第7話 秘密の場所
6歳になった。
ソフィから学んだ魔法の授業も進み、新たなことをこと細かに学んでいた。
それは魔法という種類、もしくは魔力の使い方に関するものだった。
以前は魔法にはいろんな種類があると知ったが、今度は攻撃魔法について深堀りするような形だ。
分かりやすく言えば、攻撃魔法は2つのタイプがある。
例えば、剣の技を振るう場合はローマジック、又の名スイフトという。攻撃にかかる発動時間が素早く、しかも強力だ。
魔法とは違い、詠唱のように力を貯めてから打つという感覚とは少し違い、炎の技が手中の中に集まって放出するという形だ。例えるならあの世界でいう必殺技だ。でもこの場合はヒーローごっこでビームのポーズをして、出せるみたいなものではなく実際にそうなるように魔法を出せるということだ。原理は詠唱のように炎が飛ぶ流れを計算しながらイメージをするというより、その炎のイメージが自分の身体を構築するかのように打つ感じだ。
正直、言葉にすると難しい上に、イメージしにくいというのがひとつの弱点とも言えるだろう。だがら、扱えるのは一流の剣士が多い。魔法使いには使えないわけではないが、あまり好まない者もいたりする。
そして、遠くから撃つ遠距離系の魔法をキャストと呼ぶ。誰も近づけない代わりに、攻撃を仕掛ける。これもまた強力な技も多い。そして、火力が低くなる代わりに詠唱を速くして方向転嫁を調整しやすい。
なら。キャストの方が良いのではないかと感じるかもしれないが、どっちにも使い道がある。
ソフィが言うには、魔法とは使い慣れることによってその強さがでるのだという。
キャスト系統の魔法は設置もできるし、大きな魔法を時間をかけて打つことが出来る。でもスイフトの場合は敵が近づいた時にも使えるし、無防備な時間はキャストよりも少ない。
___格闘ゲームでいう硬直という概念に似ている。攻撃が遠く届くほど時差は長く、攻撃が近距離(剣など)であればあるほどに早かったりする。
しばらくもう一つの意志みたいなもの聞かないと思ったら久しぶりに何らかの介入を受けたな。
でも今回は比較的にまともなコメントだ。
「どう、説明分かった?」
「まあ、一通りは」
「じゃあキャスト系の魔法をやってみて」
「はい?まだ実践も見ていないですけど」
「そうだね、やってないね。なんでも教えてほしいんだもんね君は?」
そうソフィは唐突な意地悪をしてくる。
「今更なんですか。まさかもう教えないということはしませんよね?」
「だって教えるだけって面白くないでしょ。自分で確かめないと。なんか言うでしょ?
ほら、フィーリングよフィーリング!」
とあなたは熱血指導でもやるつもりですか。でも最初にあった時から先生はこういう人だった。
前はなぜか僕に何も教えるつもりはなかったように見えるが、今回は教えるのが面倒というより、単純に彼女なりの好奇心だということが伝わる。そこもタチが悪いのだが。
「今のあなたなら出来るとおもうけどなぁ」
「無理ですよ!なんも教えてないんだから!」
「やったことがないからすぐにあきらめるの?」
「そうはいってないですよ」
こんな適当な指摘で、核心を突くものだからこの人は侮れない。
「確かにあなたに教えることはできるけど、私は別に先生でも家庭教師でもないのよね」
「そんなのも今更ですよ。教えてくれるといったのもソフィ先生ですよ?」
「分かったから、それでも一回一人でやってみ?ね?」
「まったく、最近ときたら性格の悪いわがまま女ですよ」
「セイレン君、最近あたり強くない?モテないぞ」
「は?意味が分からないんですけど」
「まあ、なんでもいいや。じゃあこれあげる」
ぽいっと、僕に渡したのは木材だった。
「なんですかこれ、木の枝でやれというんですか?」
「杖とか木刀でも良かったけど、面白そうだからこれにしたの」
「はぁ。無茶にもほどがあるでしょ」
僕が楽しみにしていたものとは魔法とはどのように分解されて生み出すのか、そしてその魔法を放つことで、どのように見えるか。既に自分にとって魔法とは発見の一種なのである。
「では行きます」
