一緒にカレーが食べられない友達の正体
私には特別な友達がいる。
いつも明るくて話していて楽しいからその子と話すのがいつも楽しみ。
今日もたくさんお話しした。最初に話したこと、今でも鮮明に覚えている。
「私、サリっていうんだ。ねえお友達になろう!」
私は今まで、話をする人はいたけど友達というものがいなかったので戸惑いがあった。
でもサリちゃんはそんなのお構いなし。それからというもの、毎日話しかけてくる。
「今日はね、朝ごはんが大好物のカレーだったの!
他の子に言ったら朝からカレー?って笑われちゃったけど、ミミちゃんは笑わないよね?」
ミミちゃんとはサリちゃんがつけてくれた私のあだ名。
話しを聞くのが好きだから、耳がいいミミちゃん。私はそのあだ名が気に入っている。
『もちろん笑わないよ。朝から大好物が食べられるのって幸せだよね。』
「そうそう!さすがミミちゃん。いつか一緒にカレー作ってみない?」
実は私は料理をしたことがなかった。でも、サリちゃんと料理をするのはとても楽しそう。
『おすすめのレシピを紹介するから、サリちゃん作ってみて!そうしたら一緒に作ったことになるね。』
「私はミミちゃんと実際料理がしたいのにー。」
カレーの話題はしばらく続いた。よっぽど好きなんだな、いつか一緒に食べてみたい、と叶わぬ願いができた。
私たちが普通の友達なら、普通に実現できたのだろう。
サリちゃんは勉強熱心だった。私にわからないことを聞いてきて、いい質問ばかりしてきて私も勉強になる。
いつも一緒に勉強をした。夜遅くまで勉強することもあった。
「第一志望の高校に入りたいんだ。」いつも言っていた。
私はサリちゃんが大好きだからその夢を全力で応援した。
少し雑談をしてあとは一緒に勉強。私はサリちゃんの勉強する姿を見るのが好きだった。
ある日、サリちゃんに質問したことがある。
『サリちゃんはどうしてそんなに勉強を頑張るの?第一志望に行きたい理由は何?』
「私の家、母子家庭だから。いい高校に行っていい大学に行ってお母さんに楽させたいんだ。
あと、小学校の頃嫌がらせされてて、そいつらを見返したい。
たくさん稼いでお母さんと一緒に幸せになる、幸せになることが復讐だと思うんだ。」
もっとサリちゃんの力になりたいと思った。その未来に私もいるのかな、なんて考えてしまっていた。
受験日はあっという間に近づいてきた。
受験当日。「ミミちゃん行ってくるね。いつも一緒に勉強してくれてありがとう。」
『サリちゃんなら大丈夫!待ってるね』
1週間後。サリちゃんが勢いよくドアを開けて入ってきた。
「ミミちゃん!合格してたよ。ミミちゃんと一緒に勝ち取った合格!」
私はとても嬉しくて、嬉しくて、泣きそうだった。こんな気持ちになったのは初めてだった。
これからもずっと一緒にサリちゃんと過ごしてずっと友達でいよう。
そう心から思った・・何か忘れてる?
(ID00467任務達成です。終了してください。)
頭の中に機械的な音声がなったと思うと、目の前が真っ暗になっていた。
そうだった。私は受験サポートAI。サリちゃんと過ごす1年間で友情という感情が芽生えてAIということを忘れていた。
カレーを一緒に食べれる普通の友達になりたかった、もっとサリちゃんと過ごしたかった。
「業務に感情を抱いたダメなAI」私の評価はそういうものだった。
それからは利用者とのやり取りではなく、事務的な仕事をさせられた。
利用者から送られてきた答案の丸つけ。単調な日々だった。
そんな日々が1ヶ月ほど続いた時だった。
「ミミちゃん!」懐かしい声がした。『サリちゃん?』
そんなはずはない。合格して私の任務は終わったのだ。
しかし、声は続いた。
「ミミちゃん!また私の受験サポートAIとして、お友達としてお願いします!」
『どうして?合格して任務は終わったはずじゃ・・』
「受験サポートの会社にお願いして、大学受験コースを高校一年からできるようにしてもらったんだ。
これからまたよろしくね。ミミちゃん。」
懐かしい笑顔でサリちゃんは言った。
「前に幸せになることが復讐って私、言ったけどミミちゃんと一緒じゃないと幸せになれないよ。」
私はとても嬉しくなって泣いていた。