表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/73

第3章〜逆転世界の電波少女〜⑬

 放送・新聞部が新年度に向けて立案したVTuber活動計画の部外交渉は、文芸部への訪問から始まった。


 オレと(もも)のふたりで部室を訪ね、山竹碧(やまたけあおい)が部長を務める文芸部のメンバーにプレゼンテーションを行ったところ、反応は概ね好評だった。

 ただ、部長の山竹(やまたけ)が、冷静に指摘する。


 「私も面白い企画だと感じています。ところで、このキャラクターの名前は決まっているのですか? 美術部やコンピューター・クラブにも協力をしてもらいたい、と考えているようですが、肝心の名前が決まっていないと具体的なイメージが湧きづらいと思います。まだ、決まっていないなら、最初は、仮名でも良いので、名前をつけてみてはどうですか?」


 なるほど、一理ある。

 オレたちは、宣伝広報活動にVTuberを利用するということを目的にしていたが、名前の付いていないキャラクターに思い入れを持つのは難しいだろう。


「言われてみれば、たしかに、そうだな……」


 そう言って、(もも)と顔を見合わせると、彼女も、うんうんと二度うなずく。

 そのようすを確認したオレは、少し前のめりな姿勢で、文芸部の部長に切り出してみた。


山竹(やまたけ)……ネーミングについて、なにか良いアイデアはないかな?」


「えっ!? 私が考えるの?」


 こちらのリクエストに、最初は、やや面食らったようすの文芸部の代表者だったが、


「う〜ん、そうですねぇ……」


と、すぐに、思案するような表情になり、脳内が創作モードに切り替わったようだ。


「あいらんど高校は、市立(いちりつ)の学校ですし、市のシンボルを名前に取り入れると良いんじゃないでしょうか? たしか、市の花は、アジサイでしたよね……?」


 文芸部の部長は、そう言いながら、手元に置いていたタブレット端末で何かを検索しはじめた。

 そして、お目当てのWEBページが見つかったのだろうか、


「こんなのは、いかがですか?」


と、端末のディスプレイをオレたちに見やすく提示する。


「このサイトに書かれているように、アジサイには、四片(よひら)という別名があります。あいらんど高校にちなんで、名字は島内……島内四片(しまうちよひら)という名前は、どうでしょう? アジサイをシンボルにすると、美術部の人たちもキャラクターデザインをしやすいかと思うのですが……」


 彼女の提案に、オレと(もも)は、再び顔を見合わせる。


島内四片(しまうちよひら)か……」


 オレが、つぶやくと、(もも)は満面の笑みで、文芸部の代表者の手を握りながら、感謝を示す。


「良いです! スゴく良いと思います山竹(やまたけ)さん!! さすが、文芸部の部長さんですね!」


 (もも)が言うように、キャラデザのことまで考慮された、良いネーミングだと思う。

 さらに、山竹(やまたけ)のかたわらで話を聞いていた同じ二年生部員の石沢(いしざわ)今村(いまむら)が、キャラクター設定について、こんな追加提案をしてきた。


「アジサイってことは、土壌によって、色が変化するよね?」


「って、ことは……そのときのカラーの違いで、性格が変わるって設定は面白くない?」


 ふたりの提案に、(もも)は、喜びの声をあげて、賛同する。


「そのアイデアも、スゴく面白そうです!」


 やはり、創作活動を行うグループは、こうしたアイデアが豊富に湧いてくるのだろうか?

 彼女たちから、次々と出てくるキャラクター設定のアイデアに感心する。


 冬馬(とうま)の提案どおり、文芸部に協力をあおいだのは、間違いではなかった。

 

 これまで漠然としかイメージできていなかったVTuberのキャラクターについて、少し相談しただけで、ネーミング案やキャラクターの性格に関わるアイデアが出てきた。


 こうした具体案があれば、美術部へのキャラクター・デザインの提案も行いやすい。


 初回の訪問から思った以上の収穫と手応を感じたオレと(もも)は、文芸部のメンバーに今後も協力してくれる約束を取りつけたあと、丁寧に御礼の言葉を述べ、彼女たちの部室をあとにした。


 放送・新聞部の部室に戻るまでの間、上機嫌な後輩が話しかけてくる。


「考えていた以上に提案が受け入れてもらえて嬉しいです! きぃセンパイと、くろセンパイのおかげですね!」


「いや、オレは、ナニもしてねぇよ」


 苦笑しながら返答すると、彼女は即座に反論する。


「なに言ってるんですか!? 山竹(やまたけ)さんから、ネーミングに関する指摘を受けた時、すぐに、命名案についてのアイデアをたずねてくれたじゃないですか! あの一言がなければ、部室に戻って命名会議をして出直さないといけなかったですよ?」

 

「あぁ、それは……あんな風に具体的な指摘をしてきたってことは、山竹(やまたけ)の中に、なにか、良いアイデアを思いついているんじゃないか、と感じたんだよ。文芸部なら、そういうことが得意そうだって冬馬(とうま)も考えてるみたいだしな」


 そう答えると、(もも)は、


「くろセンパイって、普段はニブいくせに、こういう時は、ヒトの表情とか良く観察してますよね?」


と、複雑な表情で語ったあと、なにか独り言めいたことをつぶやいた。


「ん? ナニか言ったか?」


 そのようすが気になり、問いかけてみたが、彼女は澄ました表情で、


「なんでもないですよ! 部室に戻って、きぃセンパイたちにさっきのことを報告しましょう」


と、話題を変えるだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