ただ、それをノーヒントで生み出すのはあまりにも至難の業だと受け止めた。確かに、試し試しでやるのもなにか発見がある。でも、僕はその発見を他人から学ぶことで自分の中にある好奇心を掻き立てることができるのだと最近思うようになった。
思えば、最初に魔法を撃った時から今までで思ったことがある。少しずつやっていったことで自分の能力に対する自信が身についていったのは確かだし、そのおかげで今の段階にいるのだと実感している。
僕が今までやってきたことはひたすら自分の思ったイメージを投影し、その感覚が鈍らないように毎日やってきた。もちろん、魔法に対する熱心も自分の練習にも影響したと思っている。自分がひたすら練習をすることで、その魔法の再現を何回までできるのかを試したり、失敗も何度もした。その失敗の過程の中で新しい使い方があるのかどうかというのにも気になっていた。毎回成功しないからなのか、魔法に熱意も高まった。僕は失敗という言葉になぜかしっくりと親近感がある。
もちろん、魔法をしっかりと成功させることは何よりも嬉しかった。でも最近は失敗することについても考えるようにもなった。日々失敗することで、自分の中の存在を再認識できてしまうことに安心があった。自分にとって失敗には輝きがあるのかもしれない、というどこか考えてはいけないような感じが曖昧ながら思っているところがある。と同時に、失敗というもの自分にとって怖いもののようだ。でも自分が今そう至った根拠というか、真理にはまだたどり着いてはいない。
その考えの片隅に僕は魔法を構えた。
今から発動するスイフトは恐らくキャストとは違い、一発で攻撃を放つということをするのだろう。だが、それを今の段階で再現できるとは思えない。
キャストは準備が整えば放てるような感じだが、名前の如くスイフトの場合はイメージを一瞬にして攻撃をする瞬間に放つようなものだろう。頭でイメージするのは難しいが、取り合えずタイミングが合わせないと攻撃が暴発してしまうだろう。
スイフトには技の種類がいくつあるのか、それともその動作でないとだめなのかは知らされてはいないが、僕はとりあえず風の魔法の攻撃をベースにした。風の魔法を木の枝に纏い発動する。
そして構えて撃つ。
「やあ!」
すると、風の流れがとどまらないままにバランスを崩し技が暴発してしまった。
「うわ」
技を撃った後の動作の勢いで倒れてしまった。
「お、意外とおしかったね」
ソフィは気ままに自分の失態を眺めながら何も動じずにいた。こんな強風が集まってもなお、何も心配とか、驚くこともしないのは流石と言うべきか。しかし、僕はそれを見て良い気はしなかった。
「他人事のように眺めないでなんかヒントをくださいよ」
「やだ」
「子どもですかあなたは」
「だって、むかつくんだもん」
「何がですか?」
「やだ、もう一回やって」
「答えてもないし。ソフィさんのような人がこんな時、何か閃くようんなこと言うのが筋というものではないんですか?」
駄々をこねたソフィは息を貯めて言う。
「や!だ!」
「あなたって人は…」
こうなったら彼女はなにも言うことを聞かない。さっきは一回やったら教えると言い、結局は僕を遊びの道具として見ているのだ。それになぜこんな魔法使いが僕にむかつくことがあるのか理解ができない。確かに時には僕の態度は悪いかもしれないが、ソフィの話はきちんと聞いているつもりだし、そのような言われようは流石に傷つく。
そしてため息をしながらもう何回か試すことになった。
まず2回目、分かっていることは詠唱みたいな感じに寄せてしまうと魔法のイメージが体の動きとは合致しない。風の魔法を木の枝に纏い、放出する。そこまではうまくいく。でも最後に攻撃を振るタイミングでどうしても体勢を崩してしまう。そして、息も途切れやすい。ただ魔法と体を同時に動かすだけでこんなにも体力も消耗するのか。
こうなったら、色々試すまでだ。
3回目、
どうやら鍵は攻撃を出すときのようだ。魔法を技として認識していると、どうしても頭の中に矛盾が生じる。これを統一させるには動作に集中してみたほうがよさそうだ。
4回目、
やったか?
