Embrasser les boutons de Rose
「じゃあね、変態さん」
春の公園の少し霞んだ夕日の中、真新しい制服に身を包んだキミの悪戯っぽい笑顔は、僕の知っているそれより少しだけ大人びて見えた
固く閉じていた植え込みの早咲きのバラのつぼみが、柔らかく色付き始めていた
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ビールの匂い
そしてサキイカの匂い
夜の安アパートの一室
バラより安っぽい赤に頬を染めた二人の男女が、なにやら盛り上がっている
結婚を間近に控えた二人は、お酒の勢いでお互いに過去の恋愛を暴露しあっていた
その時のパートナーのナニがナニでナニだったから始まり、
印象に残った当時の恋人との笑い話、
そして初恋がいつだったか、
お互いの過去の思い出話に酒臭い花が咲く
酒もおつまみも話題も尽きてきた深夜
酔いざましにインスタント味噌汁がマグカップに注がれ手渡される
新しく器を出すのが面倒だという物臭な所業だが、そんな些末事を気にする二人ではない
湯気と共にシジミの味噌汁が香る
その香りに男はふと何かを思い出した
「…なあ、俺のファーストキスが味噌汁味だった話はしたっけか??」
「なにそれwそれは初耳」
ふむ、と男は考える
「折角だから、話してみようかな」
良い機会だとばかりに男は遠い過去を思い出す
女はテーブルに頬杖をつき、そして興味深そうに男の言葉に耳を傾けた
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幼稚園の頃に引っ越して来て、社会人になるまで過ごした実家
その実家の目の前、玄関を出て徒歩20秒くらいの場所に大きめの公園があった
高度経済成長の時に開発された古い住宅街の端にある、小高い丘を削りその時の自然を一部残して作られた公園
中学三年間ずっと吹奏楽部で楽器を演奏した僕は、吹奏楽部がない高校に進学
流石に三年間を帰宅部で過ごすのは寂しいので、練習場所が近かった社会人の吹奏楽団のお世話になった
部活の制約が無くバイトもしていなかった僕は、苦手科目対策の塾と楽団の練習以外は暇だった
なので、帰宅して気が向くと公園のあづま屋のベンチで日暮れまで楽器を吹いて過ごしていた
高二だったと思う、その年のゴールデンウィーク、公園で楽器を吹いていた僕は女の子と出会った
出会っただと不正解かな
それは顔見知り、弟の同級生の妹さん
お転婆で生意気盛りのお嬢さんだった
その日、楽器の音に興味を持ったのか、反対側のベンチに座り音を聞いていった
一曲吹き終わったタイミングで
「ずっと吹いてるけど暇そうねぇ」
彼女はその年齢の割りには低いハスキー気味の鼻にかかった声で憎まれ口を叩く
GWなのに暇なの?と
「ここで吹くのが好きなんだよ」
僕は肩をすくめて言い返す
小高い丘の上の公園なので、そこからは遠くまで町が見渡せる
僕のお気に入りの場所でもあった
ざあ…と風が吹く
ふーん?
僕の返答に興味なさそうな彼女だったが、当人も暇だったのか時々会話をしながら夕方まで過ごした
じゃあね
楽器を片付けると彼女も帰っていった
それから彼女は僕が公園で音を出しているとふらっと現れるようになった
日が暮れるまで楽器を吹き、彼女と話をする
彼女は学校の話をよくした
年齢に関係なく悩みは尽きないもの
高校生から見た彼女の悩みは可愛らしいものであったが、しかし当人は本当に悩んでいて、
月が変わり日が沈むのが遅くなるにつれ、話す時間もだんだん伸びて行く
開花した植え込みのバラのような赤さの梅雨晴れの夕焼け
その日の彼女は酷くご立腹だった
親と口喧嘩したらしく、僕の練習を止め声をかけてきた
ねえ!聞いてよ!酷いと思わない!?
