可愛い子供たち
アルビスと出会った時のことを思い出す
あのあと2人で何度もデートをして、人間で言うファーストキスというものもアルビスにやった
ザギュラビア達からの今までの扱いの事を話すと、アルビスは親身に話を聞いてくれた
一緒に怒って泣いてくれた
そんなアルビスを、いつの間にか私も好きになっていた
「イザリオ、どうしたの?」
「いや、お前と出会った頃を思い出していてな」
「そう、懐かしいね。あの時の初々しいイザリオも好きだけど、今の母の顔をするイザリオも大好きだよ」
そう、私の腹の中には子供がいる
それも4人も
「どんな子かな」
「きっとお前に似て強いぞ」
「イザリオみたいに美しいだろうなぁ。でもやっぱり」
「ああ」
どんな子でもいい
元気に産まれてきてくれればそれでいい
早くこの手で抱いてやりたい
実は初デートから三日後に、アルビスは絶対神になった
ザギュラビアを丸呑みし、神の力を手に入れたのだ
あれほど尊いだの、気高いだの言っていた私だが、そんな気持ちはザギュラビアが死んだ瞬間消え去った
きっと私は操られていたんだろう
兄妹達は怒り、私を殺そうとしてきた
だから殺した
当然だ
兄妹の誼で生かしてやろうと思っていたが、殺そうとされたら話は別だ
話を戻そう
美しい白龍だった彼の鱗は見る角度によって虹色に輝くようになった
「イザリオ、君の瞳と同じ色だ」
なんて言うから、嬉しくてまた泣いてしまった
頭には透明な角も二本生えていて、神々しく威風堂々としたアルビスがより好きになった
「イザリオ、それは?」
「ああ、子供たちのアミュレットだ」
私は生まれてくる子供達のために何かできないかと考え、アミュレットを作ることにした
「これは、、、指輪か」
「ああ。私の魔力を固めたものをはめ込んである」
アルビスが手に取ったのは真黒な丸みを帯びた石が金の台座に嵌め込まれた指輪だ
「とても綺麗だ。きっと子供たちも喜ぶと思う。そうだ!私も一緒に作ろう」
「そうか、それは助かる。子供たちの力になるようにと願いを込めたはいいが、その指輪一つ作るのに千億年かかったんだ」
「それは大作だね」
「ああ、最高のものをプレゼントしたいからな」
「じゃあ私も作るか。と言っても、何を作ればいいんだろう」
「案が浮かばないのであれば、その指輪を真似してみたらどうだ?」
「うん。そうだね、参考にさせてもらうよ」
「ああそうだ」
「なんだい?、、、イザリオ!?」
私は異空間からハンマーを取りだし、
「ふんっっっ!!!!」
アルビスの頭に向けて大きく振りかぶった
パキンッ
アルビスの角の先が欠ける
「すまない、お前の角が欲しくてな」
「驚かせないでよ。てっきりこの前一つ星を壊してしまったのがバレたのかと、、、あ」
「、、、アルビス。私と少し「オハナシ」しようか」
「ひぇっ」
二千億年後、、、
「やっと全員分完成したな」
「うん、予定日までに間に合ってよかったね」
この二千億年で、私は一つ、アルビスは二つアミュレットを作った
私が作ったのは片手剣だ
金の柄にはアルビスの角を加工して作り出した透明な宝石が三つ埋め込まれている
子供用で今は小さな剣だが、成長するに連れてサイズも変化するようにしてある
もちろん前に作った指輪もだ
実は、本体を作っていたら千五百億年ほど経っていて焦った
出産予定日が近づいていたため焦ってしまい、角を三つに砕いてしまったが、元々嵌めるための窪みは三つ作っていたためなんの問題もなかった
「素敵な剣だね」
「ああ、自信作だ」
「なるほど。私の角のはそこに使ったのか」
「焦って力加減を誤ってしまってな。3つに分かれてしまったが、この方がかっこいいだろう?」
「うん、私もそう思う。イザリオ、私が作ったアミュレットも見て欲しいんだ」
アルビスが見せてきたのは五つの丸みを帯びた白い石が銀の台座に嵌め込まれた腕輪だった
「私は君みたいに上手く魔力がコントロールできなくてね。私も指輪を作ろうと思ったら石が五つに別れてしまったから、腕輪にしたんだ」
「いいと思うぞ。白い石が綺麗だし、形も皆揃っていて美しい。それに、二人だけ指輪だと他の子が寂しがるかもしれないしな」
「たしかにそうだね、ありがとうイザリオ」
「私は何もしていない。もう一つは何を作ったんだ?」
「もう一つはこれ」
それは金色の月桂樹の冠だった
「おお、これは凄いな」
「だろう?これには苦戦したよ。私は細かい作業が苦手だけど、どうしてもこれを作りたくてね」
「よくできてる。頑張ったなアルビス」
そう言って褒めると目を細めて本当に嬉しそうな顔をするアルビスが愛おしい
「それとこれも見て」
アルビスが私が手に持っていた冠を指差す
「これは、、、」
見てみると額にあたるところに細いチェーンのようなものによってアルビスの角を加工したのであろう水晶が垂らされていた
「君が私の角を使うと言うから、私も使ってみようと思ってね」
「そうか。うん、綺麗な水晶だ」
「鱗も加工して試してみたけど、やっぱり角の方が合ってる気がしたんだよ」
「流石だな」
「ありがとうイザリオ。子供たちに喜んでもらえるかな?」
「きっとな」
私は自身の腹を撫でながらそう言った
「イザリオ」
「なんだ」
「愛してるよ」