とそう思ったが、最後のところでバランスが崩れた。この技を成功させるにはどうしても重心と、技を出すタイミングを出さないといけない。自分ではわかっているのに、どうしても安定することが難しい。
僕がこれまで収穫できたのは、動作と魔法のタイミングが合うと良い感じに流れる。ただ、僕がやっているものはどれも安定はしなかった。それをするためには何らかの工夫が必要なはずだ。
「(そうか!)」
僕は魔法ということに趣を置きすぎていたようだ。
当たり前の話だが、スイフトの極意は体の動き。自分の体と魔法の力を同時に合わせないといけないのも重要だが、その上、体の動きも魔法の技の度合いに合わせないといけない。つまり、魔法も体の一部として捉えることができれば出来るはずだ。
「なんか閃いたようね」
ソフィは興味深々で観察していた。
「どうですかね。やってみます」
今回は魔法の出る速度と、木の枝の振るタイミングに合わせると大体こんな感じか?
「はあ!」
すると、自分が体の隅々まで意識して放った技が空に届くようだった。足も地面についていた。
自分が必死に練習したものが完成した瞬間だった。
「お、やった!」
素直に喜んだ。自力で魔法を探り、練習したものがこんなにも心地良いとは思っても見なかった。
今までは先生の指導があってこそできたものではあったし、もちろんその時も魔法に励んだ。多分体を存分に動かした達成感もあると思う。
「や、やるわね」
そして僕の喜びとは対比的に、ソフィは微妙な様子だった。
「なんですか、その反応」
「驚いたのよ。だって、普通は一日どころか、1週間その答えに辿り着かないし…」
「そんなことはないでしょ。自分が今まで学んだことを応用しただけです」
「でしょうね」
それは、あなただからそう思うんだろうねという意味での言い方だった。
だけと本来、僕が特別なんていうことはなく、きっとこの法則にたどり着いた先代の人だっているはずだ。僕はそれをたまたまコツを掴んだだけだ。
ソフィは当たり前のように反応した。
「先生はこれを僕に教えたかったんですね。自分で答えを探る能力」
「ま、まあ、そうだね。にしても、何の技も教えてないのに自分で技をしっかりとできたのはヤバいね。普通、技の基礎から学ぶもんだからね」
「それ、あなたが押し付けたんでしょうか」
「わ、悪かったって」
と言うと、ソフィは焦った様子で目を反らす。
なんとなく意図はしていないような反応だが、実際のところ自分で手探りでやってみるのも悪い感じはしなかった。
もし実戦で使うのであれば、必要なのはただ教えられた通りにするのではなく、その場に応じで使う必要も出てはくるだろう。
「でも流石に、スイフトを使いこなせそうにはないですね。使ってる途中にやられちゃいそうで」
そもそも僕は身体能力並み大抵だし、無理しないでも良いかもな。
「今は使えなくても、使い方を知っただけでも今後生かせると思うよ」
「ですね」
彼女からすれば知っていることが、何も知らないよりも力になるという考えなのだろう。確かにそれには納得だ。
「じゃ、もうそろそろだね」
彼女は決意するかのよように空に向かっていった。
僕は薄々彼女が何を言っているのかは気が付いた。でも何も言おうとはしなかった。
ここで言ってしまえば、何かが失われそうな気がしたから。
…
僕はその後にも魔力の精度を上げるために、物質を大きくしたり、そしてなりべく小さくしたりもした。
そして分かったことは、小さくしすぎると、繊細になりすぎて、集中力がいるということだ。やはり魔法を小さく、細くという風に唱えると、どうしても集中力が研がれることが多いそうだ。
ここはあくまでも推測だが、体の一部(例えば指一本とか)を集中的に鍛えると、脳への負担が多くなっていくと同じように、魔法を小さくすると、普通では使わないような働きをするせいで、思考のコストとでもいうのだろうか、が発生するようだ。
ソフィも確かこれについても触れていたが、その理由は明らかにはしていなかった。
