貴方と出会う
宇宙には無数の星が存在している
それぞれの星に神がいて
世界を見守り、時には宇宙の怪物から星を守る
そんな神達を従える神もいる
それが私が仕える『絶対神 ザギュラビア』
この宇宙で最も強く、気高く、尊い御方だ
「ねぇ〜、地球産のポテチ切れたから担当の神に献上するよう言っといて〜」
テレビゲームをしながら怠惰を極めているがこれでも神だ
「かしこまりました」
「よかったねぇ、失敗作のお姉様でもいつもお父様の雑用として使って貰えるんだから」
この子はルリル
私の妹
「はい、大変名誉なことと存じております。ルリル様もなにか御用が御座いましたら私をお使い下さい」
私はイザリオ
ザギュラビア様の最初の創造物で失敗作
初めての創造で手探り状態だったザギュラビア様は加減が分からず、御自身の力のほぼ全てを使い私を創造された
そのため私の強さはザギュラビア様を除けば最強クラスだ
私は命令に従い、黒い鳥のような翼を広げ宇宙へと飛んだ
「あ、あとコーラもね〜」
「、、、かしこまりました」
少し飛んだところで違和感に気づく
白い光のようなものが私に向かって来ている
時空の割れ目か?いや、違う
、、、!! 怪物か!
白い光だと思われたものは巨大な白龍だった
普段ならば怪物など横を通っただけで消滅する雑魚だと気にも留めていないところだが、今回は違う
強い
それもものすごく強い
なんなんだあのオーラは!?
周囲の星がどんどん砕け散っていく
あの強さは私以上、、、いや、ザギュラビア様をも越しているかもしれない
殺さなければ
何としても、今ここで私が殺さなければ
私を囲むように異空間に繋がる小さな穴がいくつも現れる
その異空間から黒い槍が何千本と生み出された
これは私の魔力を限界まで濃縮し固めたものだ
一つで宇宙の5分の1は消し去ることができるだろう
それを直ぐにあの白龍に向かって放つ
「死ねぇぇぇぇぇぇええええ!!!!!!!!」
「すみません、道に迷っぶごばぁあ!?!?」
「死ね!!死ね!!」
「あのっごぶぇぶあ!ちょ、まっぐぼぇばあ!?!?」
「死ねやゴミがあぁぁぁ!!!!!!」
怪物と戦い始めて約1億年がたった
始めてたったの1億年だというのに私はもうほとんどの魔力を使い切ってしまった
なのに奴は1度も攻撃をしてこなければ傷一つ付いていない
ぐっ、舐められている
「あの、もういいでっゴッハアア!?!?」
仕方ない、物理で行くか
私の得意技 「1秒間に100億回パンチ」だ
殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、たまに蹴る、殴る
そんなことをしていたら10億年が経っていた
さすがに10億年間殴り続けるのは骨が折れた
それにたぶん、こいつは私が攻撃をする度に強くなっている
最初は効いていたと思われるパンチも、後々はマッサージのように扱われていた
もう体力は残っていない
魔力は全快しているが、もうこいつに効かないことは分かっている
「くっ、殺せっ!」
「ふぅ、いえいえ、殺しませんよ。マッサージ、とても気持ちが良かったです」
「なるほど、私を直ぐには殺さず、甚振ろうと言うわけか。というかマッサージでは無い!」
「あ、すみません。甚振るなんてとんでもない。貴女みたいな美しい方に出会えて、逆に感謝したいくらいですよ」
「っな!?こ、この私が美しいだと?笑わせるな、私は美しいなど、生まれてから1度も言われたことは無い!ザギュラビア様だって、私は兄妹の中で最も醜いと仰った」
「そんなことは無いと思いますよ。貴女は私が見てきた方の中で1番美しい」
ああ、嫌な記憶がぶり返す
私にはルリルの他にも兄妹がいる
ザギュラビア様が創造の力を完全に使いこなすことができるようになられた際にに創られたものたちだ
兄妹達は皆同じ顔をしていて、とても美しい
ザギュラビア様が望まれた最高の造形だ
皆、ザギュラビア様に愛された
だが私はダメだった
「イザリオ、お前は一番強いのに、一番醜いね。完全なる失敗作だ。でも殺さないであげる。ほら、嬉しいだろ?」
「はい、ザギュラビア様。恐悦至極に存じます」
ザギュラビア様と兄妹達は、星の輝きを集めたような金髪に、白い肌、穏やかな目元にはサファイアブルーが煌めく
対して私は、強すぎる魔力に侵された肌は薄汚い灰色に、髪はどこまでも続く深淵の黒、目元は釣り上がり、瞳は何色にも変色し、兄妹達に散々馬鹿にされた
その私が、、、美しい?
「本当か?嘘じゃないのか?」
「もちろん本当ですよ。私は貴女程凛々しく、美しく、それでいて愛らしい方を見たことがありません。ああそうだ、貴女に話しかけたのは道を聞くためだったんですが、驚かせてしまいましたかね」
真っ白な鱗に覆われた龍が穏やかに言葉を紡ぐ
どうしてだろうか、目から液体が流れ出ている
これは、、、涙、と言ったか
「おやおや、泣かせてしまいましたか?」
白龍は手でそっと私を持ち上げると私の顔を舐めて涙を拭った
「すまなかった。私は、お前を怪物だと勘違いしてしまった。突然攻撃されて驚いただろう。なんと謝ればいいか」
「いいえ、貴女は間違っていません。私は怪物です」
「!?そうとは思えない。怪物は皆凶暴で、まともな知性を持っていないはずだ」
「ええ、そうですね。私は突然変異体なんです。皆と違う私は、怪物になりきれませんでしたがね」
「そうなのか。、、、私も、皆と違うんだ」
「では、おそろいですね」
「ふっ、そうだな」
「貴女のお名前をお聞きしても?」
「もちろん。私はイザリオという」
「イザリオ、、、素敵な名前ですね」
「ああ、ザギュラビア様は私には名前を付けてくださらなかったから、自分でつけたんだ。お前は?」
「私はアルビスです」
「、、、良い名だ」
アルビス、、、か
「ところでイザリオ」
「なんだ?」
「どうやら私は、貴女が好きなようです」
「そうか。私もお前が好きだ」
「好きは好きでも、私は恋愛感情の好きです。一目惚れしました」
「?、、、!?なっ、は!?」
突然なんなんだ!? 顔が物凄く熱い!
きっと私の顔は真っ赤になっていることだろう
「デートでもいかがですか?」
え!?えっと、どうすればいいんだ!?と、取り敢えず
「の、望むところだ!!」
なんだか違う気がするがこれでいいだろう
「ポテチまだかな〜?」
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彼らにとって1億年は10分くらいです