彼女視点での怒りを爆発させる
その表情は、それを絵か写真にして【ぷんすか】とタイトルを付けて発表したら賞が取れそうなくらい見事なぷんすかである
そして本人は大真面目に怒っているのだが、年相応の内容な為に微笑ましい
考えるより先に体が動いてしまった
怒る少女の隣に座り、頭にぽんと手を置く
よしよし、なでなで
君も大変だな
彼女は一瞬驚いて、でも収まらない怒りの矛先を僕に向けた
なんで撫でるの!?
アタシはそんな子供じゃない!バカバカ!!
ベチベチと体を叩かれる
地味に痛い
しかし自分は弟との兄弟喧嘩でこの程度の事は慣れっこだし、反応がわかりやすくて逆に助かる
片腕でガードし、なでなで続行
ベチベチがペチペチに
ペチペチがポフポフに
なでなでの時間経過と共に、彼女が腕に込めていた力がだんだん抜けていく
最後には叩いてた僕の腕の服の袖を掴んで下を向いて、静かになでなでを受け入れていた
ようやく大人しくなった
「…落ち着いた?」
声をかけると下を向いたまま真っ赤な耳でコクンと頷く彼女
ゴメンね、練習の邪魔しちゃった…
大丈夫、僕は暇な人だから1日くらいサボっても(笑
ちょっとだけ意地悪を言ってわざと強めにワシャワシャ撫でる
あまりシュンとされると逆に調子が狂う
「…もう」
少し呆れた表情で乱された髪を直す彼女
でもその顔にもう怒りはない
日が暮れ辺りは暗くなっていた
またネ
小さく手を振ると、彼女は雲の切れ目から広がる星空の下を帰っていった
そして、また別の日
楽器を吹いていると彼女が姿を表す
よっ
おう
前回のなでなでが照れ臭いのか、はたまた練習時間を削ってしまったのを気にしてか、少し遅れての登場だった
気にすんなと言う代わりに、今まで通りの挨拶を返す
いつもより少し時間の為にあまり練習を聞いてもらえなかったが、その分早めに切り上げ楽器を片付けた後の会話に時間を割いた
「この間の喧嘩、どーなった?」
「んー?謝ったよ。アタシの事心配であんな風に言ってたのがわかったから」
彼女は彼女の視点でちゃんと物事を理解していた
「そか、それはよかった」
僕の座っているベンチの端に座った彼女だったが、僕の言葉に頷いてから隣に移動してちょこんと座りなおす
彼女は公園の背の高い街灯の明かりの下で、ふわっとした笑みを見せ
…ぺちぺち
腕を軽く叩かれる
視線が合う
どーした?
…ぺちぺち
言葉による返事は無い
その変わりに遠慮がちなぺちぺち攻撃が飛んでくる
…わしゃわしゃ
ぺちぺち攻撃が止まる
梅雨明けの風が吹き抜ける
街灯の明かりにベンチに座った二人の影が伸びる
妹がいたらこんな感じなんだろうか?
母性や父性があるなら、兄性もあるんだと思う
見守っていたい
時々こんな風に甘やかしたい
生意気だが甘えん坊な年下の彼女をそんな風に思っていた
お互い夏休みに入り会う機会が増えていった
ぺちぺち
彼女は当然のように僕の隣に座り、
わしゃわしゃ
そして当然のように、
ぽふ
肩によりかかり甘えるようになっていた
気がつけば8月後半
夏休みも終わりが見えてくる
その日はいつもより遅れて彼女が来た
待ってたの?帰っても良かったのに
待ってないよ?風が気持ちよかったからサ
ほんと~かなぁ~??
彼女がイタズラっぽい笑顔を浮かべ、僕の顔を覗きこむ
…待ってたなんて意地でも言わんぞ
言ったら負けな気がする
…ゴメンね?
お母さんが遅くなるだろうからゴハンとお風呂を先に済ませろって…
一転、申し訳無さそうな表情になる彼女
お母様…ごめんなさい…娘さんを遅くまで引き留めてしまって…
今度はこちらが恐縮してしまう
いつの間にか、そのくらい二人でいる時間が多くなっていた
彼女は肩まで伸ばした髪が湿ったままだった
乾かさなくて大丈夫?風邪引かない?
