だからなにを言って――ひぅっ!?」
「こんな女みたいに細いヤツに女取られたとか認められるか!」
「……すんません……はい、センパイ好みの女見つけたんスけど……」
怒っている男の声が怖い。
怒りに任せた拳が怖い。
「……ひ、ひかりぃ……」
「 ……って、こんな場面で心臓止めないでくれるかなぁかわいすぎるレイきゅん!?」
あ、呼び方が戻っている。
……じゃない、景色が回りすぎて状況がまるで分からないけども、なんでこんな大事になってるんだ!?
「とにかく……さぁっ! ちょーっとかわいく仕立て上げすぎた……かなっ!」
「ぐはっ!? テメェ!?」
光の体がしなり、衝撃。
「……ふぅ……やっぱ素の体力差は圧倒的だね……しかもお姫様救出ミッション中だしぃ?」
「……あ、あははっ……あっぶねぇ。お前、んな体重軽そうな女でもう息上がってんのか? お姫様、今差し出すなら俺たちは許すぜ?」
「今こっちに向かってる俺たちのセンパイは分かんねぇけどなぁ! ひゃっはぁ!」
光が何度か撃退したものの、やっぱりケンカ慣れしているし――そもそも僕を抱えてるせいでそこまでの力を出せないだろう反撃では、目立った傷はない男たち。
「ひゃはっ、見ろ! 怯えてる顔めっちゃかわいいじゃん?」
「その顔、あとでホテルでたくさん見せ――」
「――ヒカリ殿、よくやったでござる」
「挑発しながら校庭からえんえん渡り廊下まで……がんばったわね」
「……ぅえ? リヒターさん、ルーチェさん……?」
「 」
「はいはい起きてリヒターくん、悪漢追っ払うんでしょ」
「……はっ!? あ、危ないところだったでござる……!」
リヒターさんとルーチェさんの社会人コンビが、いつの間にかそばに居る。
「チッ……ギャラリーが多いな」
「構うな、センパイの車が校門に――でででで!?」
「ふむ、柔術の経験は少ないようでござるな。お、ナイフ持っているでござるか、この後の話が早くて助かるでござる」
気がついたらリヒターさんが、男の1人を後ろから――腕をホールドしていて。
「な、なんだお前――」
「こら君たち! なにをやっている!」
騒ぎを聞きつけたのか、制服を着た警備の人が何人も走ってくる。
「おにいさぁーん! この2人とぉ、さっき廊下でみんなで拘束したこわーいお兄さんとぉ……あと校門前に乗り付けてるクルマのお兄さんとかがこの子、誘拐しようとしてましたぁ」
「なに!? 本当か!」
「と、とにかく明らかにその2人が怪しい!」
ルーチェさんが――甘い声を出している。
「な、なんだよお前ら!? どうして――」
「悪いねぇ、お兄さんたち」
僕の上で――怖かったからか、僕は気がついたら首元に両腕を回していたらしく、僕の顔のすぐ上にあるヒカリの口から、勝ち誇った声が漏れる。
「レイちゃんは、みんなの『姫』だから。こういうことに備えてずいぶん前から警戒はしてたってわけ。……レイちゃんをきゅんっとさせるお手伝い、アリガト♪」
◆◆◆
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