「知っている。私もお前を愛している」
アルビスの大きな口と私の小さな唇が優しく触れ合った
子供が生まれた
まだ実体の無いふわふわとした光の塊だ
自分で動くことも浮かぶこともできない
慎重に子供たちを抱き上げる
子供の成長は早いから、3億年もすれば直ぐに実体を手に入れられる
早く力強く抱き締めてやりたい
4人の世話をするのが待ちきれない
「イザ、リオ、ありがとう。本当にっありがとう」
今はこの大きな子供の世話も必要みたいだがな
「いつまで泣いているんだ?」
「ぎゃぐに゛な゛ん゛でな゛がな゛い゛の゛!?!?」
「さっき散々泣き喚いたわ」
子供達を産んでいる時、この世のものとは思えない程の痛みと苦しさに悶え、力が抜き取られていくような感覚に恐怖し泣き喚いたのだ
周囲の星も天変地異程度の被害を受けたようだ
本当に申し訳ない事をした
泣いている間、アルビスを何度か殴ってしまった
度々吹っ飛んでいたが、まぁ大丈夫だろうな
「アルビス、いつまでも泣いていないで早く名前をつけよう」
「う゛、ん。そうだね」
アルビスの頭を優しく撫でると静かになった
やっと泣き止んでくれたようだ
私の抱えている四つの光はそれぞれ
白、黒、赤、緑
この四つの色がついていた
「綺麗だね」
「ああ、早く抱き締めたいよ」
「私もさ。そうだな、、、私は白と赤の子に名前をつけよう」
「なら私は黒と緑の子だ」
アルビスが白と赤の子達を自身の手に乗せる
「、、、決まったよ」
「私もだ。お前と私の名前を入れた」
「!ははは、まさか君も同じだとは思わなかったよ。私も君と私の名前を入れた。白の子が「アルカナ」、赤い子が「カイザー」さ。女の子だったら「レイザ」もアリかな、、、でもこのオーラは男の子かな」
「そんなことが分かるのか」
「なんとなくだけどね。イザリオは?」
「私は黒の子には「アビス」、緑の子には「クリオズナ」と名付けた」
「アビスにクリオズナか。とてもいい名前だね」
「アルカナとカイザーという名前も私は好きだ」
私達は手の中にいる子供を見る
ああ、愛おしい
生まれてきてくれて、ありがとう
「そうだ、四人に宇宙を見せてあげよう」
「それはいい考えだ」
「イザリオ、私が四人を抱いていてもいいかい?」
アルビスがキラキラした目でこちらを見つめてくる
「構わない。ただし、子供たちは軽いから少し強めの風が吹いただけで飛んでいってしまう。慎重にな」
「分かったよ」
そう言って私達は宇宙へ飛び立った
「見てごらん、アレはブラックホールと言うんだ。しかもあれは、、、レアなパターンだよ。あの中は色々な星に繋がっているんだ」
「本当だな。十兆年ぶりくらいか」
「私も久しぶりに見たよ」
なんて会話をしていると、目の前に怪物が現れた
雑魚だ
一回殴ってやれば塵となり死んだ
だがそれがいけなかった
あの時、塵も残さず消し去ってしまっていれば、こんな事にはならなかった
「は」
「?どうしたアルビス」
「は、」
「、、、!?まさか!?」
「はっくしょおおおおおおおおおおおい!!!!!!」
塵を吸い込んだアルビスが、勢いよくくしゃみをした
その勢いで子供達が飛ばされる
急いで追いかけるが風の方が圧倒的に速い
それどころか私も塵を吸い込んでしまい、、、
「へ、、、へ、、、ヘクチュッ」
また突風が吹く
今この時ばかりはアルビスと自身の強さを憎んだ
最強二人のくしゃみによって生み出された風は留まるところを知らず、遂にブラックホールの目の前まで四人を運んでしまった
「待って!!アビス!クリオズナ!カイザー!アルカナ!」
瞬間、アルビスが高速で横を通りすぎる
あともう少しで届くそれなのに
「、、、嘘、そんな、、、」
子供たちはみんなブラックホールに飲み込まれ、そのブラックホールもすぐに消滅してしまった
「っイザリオ」
「アルビス!!、、、私は、どうしたらいいんだ?」
「イザリオ、一回落ち着こう」
「落ち着いてなどいられるか!!!!」
「大丈夫、あのブラックホールを通ったんだ。この宇宙のどこかの星に子供たちはいるはず」
「あ、ああ、そう、、、だな。すまない、冷静さを欠いた」
アルビスに宥められやっと落ち着いた
この宇宙は私達にとって庭のようなものだ
本気を出せば直ぐに見つかる
私達は拠点としている新しく作りだした小さな星に1度帰った
「、、、イザリオ」
「どうしたアルビス。もう子供達が見つかったのか?」
「いや、そうじゃない。アミュレットが無くなってる」
「なっ、嘘だろう!?」
見てみると確かに、私達が作ったアミュレットは無くなっていた
「誰かがこの星に近寄った形跡は無いし、行方は謎としか言いようがないだろうね」
「そうか。まあ、大丈夫だ。なくなってしまったのならばまた新しく作ればいい」
「うん、そうだね」
子供達がいなくなってから20年が経った
「イザリオ!見つかったよ!」
「本当か!何処の星なんだ」
「ほら、ここ」
アルビスが宇宙地図を見せてある星を指差す
宇宙地図とは、アルビスが作ったあらゆる星が描かれている地図である
「この星は、、、」
なんとも面倒な星に子供たちは落ちてしまったようだ
「イザリオ」
「ああ、今すぐ会いに行こう」
可愛い子供たち
今、父と母が迎えに行くぞ