平気!すぐ乾くよ!
言うとすぐに僕の隣に座る
そーいやぁ夏休みの宿題は進んでる?
終わってるよ、先にやっちゃった(ふんす
自由研究も?
なにそれ?
え"?今自由研究ないの?
あれってやりたい人だけじゃないの?
話題が尽きるまでの雑談
話題が尽きれば二人で夜の町を眺める
夏の風が吹く
ぺちぺち
なでり
わしゃわしゃすると髪が絡まるだろうからと、手櫛を入れるようにそっとなでる
いつもとは違うなで方に、すこしむず痒そうな表情
乾いてきた少女の髪がさらさらと風に揺れる
シャンプーの香りが鼻をくすぐる
ぽふ
なでり
いつも通り寄り添う
しかし今日は少し違った
少女が僕の真横から座り直す
僕が頭を撫でていた手を掴み、彼女自身でその頬まで運び
少女に至近距離で見上げられる状態である
…えっと
なにを意味しているかは解っていた
でも僕は動けなかった
だから先に動いたのは彼女だった
背伸びをするように、そのまま重なる唇
と
唇越しに強く感じるお互いの歯の固さ
!?!?
それはあまりにも勢いがあり、そして距離感をつかめていないものであった
血は出ていないが、しかし痛い
彼女も痛みに悶絶している
血出てない?大丈夫?
コチラ向かせ確認する
触れた頬が暑くなり
…よかった、大丈夫だね
恥ずかしそうに肩に顔を埋めてしまう
やっぱりまだ痛い?
ふるふる
血は出てないよね?大丈夫だよね?
こくん
…僕は大丈夫だよ
なでなで
僕はそのまま彼女が落ち着くまで頭をなで続けた
普段の生意気げな雰囲気はどこへやらである
大丈夫だよ、と撫で続け
やっと力なく身体を離す彼女
彼女は今にも泣き出しそうなくらい涙目だった
勇気を出した大胆な行動と、想定外の失敗
嫌われたかな…どうしよう…
どんな顔をして相手を見れば良いかわからない…
彼女のそんな表情を変えたくて
生意気でおてんばだった筈の彼女が急に女の子になってしまって
だから、僕は自ら彼女の頬に触れ、預かってもらった唇をそっと返してもらった
それは彼女の気持ちへの返答
自分も初めてではあったが、幸運な事に歯は当たらかった
そして夕食後急いで来た彼女の唇は、ほんの少し味噌汁の味がした
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「なるほど。だから味噌汁味なのねw」
「そーゆーことw」
「その子、可愛いじゃん。てか君、ずいぶん恥ずかしい事したのねぇ」
「若かったんだよ」
「違うよ」
女は人差し指を天井に向ける
君はこの子に本当の恋を教わったのよ
だって、それまでの話題はこの子の後の女の人との恋の話しだったでしょ
薔薇のつぼみが開くように、
妹みたいに思ってたガールが君の腕の中でレディになって、
君も男の子から男の人になったのよ
…それで?二人はどうなったの?
終わりまで語らないとダメ…?
