(2)
リリイと遊んでいると、父さんが帰ってくる。リリイとひまわりは飛んで行って「お帰り!」と挨拶をしている。父さんの「よしよし」という声と共にリビングに入ってくる。
「リリイの主人が見つかったよ」
「本当か!複雑な気持ちだ~…。」
誰からしてもそうなんだけど…帰ってきたときに「お帰り!」って飛んでくるのは可愛くて仕方ないんだろうな。僕だって寂しい。
「主人は誰だったんだ?身近な人だったんだろう?」
「そうだね、クラスメイトだったよ」
「いつリリイは帰っちゃうんだ?」
「明日かな」
「早いよ~…」
膝の上にリリイを乗せて撫でながら肩を落とす。僕以外は皆、犬が好きじゃないと思っていた。でも、違うんだ。ひまわりが死んだあの日、皆悲しんでいたんだな。涙を流していないから悲しんでいないわけじゃないんだ。
「そういえば、帰りに服を買ったんだ」
「え?誰の?」
「リリイの」
「わんわん!!」
「おお、そうかそうか!」
おい…僕が買ったやつ…どうすんだよ!!明日届くから早く寝て待ってようと思ってたのに…。でも、大丈夫か。お別れ会だし、いっぱいあった方がいいだろう。
「どうだ、これ!」
「それ…買ってきたの?」
「ダメか?」
ピンクのひらひらのついたワンピースっぽい派手に可愛い洋服。きっとニコニコしながら買ってきたんだろうな…ちょっと変質者っぽくないか?
「リリイ、着れるか~?」
「わんわん!」
「ほら可愛い!」
反面教師で冷静になれる…いやね、確かに可愛いけど。猫可愛がりって怖いな。正気を失っているように見える…。まさか!僕もこんな感じだったのか…!僕は母さんをすごい勢いで見る。母さんは頷いていた。
ショックだ…どっちにしろ寝ようと思っていたし…寝よ。明日クラスメイトに会う時、どんな顔して会えばいいんだよ…。
「ひまわり…寝よう」
「うん!わかった!」
「おやすみ」
一声かけてひまわりと一緒に自室に戻った。父さんは未だにリリイに夢中だった。
翌朝、散歩に行って朝食を食べてる時に、荷物が届いた。すごい早かったな…荷物を開封してリリイに着せてあげる。サイズはぴったりだった。
リリイとひまわりとなんだかんだ過ごしていたら、太鼓の音が響きだす。犬って…大きい音がするとダメだったよな?少し大きめの神社だから…そこまで大きい音ではないだろうし、大丈夫だろう。リリイを抱きかかえて、ひまわりと一緒に家を出た。
近所の神社は徒歩十分ぐらい。歩いている最中に連絡をする。リリイの主人の方はもう着いているらしい。車か何かで来たんだろうな。
「どう?太鼓の音がすごいでしょ?」
「たいこ?」
「どんどん!って音しない?」
「する!」
「それが太鼓だよ」
「おぉ!」
どんな反応?!あんまり興味ないかな?音を聞くだけでも結構楽しいと思っていたんだけど…僕だけなのかな?
神社の入り口に着いてあたりを見回す。そういえば…顔を知らないような…。どんな人が主人なんだろうか?賢い人なのかな。そんなことを考えていると、声を掛けられた。
「麻木さんですか?」
「そうです、リリイのご主人の…?」
「そうです!」
「わんわんわん!!」
「あってるって!」
「え?どうして?」
「なんでもないんです!」
ひまわり!余計な事言わないで!皆が知ってるわけじゃないんだから!僕らだけの認識だよ!
「リリイと…この服をどうぞ」
「え、いいんですか?!」
「いいんです、家にあった物を気に入ったみたいなので!」
「ありがとうございます!いくら支払えば…」
「いえいえ、生きていただけで良かったので…では!」
ひまわりを引っ張ってその場を去る。入口から少し遠ざかったところで一度二人で落ち着く。
「ひまわり?全員が全員、犬とは喋れないんだよ?」
「そうなの?」
「そう、だから能力は秘密にしてね」
「わかった!」
ばれてもいいけど…面倒なことになりかねないし…面倒ごとに巻き込まれるのは嫌だからね…。
「じゃあ、お祭りを見て回ろうか」
「うん!いこ!」