僕もある程度基本的な魔法は学べることができたし、この発見も少しずつ鍛えることが出来れば中々バランスの良い使い方ができるはずだ。
あとは応用を鍛えるのみだ。
そういえば、今日の練習である記憶が現れた。
____
それは、功夫のマスターの話でも、一流野球選手でも、ヒーローでもない。
記憶の中では彼をマッドサイエンティストと呼んだ。
その者はその時代で典型的なマッドサイエンティストだった。
年配で、白髪染めで、声も昔の見物などに出てくるような茶番染みたおしゃべりだった。
でも彼はこう宣言した。
「世界を守るために研究をしてみせよう」
この国では怪獣が絶えない。そして彼は自分の世界を守るため、
すると、彼は世界がよりよくなるような発明を作り続けた。
機械と呼ばれるもの、身を守るための兵器、そして人造人間でさえ試した。
彼は人生をかけて試行錯誤を繰り返して発明の本質を見出そうとした。
そして、彼は狂っているがゆえ、ある答えにたどり着いた。
「私自身を発明にすれば良い!」
そして彼は自分にあるデータベースを次のものへと受け継ぐことにした。
なぜなら彼は発明を作り続けることはできないと知っただけでなく、人類にとって何が良いのかを導くことが出来なかったからだ。でも彼の情報にあるものがきっと何年後、何千年後に価値があると信じていた。
だからそのサイエンティストは後世に語りづくために自分の脳にあった情報を出来るだけ深堀り、引き出せるようにした。自分の分身みたいな機械も生み出した。
それを見たセイレンはこう思った。
「かっこいい!」
その理由は分からない。ただ彼が狂っているがゆえにかっこいいのか、それとも彼はその科学者みたいになりたいのかはっきりとは分からない。
でも彼にとって『かっこいい』という強い思いは重要だった。
___このサイエンティストの情報があったから魔法の練習に取り組めたのかもしれない。
でもそれは思い違いかもな。
ただ、自分にとって試行錯誤がどんなに大事なのか、自分のやっていることの本質を見出す大切さを教えられたような気がした。
なぜこんな奇妙な記憶が流れたのか分からないが、いつか分かるかもしれない。
自分に何故こんな記憶が見えるのか、そしてそれは何を意味するのか、それとも全てに意味なんてなかったのか。すべてを知ることになると思う。
でもどこか怖い感じがする。まるで、いつか自分が別の人格になるような、自分自身が風化してしまうような考えがしてしまっているのだ。
果たして今の自分は本当にありのままの姿だというのか。
分からない。
自分が他の人の人生のための舞台装置であるのなら、僕はどう生きれば良いのだろう。
だめだ、こんな悲観的な考えをよそうと決意したんだ。自分の行方を自分で決める。
それだけだ。
今日はとりあえず深く考えるのをやめることにして、いつか真実を知る日まで全力を尽くそう。
…
また三か月が立ち、この時がやってきた。
僕が剣を教えてもらいにラルフェットさんに合う途中だった。
魔術に関してはかなり長く学んでおり、中級の魔術はある程度学んでいた。
今のところではマスターしたいところではあるが、魔法に対する自信があるかどうか十言われてみれば、あるとは言えるようにはなった。
剣のことはほとんど座学と、基本的な構えや振り方は教えてもらうことが出来た。
でも実践で使えなければ意味はないのでラルフェットさんお願いをしてみようと思う。
剣術のことで知れたことは、剣の道を行けば、大体の武器に対しては使えるということだ。
アルメラス王国では、剣が一番人気のスタイルだ。
理由はいくつかあるが、単純に人族には剣が一番使いやすいという説だ。
槍や斧は武器としては優秀だが、人間の力だけでは使えない代物が多いんだと言う。
斧を存分に扱えるのはドワーフ、特定のエルフは槍、棍棒などが得意との噂だ。
他の種族では変わった武器がいくつかあるが、この大陸では一番悪名が高いのは古の武器というものだった。
実際にそれがどのような武器なのか、それか、闇によって作られた魔法か、生き物なのか、そして本当に人が使えるものなのかすら怪しい代物だそうだ。逸話などを見ると『封印されし古の武器』と書かれている。