今さらなに恥ずかしがってるのw
お味噌汁、もう一杯用意してあげる
ニマニマ笑いながら台所に向かう結婚相手
どうやら逃がしてくれないようだ
少しの【やきもち】もあるのかもしれない
…そういえばあの子は結婚相手と同い年くらいじゃなかっただろうか
今どんな大人になったんだろうか
僕は鼻歌を歌いながらお湯を沸かす結婚相手の背中を見ながら、物語の終わりを思い返す
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その日から少女からの【おやすみ】は頬へのキスになった
ペチペチも無くなり、その代わり指と指が絡むようになった
僕は学校で一人でいる事が多く、また帰宅部だったのでつるむ仲間がいなかった
趣味で社会の吹奏楽団にいるが、年齢の近い団員はいなかった
淡いなにかと、少しの後ろ暗さ
そんな焦点の定まらない感情を抜きにしても、慕ってくれる彼女の存在はとても大きかった
そして夏休みが終わる
雪国の短い夏が駆け抜けるように過ぎ去っていく
秋になる
日が暮れるのが早くなる
気温も下がるようになる
会える時間も短くなっていく
厚着をして僕は音を奏で、厚着をして彼女は音を聞きに来る
取り留めの無いことを話し、寒くなれば身体を寄せ会う
秋は人恋しい季節とはよく言ったものだ
紅葉が進んだ頃に彼女は言った
早く大人になりたい
親に色々言われないようになりたい
僕は言う
クラスメイトより先に大人になったら、きっとさみしい思いをする
自分のペースで良いんだよ
それに…僕だってまだ大人じゃない
キミよりは心も身体も大人かもしれないけど、まだ親のもとにいるし
じゃあ…高校生になりたい
彼女はまっすぐコチラを見つめる
僕は来年の大学受験を考えた
彼女はもうすぐ中学生に上がる
小学生の一年も大きいが、中学生の三年間も一年一年が本当に大きい
彼女はその後高校受験に向き合い、その先も沢山の事がある
生活の時間軸の違い
年齢の差
それはやはり大きい
でも、だから、どうか、いまだけは、
彼女を両腕で包み、頭をなでる
彼女もしがみつくように腕をまわす
温もりを、お互いの存在を、確かめ合うように
しかし何事にも終わりが来る
それはついに冬の訪れと共に
僕が吹いている楽器は木製
息の温度と外気の差で、木製管体の膨張率が内側と外側で違ってしまい、最悪楽器が割れてしまうのだ
天気予報で週末に霜注意報が出てしまった
もう限界だ
高校生くらいでようやく携帯電話を手にする時代
僕の楽器の音が唯一の目印だった
(家電で連絡を取るなんて、親の手前後ろ暗かったのかお互い考えなかった)
彼女にそれを伝える
…今日で最後?
いや、今週末かな…
…あのね、お願いがあるの
秋冬の境
早い日没
冬の凍える風が吹く
今まで人目を避けるように夕闇の中で寄り添っていた二人だが、この日はそれを気にせず手を繋ぎベンチに座る
夕闇に沈んでいく街並みを眺め、他愛のない話をする
日が沈み暗くなり、ぐっと気温が下がる
寄り添い温もりを分け会う
話題が尽き口数が少なくなる
それでも寄り添う
無言でも幸せだった
月が出て動いて、そのまま夏休みの頃より遅い時間
公園の下から彼女の名前を呼ぶ声
彼女の母親だ
何時だと思ってるの!
早く戻りなさい!
行くから!今行くから!
お願い!待って!!
ベンチから立ち上がり、フェンスに乗り出し返答する彼女
その間、彼女は僕の手を離さなかった
その願いとはー
親に怒られるまで一緒にいたいというものだった
そしてそれは、僕たち子供の恋愛の限界でもあって
母親の姿が見えなくなると、
彼女は繋いだ手を離し、僕に向き直り正面から抱きつく
今まで壊れてしまいそうなモノを扱うように抱いていた腕に、僕は少しだけ力を込めた
春になればまた会えるから
君はまた少し大人になる
…その時、もしまだ会いたいと思ってくれるなら、
ねえ…
彼女のハスキーボイスが僕の言葉を遮る
涙を湛えた目が閉じ、寒さに赤く染まった頬をつたう
実は最初のキスからお互い頬やおでこへ唇を贈る事はあっても、唇を重ねる事はなかった
それは特別な事だから
だからこの時のそれは、本当に特別なことだった
唇が離れ、腕が離れ、彼女は街灯に照らされた公園の階段を降りて行った
一人で感じる夜風はとても寒かった
木の葉が散り、息が白くなり、霜が降り、水溜まりが凍り、雪が降る
二人で話をしたあずま屋
何度か足を運んだが彼女と顔を合わせる事はなかった
雪を歩いた足跡もあるが、足跡が誰のものかなんて解らない
そしてその足跡も雪が覆い隠してしまう
あの日々が本当にあったのかさえ解らないくらい
深く覆い隠してしまう
雪国の長い冬がゆっくり春に向かい、気が付けば3月末
期末テストを無事に突破し僕は受験生になった
今は春休みだ
3月に入ってから何度かあずま屋で楽器を吹いたが、少女が来ることはなかった
女の子は心の成長が早い
それは、この身をもって体感した
だからきっと来ることはないだろう
もしかしたら引っ越したのかもしれない
それなら尚更だ
春の公園の少し霞んだ夕日の中、僕は楽器を吹く
所属楽団の演奏会が近い
夏にはコンクールがある
なにより、僕はここで吹くのが好きだ
心地よい春風が吹く
その風が聞き覚えのある声をどこからか運んで来た
真新しい中学校の制服を着た二人組の少女が少し離れた公園の遊歩道を話ながら歩いていた
そのうちの一人がこちらに小走りで向かって来る
よっ
よお
制服似合うじゃん
髪が伸び少し大人びた顔つきになっていたが、彼女の生意気そうな笑顔は変わらない
にへへ、と笑う
あたしね、吹奏楽部に入ろうと思う
大丈夫?楽譜読める?
