科学ごはん
「さて、今日から始まりました新番組『科学ごはん』のお時間がやってまいりました! この番組では科学の力を使って、簡単に、確実に、美味しいご飯をつくる方法を生中継でテレビの前の皆様にお伝えします!」
「記念すべき第一回目のテーマは『白米』! 我々日本人の食生活からは決して切り離すことのできない存在です! では、早速実演していきましょう!」
「どうせ最初はお米の研ぎ方からだろ……なんて予想していらっしゃる方も多そうですが、実は案外重要ではないんです! 適当にちゃちゃっと研いで、すすいで、目分量で水を加えて、炊飯器にドーン! これでオッケーです!」
「はい! 1時間前に炊き始めておいたごはんがこちらです! さて、炊飯器オープン・ザ・ライス!! おおっ!! とってもべっちゃべちゃですね!! 完全に水の入れすぎです!!」
「でも大丈夫! ここからが科学の力の見せどころです! このべっちゃべちゃのご飯にケイ酸ゲルと酸化カルシウムを大さじ3杯ふりかけます! すると、なんということでしょう! あんなにべっちゃべちゃだったご飯の水分がみるみる抜けていきます!」
「ほんの少しだけご飯がエメラルドグリーンになってしまいましたが、これでほかほかつやつやで美味しそう白米ができあがりました! さらに、ここからもうひと手間かけるのが大事なんです! 人が旨味を感じる成分であるグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸、コハク酸を、白米が見えなくなるくらい徹底的にふりかけます!!」
「これで完成です!! ええ、皆さんのご心配はもっともです! はたして本当に美味しいのか!? そもそもちゃんと食べることができるのか!? それでは私が今から実際に頂いて、その美味しさをお伝えしましょう!!」
「いただきますっ!! ……おおおっ!! これはっ!! すごひいい!! 舌らしびれるほろろうまみっ!! かいかんっ!! うまあっ!! はひがとまりませんっ!! もう手づかみでいいやっ!! うまああっ!! うひいいっ!! ひゃあああ!! もっと!! もっとおよこせええ!!! ぐおおおっ!!」
突然画面が切り替わり、「都合により、番組を変更してお送りしています」というテロップとともに幻想的なフィヨルドをバックに湖面を横切る一艘のカーフェリーが映し出されて番組は終了しましたとさ。めでたし、めでたし。