表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/27

5.ミリエッタ② ~ベネディクト伯爵家 臨時雇いメイド~

 

「…へ?」

 思わずマヌケな声が出た。

「伯爵邸が燃えてるんだ!

 消火に手が必要だから、ミリエッタさんも来てほしい!」

「は、はい!!」

 そういって私はガウンを羽織り、バケツを持ってすぐ近くの伯爵邸へと向かった。

 

 そこからは覚えていない。

 裏口から伯爵邸に入り、邸内の水場からローランドさんやレイモンドさん、離れで休んでいたメイド長や料理人とともに消防隊が来るまでの初期消火を手伝ったらしい…。

 消火には時間がかかり、鎮火を確認したときにはすでにシラジラと空が明るくなってきていた。

 その日の朝焼けの赤みを帯びた青が次の私の記憶だ。

「…」

「伯爵邸の方ですか?」

「…え、あ、はい…」

 執事代理のレイモンドさん、長く務めたローランドさんが呆然としていたので、声をかけてきた消防隊の方に代表してメイド長が答えた。

「…伯爵様と、奥様は」

 メイド長のその言葉に消防隊の方は首を振った。

「…ジェニー様…」

 その様子に、メイド長は泣き出す。

「…あと、この火事の原因ですが…普段火の気のないエントランスからの出火のようです」

「…は?」

 泣き崩れたメイド長の代わりに話を聞いた私は、彼らが何を言っているかわからなかった。

「…えと…どういう…」

「…放火の疑いがあります」

「!!」

 その瞬間、昨夜の様子がフラッシュバックした。

「…私、見ました!

 私が帰ろうとして歩いていたら、お屋敷に向けて走っていく人影を!

 …何か見たことがあると思いましたが、新聞で見たイメルダ前夫人に似ていたような…」

「な、なんですって!?」

 消防隊の方は驚いていたが、その目撃情報をもとに、イメルダ元夫人を放火容疑で手配。

 さらにその後、ベネディクト伯爵とジェニー夫人の二人が寝室で焼死体として発見され、イメルダ夫人は放火殺人の容疑に切り替わった。

 しかしそれと前後して、伯爵邸奥にある使用人専用の別棟空き室に隠れていたイメルダ夫人が発見され、そのまま裁判を経て火刑に処された。

 

 その後、私やメイド長は元居た子爵家や男爵家に戻り、伯爵領は王家に査収された。

 そのうちどれかの公爵家に引き取られるのを見越して、レイモンドさんと執事見習として雇われていた男性は臨時代官として、先代ベネディクト伯爵が代理領主をしている伯爵領の管理をするために旅立ったらしい。

 ローランドさんはベネディクト伯爵の舅に当たる、元妻・ルイーザ様の実家であるレゼド侯爵家に雇われたとか。

 

 これが数年後、「悪女」という歌劇(オペラ)の原作となったベネディクト家の栄枯盛衰になる。

 その「悪女」が話題になったころ、先代ベネディクト伯爵が亡くなり、ベネディクト家の生き残りがいなくなった。

 

「…」

「どうかしたの、ミリエッタ?」

「…何でもないわ」

 私は子爵家に戻り、日常を取り戻していた。

 すでに子爵様が読み終わった新聞をたたみながら何とはなしに一面を読む。

「…ふぅん…相変わらず汚職がひどいわねぇ…。

 へぇ…隣国の第三皇子が結婚するのか…そして今年の麦は豊作、と…」

「ミリエッタ! こっちちょっと手伝って!」

「はい、ただいまー!」

 私は呼ばれた方向に向かいながら新聞を折りたたんだ。

 

ようやく副題「歌劇~」の話が出てきました。

ここまでで第1章が終了します。

次に一話、インターローグが入ります。

 

さて第2章の主役は…?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