この国の逸話でもその古の武器はというのは死、恐怖、憎悪、災い、闇などの言葉を連鎖させる。
そして文明を一回滅ぼしたと言われている武器として挙げられているようだ。
武器の話になった時に、その話をするのはタブーというぐらい恐れられている。
でもそれが古の武器として証明になるのかは怪しいが、だか、逸話での話では、『一目見れば分かる、あれが破滅の武器だったことを』と最後の目撃者が言うそうだ。
元より剣には様々な形がある、人の体よりも長く、鋭い剣、人より大きく、そして鈍器のような重さがある剣。他には、短剣、双剣、レイピアなども一応ある。剣の種類で戦い方は少し変わるが、根本は変わらない。
でもあることが掛かっていた。それは遠距離武器という概念だ。
弓(クロスボウ、ロングボウなど)、吹き矢、罠を仕掛ける武器、投げ槍等のものはどんな基準になるのかということだ。これをラルフェットに聞いたところ、『そんな道具も使う人はいますし、重宝はされるといえば、されます。ですが、魔法が基本的に有効な手段として考える人が多いからあまり目立つ武器ではありません』
その論には理解はできるが、あまり納得はしていない。もし、そういった武器を魔法で強化したら、相手が反応する前に迎え打つことだって可能なはずだ。しかし、これが考慮されていないということは、そんなことを再現すること自体難しいというわけかもしれない。必ずしも人が気づいていないからと言って、それが最適な手段とは言えない。
もう一つの考えられる要因は遠距離武器で魔法を使うにはそれなりの精度が必要になる。つまり、弓矢が放たれる時、その矢に力が入り過ぎて敵に当たる前に消滅する、もしくは威力が低減するといったデメリットも考えるべきだろう。それだと、疲労する上に、膨大な集中力も必要となる。それは戦いにおいては危険だなのは間違いない。
かと言って、遠距離武器も使い用で剣に勝ることも一応視野に入れておこう。
しばらく家の近くに歩いていると、ある鳥が飛んでくるのを見てきた。
「こんなところで鳥だなんて珍しいわね」
と母さんが少し遠くでそう言った。
本当にこの世界にはいないと思うほどの貴重さで美しい鳥だった。今ではそんな鳥には驚きはしないが、この鳥は特別のようにも思えた。それに、鳥を見ること自体好きではある。
ちなみに驚いていない理由は、ソフィとの伝達方法は基本的に伝書鳩を通じて話している。念のためにも家であまり目立たない場所に送っていたらしい。
ある特定の伝書鳩は届人に気づかれずに送ることもあるため、重要な通知はそうやってくる。きっとそこにはある人物に知られたくないとか、もしくは悪いことを企んでいる人とかが使うのだろう。
でも普通ならそこまで手を込めずに情報伝達ができるので、余程の理由がない場合は、人を通じて手紙やお知らせを渡すようだ。
「でも本当、珍しい鳥だな」
とどこかデジャヴを感じるセリフを思わず口にした。
それより、ラルフェットさんを探している所だった。
家の外とか見回り中だと思ったので行っては見たものの。まだ見つけられなかった。
と、その鳥は突然僕の近くまでに来た。
「うわ」
さっき飛んでいたあの綺麗な鳥がは僕の肩に乗って、軽く突っつく
「これって僕にってことか」
鳩が持っていたのはある封筒だった。
そして中身を見てみると、それは手紙だった。
いや、そんなはずあるのか?僕はまだ6歳で、ほとんど知り合いはいない。というか、手紙は子どもに送るものなのか?これを送るとしたらソフィだと思うが、生憎この鳥は見たことがない。
ということは別人が送ったということになる。
とりあえず、手紙を見ておくとしようか。
「拝啓、セイレン様。あなたの噂は貴族の間では少し噂になっております。
何故突然こんな手紙を送っているのか分からないでしょう。でも、あなたがどんな人物なのか、どんなことを成し遂げられるのかは十分に把握しています。
そこで、お頼みしたいことがあるのです。アルメラス王国のマテス町に来てほしいのです。
