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そして悪女の被害者令嬢はいなくなった ~歌劇「悪女」ができるまで~  作者: 粟飯原勘一
第2章 帝国編 ~テイト・シャンティ・ランデブー~
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7.レゼド侯爵② ~レゼド侯爵家 当主~

 

「お義父様?」

 カトリーヌ、もといルイーザの声に私はハッと顔を上げる。

「いや…ここまで長かったなと…思ってな」

「大丈夫ですか、義父上?」

 タフィ殿は少し冷静にこちらを見ていた。

「…ルイーザ…あぁいや、君の母のことだ…ルイーザのことを思い出していたのだ」

「…」

 カトリーヌ改めルイーザは少し真剣な顔をした。

「実はな。

 ルイーザの嫁ぎ先の候補の一つが、これから行くライス辺境伯だったのだよ」

「…そう、だったんですか…」

 ルイーザの娘である彼女にはやはり思うことがあったらしい。

「…つまり、お前の父であった可能性がある男だな。

 カトリーヌ…いや、ルイーザ、本当にすまなかった」

「…お義父様…」

 その声の後は、しばらく無言だったが、タフィ殿やマチルダがルイーザに気を使って話しかけたりしていたので、にぎやかな旅になった。

 

 その日の夜に、目的にしていたライス辺境伯領の領都入り口にたどり着いた。

「ふぅ…さすがに護衛がいるとはいえ、この領都近辺は森が多いから、緊張するな」

「…そうですね、領地経営も難しそうです」

 ライス辺境伯領は、ベネディクト伯爵領とともに農村地帯であるものの、凶作になった際、隣国である帝国からの穀物の輸入拠点になるうえ、軍事拠点でもある辺境伯領だけに攻め込まれないよう周囲は国内の領境であっても簡単に侵入できないようになっている。

 比較的領地が近いレゼド侯爵領からでもかなり時間がかかる上に、本来であれば、夕方ごろに到着した隣接する子爵領で1泊してから翌朝森を超えるのがセオリーだった。

 しかし、タフィ殿がこれから帰る、婚約者を連れて、と電報を打ったところ、彼の実家(・・)がタフィ殿に「早く帰ってこい、婚約者を見せろ」とせがんだため一日でも早く移動することになった。

 

 顔見知りの門衛と一言二言会話をした後、辺境伯領に入る。

 辺境伯領は、いろいろ狙われやすいとはいえ、外の守りが強固で、内部は平和だ。

 この門をくぐってさえしまえば、夜であろうと馬車を走らせても問題ない。

 あと領都の辺境伯邸まではあと1時間ほどかかる。

「ルイーザ、疲れてはいないかい?」

「大丈夫よ、タフィ。

 久しぶりに乗り換えなしで(・・・・・・・)馬車に乗れたから楽なものよ」

「…ルイーザ…」

 伯爵家には、領地からの収入で得た立派な馬車があるというのに…それを娘に使わせないとは、伯爵を名乗るあの男は何たる不届き者だ…いや、原因はあの男ではなくあの売女か。

「お義父様…あの…」

「…ルイーザ、何か…」

「義父上…その…」

 ふと見れば二人が驚いたようにこちらを見ていた。

「…あぁ、す、すまないな…年を取って、涙もろくなってしまったようだ。

 カトリーヌ…いやルイーザ、君を最後の最後に、救えたようだ、と思ってな…」

「…いえ、お義父様はいつも優しくしてくださいました。

 伯爵家(あの家)では、過ごすのも苦痛で…領地視察と言ってこちらに来るたび、歓迎していただきました。

 それだけで十分です…」

「…ありがとう」

 感謝の言葉すらかすれてしまうくらい、涙が止まらなかった。

 ルイーザ…母の分まで幸せになってくれ…。

 

実はライス辺境伯は、第1章でも登場している人物。

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