(2)
リビングの窓をじっと眺める。ひまわりが居た時は、ここに座ってみてるのが好きだった。ひまわりも嬉しそうにこっちを見てきていたから。はは…こんなにひまわりの事考えちゃうのか。本当に親ばかだったじゃないか。友達の言った通りだったな。
「ねぇ、寄人?」
「何?」
「もう一度、犬を家族として迎える?」
僕の様子を見かねたのかな?また、悲しい思いをするのか…。正直、ひまわりが良い。ひまわりは人間臭い部分があって見てて面白かったし、お利巧で、お茶目で…。僕にとって本当の兄妹だった。もう、兄妹にはなれないよ。
「ごめん、そんな気分じゃないんだ…」
「分かったわ」
僕はそのまま庭を見つめる。ひまわりを埋めた所がやけに盛り上がっている気がするな?タケノコでも生えてきた?いや、家の花壇に竹を植えるか?母さんならやりそうな気がするけど…。
どんどん大きくなる盛り上がった物は、人間の女の子へと姿を変える。え?僕がモテないのは知ってるけど、幻覚見るほどか?ていうか…何?!
「う、うわぁ?!何、あれ?!」
「あら、立派なタケノコ?じゃなくて女の子?」
「え?冗談…だよね?」
「あら、どうしましょう?」
女の子は金色の綺麗なロングヘアーで、黒い瞳のたれ目。何か…既視感がある。女の子は僕を見つけて走ってくる。窓をカリカリ爪でひっかく。これは、まるでひまわりじゃないか。思わず僕は窓を開けてしまった。
「寄人、見つけた!」
「え?何で名前知って…」
「今日はお赤飯かしらね?」
嫌だ、得たいの知れない妖怪のような女の子は。顔をべろべろ嘗め回される。妖怪垢嘗めか?というより、どうしよう。母さんにも見えてるってことは…幻覚じゃない。あれ、夢落ち?
「え…誰?」
「ひまわりだよ、寄人!」
「いやいや!人間じゃないよ?ひまわりは犬だよ…ね?」
昨日死んだばかりのひまわりを名乗るのは、良くないだろ!というより、庭から生えてるから人間かどうか怪しいよね?人間じゃなかったら…本当にひまわりって事…?何が起きてるんだ?!
「あら、ひまわりちゃん!」
「そうだよ、ママ!」
ひまわりは母さんに抱き着く。母さん、この状況で飲み込むのは…コミュ強すぎない?違うな…騙されやすいって事か?詐欺に気を付けないと…とか言って場合じゃない!なんで母さんにはわかるんだ?
ひまわり要素は確かにあるけど…。目の前の女の子をじろじろ見つめる。あれ…この子全裸じゃないか!僕はすぐに後ろを向いた。
「服!着ていないよ!!」
「暑苦しいから嫌い!」
「そうねぇ、ひまわりちゃん服着なかったものね」
「ね~!」
今は人間ということにするなら、服は着てくれ。僕だって一応男だ。それなりに反応はしてしまうと思う。今は驚きで何もないけど。母さんは女の子に「こっちにいらっしゃい」と言い、連れて行ってくれた。
家に招き入れた僕のせいか…?ひまわりと重なる部分も少なからず在りはするけど……。ああ、良かった。とでも思えばいいのか?入れに招いてしまったのは僕だけど、母さんもあんなにすんなり受け入れるか?考えれば考える程、分からない。
しばらくして、バタバタ慌ただしい足音と共に、女の子がリビングに現れる。ああ、今回はちゃんと服を着ているな。
「見て見て!着た!」
「ああ、偉いね」
「寄人、嬉しい?」
「うん?嬉しい…かな?」
ひまわり?は凄い嬉しいらしい。くるくる回って、ニコニコしている。何故か、尻尾が見える気がする。ぶんぶん振り回しているかのような…。新しいおもちゃを渡した時の犬の反応を見ている気分だ。
何故か、首を傾げてあたりを見回している。何を探しているんだろ?地面にあって、リビングに置いてあったもの…?そういえば、あの位置にはトイレがあったな。トイレ探しているのか。
「もう、トイレはそこに無いよ?」
「じゃあ、庭でする!」
「ちょ!!ダメだって!母さん~!」
「どうしたの?トイレ?」
「そうだって、連れて行ってあげて」
ひまわりは母さんの後に続いて部屋を出た。う~ん…人間として生まれていたらトイレは最初に教わるしな…。そもそも、犬のひまわりが使っていたトイレの場所を把握しているのも不気味だよな。僕の認識でも、少しずつ彼女をひまわりとして捉えているのかもしれない。