来て見れば何の用か分かるでしょう。
この依頼は訳があって、あなたにしか頼めないのです。この手紙のことはなるべくご内密にしてもらいたいです」
という意味深なお手紙だった。
書き方からして、いたずらではないが、怪しいのは間違いない。でも度々聞く、僕の噂の正体というのも気にはなる。
でも困ったな、せっかく今日はラルフェットさんに剣を教えてもらおうと思ったのに、面倒なことが起きそうだ。
しかし、3つの問題がある。一つはそもそもマティスという場所がどこにあるのかすら分からないことだ。もう一つの問題は、どれぐらいの時間でそのマティスという場所にたどり着けるか、最後に差出人が誰なのか分からないということ。
でも僕の肩にいた鳥はまた軽く突っつく。
どうやら封筒の中にまだ紙が残っていた。
「ラテスの行く方法を知りたければ、あなたが親しくしている友達に聞くと良いでしょう。
日中には帰れるはずです」
と追加で書いてあった。
すると鳥はようやく僕の肩から離れて飛び立った。
まあこれならその問題点はなくなるが、また遠回しな言い方だな。
友達というのは恐らく、ソフィかラナド王子になる。
いや、ソフィは友達というより、生徒と先生の関係だから違うのだろうが、僕が彼女と一緒にいた時間を考えてみればその路線を考慮するのは方向としては間違いではない。
とすると、ルテラさんとゼアドールさんは多分違うだろう。執事とメイドは友達とは呼ぶのはこの国ではなさそうだ。自分が仮に彼らを友達だと思っていたとしてもだ。
そして、ラルフェットさんは僕の父の護衛だ。最近は父に同行したりはしていないが。彼も彼で何らかのお仕事があるのだろう。だからそれも違うと思う。
でも今日はソフィとラルフェットさんには会えないし、消去法でラナド王子にはなるが、彼があの年で離れた場所を知っているとは思えない。
まあ、百聞は一見に如かずと言うし、あの隠れ家のところに行ってみるとしよう。
…
早速王族の隠れ家にやってきた。
周りを見渡すと、ラナド王子がいた。そしていつも付き添いのアーネストや、執事はいない。
彼は退屈そうにしていた。
「おお!セイレンか!やっと誰か来たよ。かなり退屈してたんだ」
「おう」
「じゃあ一緒に遊ぶか?」
と目を光らせながら僕に言った。
「ああ、悪いがちょっと聞きたいことがあるんだ」
「おお、まあそれでもいいや。で何を話したいんだ?」
というか、なんでラナドは一人なんだろう。
「その前に、アーネストさんはいないの?」
「今日はいないな。なんかおうじょっていうやつがいなくなったとか何とかで騒いでんだよなぁ」
「王女って…」
王には娘なんていたってことか?
「じゃあ、君の姉か妹になるんじゃないか?」
「いや、そんなのしらねぇ。でも身長が同じぐらいの女はいたな」
「え?」
なんか言い方が雑だな…
ということは血縁ではないとかか。でもそれだったら王女がいるのはおかしい。
この話の雲行きが少し怪しいな。
「じゃあラナドはこの王女にあったことないの?」
「ああ、何回か見たな、ちょっと退屈していたなそういえば。でも僕には姉妹みたいなものはいないさ。そうだったらうらやましいと思うけど」
多分彼は理解していないのかもしれない。自分の家族に姉妹がいる可能性を。でもこのことをラナド本人に隠す理由はないと思うが。
でもその問題はとりあえず後だ、本件を彼に聞いてみるか。
「ラナドってさ、マテスって場所聞いたことある?」
「マテスか。もちろんだ」
「もしかしてだけど、そこに行く方法は?」
「行く方法?それは」
と一間おいて考え事をした。
「あー、そうかそうかセイレンや」
ラナドは僕の言ったことを察するかのように、にやにやしながらこっちを見ていた。
「お前もしや、そこに用があるんだろ?」
「まぁ、気になっただけだ」
「そんな冷たいこと言うなよセイレン。おうじょう内も騒いでいる理由もそこにあるかもしれないだろう?行ってみたいんだろう?」
「?」
ということはあの手紙に書いてあることは王女に関係するものなのか?
