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第3章〜逆転世界の電波少女〜⑧

 三葉(みつば)自身……ではないが、彼女と同じ姿をしているクリーブラットに自らの行為の責任の重さを指摘されたオレは、気持ちが沈み込み、寒空の下のベンチから立ち上がれなくなった。


 さらに、海から吹き付ける冷たい風に、オレ自身の無責任さを責めたてられているような感覚さえ覚える。


 いつの間にか、ベンチから立ち上がっていた彼女は、覇気に欠け、肩を落としてうなだれるそんな姿を見下ろしながら、


「もうこれ以上は、ナニを言っても耳に入らないかも知れないけど……」


と、なかば呆れたような口調でつぶやきつつ、


「せっかくの機会だから、アナタが、白井三葉(しろいみつば)にどれだけ大きな影響を与えているか、伝えておくわ」


と言ってから、スマホのような端末のディスプレイをこちらに向けて表示させ、動画ファイルと思われるモノの再生を行った。


 その映像には、大勢の観衆の視線を集めながら、巨大なステージの中央で歌う三葉(みつば)の姿が映し出されていた。


 映像に目を向けたあと、「これは……?」と無言でクリーブラットに視線を送ると、彼女は、その動画についての解説を行う。


「これは、いま、わたしたちが居る連邦政府の管理ナンバー、No.141421356の隣のセカイ、No.141421357の白井三葉(しろいみつば)が今月行った合同ライブの映像。アナタと交際関係に至らなかったセカイの彼女は、楽曲の制作に打ち込んで、自分のチャンネルで自作曲を披露したの。その曲が、話題を呼んで大手レーベルの合同ライブに招待されたのよ」


 たしかに、オレの知っている三葉(みつば)も、楽曲作りに挑戦していることは知っていたが……。


 オレのそばに居た彼女は、曲作りに悩んでいたようで、まだ、これほどの規模のライブを実演する機会には恵まれていなかった。


「アナタの存在がなければ、白井三葉(しろいみつば)は、いまの時点でも、これだけのパフォーマンスを披露できる。プライベートなことに多少の問題があっても、アナタが彼女の活動にポジティブな影響を与えているなら、大目に見ることもできるけど、現状ではね…………わたしの言いたいこと、アナタなら、理解できるでしょう?」


 含みを持たせた言い方ではあるが、クリーブラットの言葉の意味することは――――――。


「オレは、もう三葉(みつば)のそばに居ない方が……いや、そもそも、彼女のそばに居る資格なんて……」


 絞り出すように、彼女の言葉から感じ取ったことを吐き出すと、幼なじみと同じ姿をした少女は、ほとんど表情を変えなかったものの、


「わたしの意図するところを感じてもらえたようで良かった」


と言って、満足したようすでうなずいた。


 よく知る仲の幼なじみ本人の言葉でなくても、彼女の心情やポテンシャルを良く理解しているクリーブラットの言動は、オレに三葉(みつば)との関係を再考させるのに十分な説得力を持っている。


「色々と迷惑を掛けてしまって、本当に申し訳ない……」


 そんな風に心の底からの謝罪したが、彼女は、小首を(かし)げながら、無表情で言葉を返す。


「わたしに謝ってもらってもね……」


 ただ、オレが続けて、

 

「たしかに、そうだな……あと、オレが考えることができていなかったことを気付かせてくれて、ありがとう」


と、感謝の言葉を口にすると、目の前の幼なじみと同じ姿の少女は、ハッとしたような表情になり、ほおのあたりを掻きながら、


「なんで、こういう時に、『ありがとう』なんて言えるの……? 調子が狂うなぁ……ホント、そういうところだけは、()()()()とそっくり……」


と言って、苦笑する。

 クリーブラットは、不思議そうに語るが、彼女の言葉で自分が配慮できていなかったことに気づけたことで、いよいよ自分がすべきことが明確になってきた気がした。


 自分自身の今後の身の振り方を真剣に考えるべく思案しようとすると、クリーブラットが、続けて声を掛けてきた。


「色々と耳の痛いことを言ってしまったかも知れないけど、これからは、自分にできることをがんばって……アナタになら、シュヴァルツの計画を止めることができるかも知れない」


 こう話すということは、彼女は、『ラディカル』の思想に共感しているわけではないのかも知れない。

 

 ただ、クリーブラットは、オレを励ますように言ってくれるが、ブルームやゲルブのように捜査権を持っているわけでもなければ、ふたりから譲り受けたアイテム以外は、過激派集団に対抗する術を持っていない自分にできることが多いとは思えない。


 それでも、叱咤のような言葉のあと、激励するように語りかけてくれたクリーブラットの想いには、少しでも応えたいと感じる。


「わかった……オレに出来るだけのことはしようと思う……」


 そう言って、彼女の言葉に賛同したことを示すように握手を求めようと手を差し出した瞬間、数メートル離れた位置にある街頭に照らされた場所の空間が(ひず)んだことに気付いた。


 キルシュブリーテが、校舎屋上から逃亡を図った際にも見覚えがあるその虚空から飛び出してきたのは、オレが良く知る顔の男子生徒だった。

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