大丈夫よ
あんたが出来るんだもん、アタシだって出来るよ
そーんな生意気言ってるとダメだぞー
吹奏楽部の先輩は怖いんだからな
わかってるわよっ
遠くから少女を呼ぶ声
もういかないと
そっか
「じゃあね、変態さん」
春の公園の少し霞んだ夕日の中、
真新しい制服に身を包み、キスをするかのように耳元で囁いていった少女の悪戯っぽい笑顔は、
僕の知っていたものより少し大人びて見えた
陽だまりの中、固く閉じていた植え込みの早咲きのバラのつぼみが、柔らかく色付き始めていた
<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<
「んで、二度と会うことはありませんでしたとさ」
「まったく、罪な男ねぇ」
最後まで語ると、開口一番に婚約者の女は半目で男に言った
少し大人になった姿を、中学校の制服姿を見せたかったから、会うの待ってたに決まってるじゃない
便宜上、元カレ扱いするけど、普通は別れた相手に自分から話しかけないよ
そもそも、どんなに軽い女の子でも本当に好きな男としかキスしないのよ
どれだけ鈍いのよと、ため息をついて
結婚するのはわたし
それはもう決まってること
色々な出会いがあって、恋もして、
それが無ければわたしたちは、結婚どころか付き合っても、出会ってもない
それはわかってるの
でも、もっと早くわたしたちが出会ってれば、
こんな初恋をしてそのまま結婚なんて事もあり得たんじゃないかなって、どこかで思っちゃうの
そんな風にわたしを嫉妬させたんだから、やっぱりきみは罪な男
女がダイニングテーブルに身を取り上げる
目を閉じ何を待つ様子に、男もテーブルに乗り上げる
そしてそれが当然のように二人は唇を重ねる
それは特別なキス
恋を知り、恋を重ね、恋の数だけある特別を知った、少し大人なキスだった
今度はサキイカの味がした
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クラスメイトの隣まで小走りで戻る
「誰、あの人?」
「知り合い。兄貴の同級生のお兄さん」
ふうん?
クラスメイトは詳しく聞いてこなかった
あの関係をなんて答えれば良いかわからないし、恥ずかしいから答えるつもりもない
「そうそう、部活はなににするの?」
追及は無理だと思ったのだろう
クラスメイトは話題を変えてきた
彼女ははあたしと同じ部活に入りたがっていた
「もう決めてるよ」
あたしはあいつに宣言してきた
だからやるんだ
予想していなかった部活だったのだろう
それを聞いてクラスメイトはとても驚いた顔をした
春風が吹いて、前髪を揺らして
公園に響く彼の音を遠くへ運んでいった
タイトルの【Embrasser les boutons de Rose】はフランス語
直訳すると【バラのツボミを抱きしめる】なのですが、流石は愛の国フランス
【抱き締める】という意味のEmbrasserの現代語約が【キスをする】に転じているそうです
ハグはそのままキスになるよね
って事なのかな(笑
優しく抱き締めていた筈なのにキスになる
この物語そのものに思いました
【バラのツボミに口づけを】