ならば仕方ない、ここはラナド王子の話を聞こう。
「うん、そんなとこだな」
「だったらこうつごうってやつだ。僕は何回かそこ行ったことあるんだ」
「本当か?勝手にそんな場所に行って怒られないのか?」
「何だよ、しんじてねぇのか?じゃあ教えないぞ」
本当はラナドが本当に場所を覚えているのかが心配ではあるが、一人だけで未知の場所に行くには地図を把握しないといけない。僕はそんなにすぐには地図を覚えられる自信がない。だったら彼の話に乗ってみるか。
「いや、信じるさ。どうやって行くんだ?」
「よし、じゃあ俺に付いてこい」
…
そして僕たちはある馬車の集まりにやってきた。
その前に行くと、商人みたいな人たちが並んでいて、少し動きが怪しいほどに慎重だった。
とはいえども、警備が多いわけではない。
一緒に付いてきたものの、ラナドが一緒に付いてくると色々と面倒なことが起こりそうで心配だ。
「じゃあ、まずはあの馬車に乗って行くとラテスって場所に行けるんだ。そして、乗るには藁の中に入って、移動中潜めるんだよ」
って
やっぱりそういうことじゃないか!
「というかこれ、バレたらどうするんだよ!あの場所の中に隠れるってことじゃないか?」
「お前はほんと心配性だな。絶対にバレないって。女神にちかってな」
勘弁してくれ、女神がこんなことを許したら、収集がつかないさ。
とはいえ、案外にここまでは順調だ。こういう事をするのはいけないのは知っているが、これはあの依頼のためだと心に念じておこう。
しかし、王子にはこんな悪知恵を実行するのは驚いたが、意外と頭の要領がよさそうだ。
短い間ではあるが、彼は少しずつ成長しているようだ。でもその知恵を良いものに使ってほしいとは思う。
「よし、準備が済んだ。よし、行くぞ!」
するとラナド王子は藁が多く積んである馬車に乗り込んで僕に合図した。
「おい、早く!」
やっぱり、抵抗があるが、あの手紙の内容の好奇心が自分が今する悪さに勝ってしまっている。
僕は良い人には成り切れなかったようだ。
「しょうがないな」
そして僕は周りを見渡して馬車に乗り込んだ。
しかし、こんなことをしたらすぐバレるものだと思っていたが、案外上手くいった。
僕の中途半端な性格は後で反省でもしよう。
あとはラテスに着くまで問題がなければいいが。
…
1時間ほどが経った。
「あとどれぐらい待てば良いんだ?」
「もう直ぐのはずだ。お前が見たら驚くぜ」
と言った後、馬車がパタッととまり、ここまで運んでいた人たちが下りた。
僕たちは足音が無くなるのを伺って、降りることにした。
「いまなら大丈夫だろう。行くぞ」
「うん」
すると、町の方に向かっていった。
僕が見た景色はとても賑やかな街並みだった。
人々の足音が心地よいリズムでカタンカタンと流れていて、どんと響くような作業をしている人もいて、そしてそんな雰囲気の中には優しい静けさもあった。
僕は改めてこの国に生まれたことがよかったと思っている。
「言ったろ。すんげぇって」
「ああ。そうだな」
僕は大きく息を吸って、町の空気をほんのちょっとだけ、堪能した。
町には大きな商店街があり、食べ物、装飾品や宝石、旅の装備に必要なものなどが揃っていた。
町中がいい具合に人混みがあって臨場感もあるものだ。
大通りを行けば、象徴的な女神の像が置いてある。
そこから左を行けば、人々の家や農家がある。そこから右に行けば、娯楽施設などのものが置いてあったりもした。
僕が普通の子どもなら、すぐ迷子になりそうだ。
「って、ラナド?」
そういえば、あいつも一応子どもだった。それは僕ももちろん一緒だが、ラナドの場合は、はしゃいできっと変なところに迷い込むに違いない。
でも、まだすぐ近くにいた。
僕は駆け寄った。
「おい、ラナド。少し落ち着いて」
「なんだよ、楽しもうぜセイレン。こんなことめったに出来ねぇだろ?」
「君が何者かは言わなくても分かるだろ?」
「ああ、僕は王子さ」
「じゃあそんな王子がここにいるってバレたら?」
「あー、そういうことか」
良かった。そこまで問題にはならなそうだ。
「でも、大体は目立ったりはしないから大丈夫だろう」
「だから、それがだめなんだ」
というか、普通だったら6歳の子どもがうろちょろしていること自体が目立つ。もし、この身なりで襲われたりしたら身も蓋もない。
「ってお前は僕の兄上かよ。分かったって。で、どうするんだ」
「とりあえず、顔を覆う服とか欲しいな」
って、そういうば、この国の金ってどんなものだっけ?
