74話 女装メイド服喫茶な学園祭 6
「レイくん、どうにか接客される権利を……うわでっか」
「 」
「あ、ルーチェさん、リヒターさ……この名前で呼ばない方が?」
「良いの良いの、SNSでレイくんの身バレとかしてるのに比べたら! ね!」
「 」
「あー……リヒターくんにこの巨乳は致命傷だったかぁ」
「あはは……せ、席にご案内しますね……?」
2日目。
まさかのルーチェさんたちの襲来――以前に、話題になりすぎて今朝もすごい人で、整理券を手に入れるだけでかなりの幸運だったろうに。
――SNS。
昨日の夕方だけで収まってほしいと願っていた、主に中村のせいでの僕の盛大な身バレは――今朝になったらなんかトレンド入りしていた。
厳密には「VRなチャット」と「自撮り」と「女装喫茶」と「メイド」と「爆乳」だったんだけどね……男も女もバカだね……。
「こんなことになったんだから、これはもう20代までは男の娘インフルエンサーとか女装レイヤーさんとかやるしかないよねぇ?」とかバカ言ってきたヒカリにお仕置きをする元気もなかったよ。
「……にしても、本当に自然すぎるわねぇ」
「 」
「ちょっと、さすがに戻ってきなさいよ? レイくんがかわいそうでしょ」
「……はっ!? レ、レイ殿は大変に魅力的――」
「くすっ、ありがとうございます。リヒターさんも魅力的だと思いますよ」
「 」
「……あれ?」
「あーあ……レイくん、悪女……」
「?」
入店してからずっと白目向いて硬直してたリヒターさんが……今、一瞬だけ復帰したのにまーた動かぬ置物になっちゃった。
……女の人が苦手って大変だなぁ……こんな女装男にでも反応しちゃうだなんてさ。
「ルーチェどのや。レイきゅんはレイちゃんに進化しちゃったのよ」
「あー、悪女から傾国なのねぇ……ていうかヒカリちゃんは身バレ大丈夫なの?」
「俺ちんはレイちゃんほど身辺情報載せてないからね!」
「………………………………」
……ルーチェさんとヒカリは、さりげなく仲良くなってるし……まぁ女子同士だからしょうがないんだけど。
◇
「はーい! 『おいしくなる魔法』と『ツーショット』のお大尽コースでーす!」
「なにこれ……本物のメイド喫茶とか執事喫茶とか行くよりずっと安い……!」
「おや、ルーチェちゃんは上級者でしたか。やるねぇ」
サービスでつける――と差別化にならないのと希少価値が減るとかなんとかいう理由で、食事や普通の接客とは別料金のメニューをオーダーしたらしい2人。
まぁ昨日でさんざんやったし、半分以上のお客さんがどっちかは着けるから今さらだけども……いや、顔見知りの人と、ツーショットはともかく魔法の方は恥ずかしいかな……。
「ほらレイちゃんご指名! かわいくやったげて♥」
「はいはい……リヒターさーん、せっかくの数百円が無駄になっちゃいますよー」
「……はっ!?」
この2人は僕たち高校生までとは違って、自分のお金を自分で稼ぐ大人だ。
だから彼らにとっての数百円――セットで1000円ちょいは決して高くはないんだろう。
それでも――すっごい笑顔で待ってるルーチェさん、なんだか死にそうな顔してるけど待ってるっぽいリヒターさんへは、金額相応のサービスはしないといけないんだ。
「……こほんっ。んんっ……。じゃあー、おふたりともぉ?」
僕は――僕が出せる中で1番かわいい声に変え。
「あ゜っ、かわいい」
「 」
小首をかしげながら肩も微妙に上げ、腰もしならせて表情を小悪魔的な笑顔に――鏡の前で何十回と演技指導されて習得したそれを、疲労する。
「おいしくなぁれ、萌え萌えきゅん♥」
両手でハートを描き――2人へ、ウィンクを飛ばした。
「 」
「 」
「ぐふっ……」
「どうして……どうして私はあと数秒遅く来なかったのか……」
「あ、これが沼るってやつか……」
「やはりSNSでバズってた女……いや、女装子は違うな……!」
「あれが……悪女の才能……!」
「佐々木くんって絶対女の子で生まれるべきだったよね」
「その場合、確実に全女子の敵になってたけどね」
「尊い……尊い……」
「……じゃ、おいしく食べてってくださいね。あ、チェキはちょっと食べたころに撮りに来まーす」
「 」
「 」
……んー、ちょっと恥ずかしいなぁ……教室にはテーブルも数席しかないわけで、普通の声でも周りに聞こえちゃうから。
「レイちゃん……君はいったいどこまで駆け抜けて行くんだい……?」
「……そうさせたのはお前だろうが」
なぜか魂の抜けたような表情をしていた悪友を小突きつつ、僕は形だけのバックヤードへ戻る。
「? みんな、どうしたの?」
「……いや……」
「うん……」
「ちょっと、ね……」
そこに居たメイドと執事たちもまた――なぜか顔を覆ったり真っ赤なまま直立したり、あるいは机に突っ伏したりと完全に作業を停止させていた。
◆◆◆
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