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未来創造社シリーズ

ウルトラフィルター

掲載日:2024/04/13

『パワースポット』という言葉をあまり信用していなかった自分ではあるが、チェーン店に牛丼を食べに行った際に半ば盗み聞きしてしまったようなかたちの男性二人の会話がその日はやけに気になった。


「『ガチャ』って渋いよな。最近全然SSRが来ないぞ」


自分よりは幾分若い感じのパーカー姿の『お兄ちゃん』は一度箸を置いてスマホを弄りつつそんな愚痴を口走る。近くの席で一口目にありつこうとしていた時だったが、恐らくは彼と種類の違うソシャゲを嗜んでいる身としては『ガチャ』という単語に反応してしまっていた。



<マジでそう。SSRが出たとしても既に所持しているものが来るパターンとかね>



ゲームによっては同じSSRでも『重ねて』強化できるタイプのガチャもあるけれど、ガチャ更新時の新規のSSRが異様に欲しかったりする場合には「うーん」という感じだ。お兄ちゃんの言葉に同意するようにその隣に座っていたたぶんメガネを掛けていた別お兄ちゃんも頷いていたが、彼の口から全く予期していなかった発言が飛び出した。


「そういや都市伝説ってやつなのかな。ガチャの運を上げるパワースポットがこの辺にあるらしいよ」


「はい?なにそれ。マジなやつ?」


最初のお兄ちゃんは困惑している様子。流石にずっとそちらばかりを見ているのは申し訳なかったのでそこから先は目の前の牛丼に集中しつつ、耳だけそばだてていた。


「信号3つ先行った先にあるレンタルスペース、『MIRAI』だよ。1年前くらいにオープンしたんだけど」


「へぇ、そんなとこあるんだ。でもなんでそこがパワースポットだって分かるのさ?」


「実は俺の会社の同僚の人がかなりガチャにつぎ込んでて、ちょっとヤベーんじゃないかなって思ってたんだけど、最近やたら上機嫌でさ。『なんでなの?』って訊ねてみたら、そのレンタルスペースの事教えてくれた」


「普通のレンタルスペースなんだろ?」


ここで別お兄ちゃんの声のトーンが変わって、


「いや、それが個室の中でちょっとした仕事片付けつつガチャ引くと狙い通りのSSRが出るんだってよ」


と結構なマジな感じを醸し出していた。正直そんなことがあるものかと疑いながら聞いていたのだが、紅生姜をやんわり盛った牛丼よりもその噂が気になってしょうがない。というのも、数日前に少額課金した結果がほぼ爆死だった為。


<ここから近いなら行ってみてもいいかもな>


などと考えてしまったのは同じようにその日ちょっとした作業が残っていたから。都市伝説な噂はともかく、レンタルスペースの使い心地などをチェックしてみるのも悪くないと判断したのだ。食後歩いて『MIRAI』まで移動し、店内の受付で軽く説明を聞きながらとりあえず2時間部屋を借りる事にした。



「お、すごくいい感じ」



入室した第一印象は、とにかく『爽やか』であること。あまり凝った内装にはせず、落ち着いたトーンの色合いで統一してあるシンプルな個室。それと受付で聞かされていたのだが室内は常に業務用の『空気清浄機』でクリーンな環境にしてあるという事が「ウリ」という話で、実際に入室したときの爽やかな感じはその機械によるものだと感じられた。



<まずは作業を片してしまわないとな>



値段は良心的ではあるものの利用料の分はきっちり活用しないとと思ったからなのか、或いは環境が良かったからなのかその日はかなり捗った印象。1時間経った頃にはあとはやる事がなくなってしまったので、そこからはいよいよ噂の検証に時間が充てられる。ゲームを起動し、とりあえず懐が傷まない『無料分』のチケットが手に入ったので適当に引いてみる。



1発目。



流石に無いだろうなと思っていたら、課金しても全く出なかったピックアップが一発ツモ。これには思わず「うわ!!」という驚きの声をあげてしまった。それだけではない。そのキャラクターを引き当てたことで意図せず溜まった僅かな『石』でもう一度引いてみたら、、、



「は!?マジか、もう一つ来たのかよ!?」



先ほどと同じSSRが連続で来たのだ。予想外の事態に興奮はしていたが、一旦冷静になって考える。



<いや、でも確率の収束でこの間全然出なかった分が今出ただけかも知れないな>



なんであれピックアップが連続で来たという紛れもない『事実』は残る。お兄ちゃん達の噂を聞いていなかったら『偶然、運が良かった』で片付けていただろう。なにかしら不思議な気持ちで残りの時間を過ごしていたが、刹那、『ここでまた課金をしたらどうなるんだろう?』という発想が浮かんでしまう。



それは存分に魅力的なアイディアではあった。危険な魔力というべきものが自分を支配していて、そのままそこに居座っていたら危うく諭吉を石に変えてしまうという暴挙に出ていたかも知れない。だがそこでは何とか思い留まり、時間終了15分前に半ば逃げるように部屋を後にした。店を出てから一度『MIRAI』という看板をじっと見つめる。



噂の真偽はともかく金欠気味の給料日前には危険すぎる場所である。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆



未来創造社が事業を運営を開始して一年。レンタルスペース『MIRAI』の個室に取り付けてある業務用の空気清浄機はメンテナンスの時期が訪れていた。それぞれの清浄機には自社開発の特殊な「フィルター」、『MIRAI ONE』が取り付けてあった。フィルターの取り替え時期が迫ったこともあり経営コストの関係で、フィルターは『MIRAI ONE』から他社製の標準的なものに取り替えられたという。



その数日後、とあるゲームの重課金プレイヤーが個室にて悲鳴に近い声をあげたという話があるとかないとか。

『未来創造社シリーズ』です。


『手に入れた経緯』

https://ncode.syosetu.com/n8202ea/


という作品など。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんと……そのタイミングでないとダメだった……そういう時ってありますよね(´・ω・`) でも、冷静にならないと逆に大火傷することもありますし。 人生って難しい……。 ガチャやギャンブルはとん…
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