「わかった、任せろ。金ならここにある」
「お、おう」
そこにあったのは金の貨幣がざらにあった。
さすがは王子ということか。いや、彼が普通とは思わない方がいいだろう。
とりあえず、店に行ってみた。
「おう、いらっしゃい。随分と小っちゃいお客さんだ」
「すいません、これを二つ下さい」
「あいよ、でも少し大きいから、これでどうだ?」
「はい、それで十分です。ありがとうございます」
「ってあんたら、こんなもの買ってどうするんだ?家出でもしたのか?」
「いえ、そういうわけでは」
確かに僕たちがこれを買うのは少し不自然だったか。
「おお、わかったぞ、魔法使いごっこでつかうんだな?」
「まあ、そんなところです」
一応誤魔化すことはできた。
「でも気をつけろよ。最近ここは物騒になってきたからな」
店主は少し困った顔をした
「え、何かあったんですか?」
「なんか人さらいとか、変な取引している奴がいるみたいでよ、ここら辺ちょっと良くない噂がたってんだよな」
「なるほど、そんなことが」
「まあ、君たちなら大丈夫か。じゃな坊主」
しかし、こんな平和な町に見えるが、そんなことはないということか。しかし、この国隅々まで行ったこともないし、経験が浅いのは自分でも分かっていることだ。だが、良いところも悪いところを知るのは重要な体験だと思う。だが、あんまり争いには巻き込めれたくないな。色んな意味で。
と次に向かうところを考えた。
とりあえず、女神像の近くに寄ってみた。
すると、僕が持っていた手紙のようなものが女神像に隠されていた。
「うん?またか」
「なんだ、セイレン?」
「ああ、なんでもない」
僕は手紙を手にした。
この依頼者はずいぶんと回りくどいらしい。
この手紙見つけられなかったらどうしてたんだ一体?
「今なんか、触ってなかったか?」
「ああ、なんか書いてあったから」
「ふーん。まあ良いけど。僕は食べ物買ってくる」
「分かった」
詳しい内容は彼に理解できるかわからないが、一応今は手紙のことは伏せたことはよさそうだ。
ラナドはいま買いに行っている最中だし、早速手紙を読んでみよう。
『この手紙を読んでいるということは無事たどり着いたようですね。
では、本題といきましょう。
あなたにはこの町の領主にあって頂きたいのです。場所は女神像の少し先にある場所にあります。庭園が目印です。
こんな子どもが領主に用があると信じてもらえないでしょう。なので、この封筒の中にある物を見せれば、何の件か分かるはずです』
今回の封筒の中にあったのはあるブローチだった。
これは一体なんだろう?
宝石のついた綺麗なブローチにしか見えないが…
『それは依頼の問題を解く重要な手がかりです。
大事にして下さい。それと、お金を備え忘れたので、それも慎重に使うといいでしょう』
そして金が入っているのを確認した。
それはいいが、これは一体何の依頼なんだ?
『この依頼を受けるにはそれなりの実力を示すことになるでしょう。ご武運を』
ちょっと丸投げじゃないか?
それに、どうして僕みたいな子どもに頼むのだろうか、益々謎が深まるばかりだ。
そして、ふと町の様子を見たら、急ぎの用事があるのか、ある子どもが顔を隠している格好で慌てた様子で僕の方に走ってきた。その恰好が意図的だというのもなんとなく伝わった。
気づいたら、僕はその子どもに軽くぶつかった。
「うわ!」
「ひゃ!ごめんなさい」
尻もち着いた僕とその子は一瞬顔を合わせる。
よく見てみると、それは女の子だということが分かった。
ゆっくりと顔を確かめると
「!」
僕に何かが流れ込むかのようにある記憶が流れた。______
自分でも何を見ていたのかは説明が出来なかった。でも僕は不思議なことに確信したことがあった。
彼の過去にその人と同じ顔の人がいた。
いや…これは僕の記憶と疑うほど、覚えている顔だった。
続く。




