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英雄候補の冒険譚33

帝都アルヴァは帝国の首都だ。

街一つが巨大な城壁に覆われた都市であり、それを守護する騎士団と冒険者たちが魔物の侵入を防いでいる。

ありとあらゆる店舗が立ち並び、手に入らないものは無いとまで言われている。

ギルドの本部があるのもこの都市で、支部とは比べ物にならないほど施設が充実しているらしい。

そんな帝都に、僕たちはついにやってきたのだった。


「街の活気が違うね…人も多い」

「まぁ、私たちが元いた街と比べる方が間違っているわね…。ここが帝国で最も栄えている都市と言っても過言ではないのだから」


僕は周りの様子を感嘆しながら眺めていたが、ローザの方は場慣れしているというか、落ち着いているようだった。

その様子に、少し気になったのでローザに問いかけてみる。


「ローザは来たことがあるの?」

「昔、父様に連れられてきたことがあるわ。懐かしいわね、あの頃と街の様子もそう変わらないわ。道案内なら任せておきなさい」

「わかった、頼らせてもらうよ。じゃあ、まずはギルドから…」


ローザの自信ありげな表情に頼もしさを覚えつつ、僕たちはまずギルドの本部へと向かっていった。




大通りを進んでいき、ギルド本部へと到着すると、広々とした空間に幾つものテーブルやカウンターが存在していた。

食事場や酒場も併設されているようで、テーブルを囲んで飲み食いしている冒険者の姿が見てとれる。

入るなり、幾らかの視線が僕らへと注がれたが、すぐに喧噪にかき消されるかのように視線はなくなっていった。

僕たちはその様子を眺めながら、依頼の張り出された掲示板にまずは足を進めた。


「うわ…多いな…」

「帝都では人だけではなく魔物も多いみたいですね…」


巨大な掲示板に、びっしりと依頼内容の書かれた貼り紙が並んでいる。

依頼内容はほとんどが魔王軍との戦いに関するもので、有名な魔物などには懸賞金も賭けられているようだった。

それらを一つ一つ眺めていくと、見知った顔―――魔将エドの討伐要請の紙があった。

とは言えすでに討伐されたことを示す×印がつけられており、依頼は完了していることが一目でわかる。

討伐報酬は5億、となっていた。


「…5億!?」


支部に報告した時は、懸賞金が用意できないので暫くお待ちいただくか、本部にご足労願います、と言われていたが、5億にもなるとは思ってもみなかった。

これだけあればチーム内で山分けしても相当な額になる。

何なら、マリアさんの宿屋を建て直す際の資金援助ができるかもしれないなどと考えが浮かび上がる。

ローザ達もその貼り紙に気付いたようで、僕の呟きに反応して口を開いた。


「あら、結構な額がかかってたのねアイツ。どうする?報酬を受け取りに行く?」

「ああ、えっと、どうしようかな」

「持ち歩くのが不安なら、ギルドに口座を作って預けておくのも手だぜ」

「そうするのが無難かな…」


ヴィンセントの提案に、僕は賛同することにした。

こんな大金が手に入っても、持て余すだけだろう。

預けておいて、いざというときの活動資金にするのが堅実だと思われる。

そう決めると、僕はギルドの受付の方へと歩いていき、この件を話す。


「すみません…魔将エドの討伐報酬を受け取りたいのですが…」

「ああ…ウィル様とその御一行ですね。承りました、奥の部屋へどうぞ」


すでに僕らの顔は知られていたようで、細かい確認などは無く、あっさりと奥の部屋へ通される。

部屋の中のソファーに皆で腰を下ろすと、暫くして壮年の男性一人と、大きな鞄を持った女性一人が入室してきた。


「ようこそ、ギルド本部へ。本部長のユリウスです」

「どうも、ウィルです」


にこやかな微笑みと共に、握手をしてくるユリウスさん。


「この度は魔将討伐おめでとうございます。いや、大変ありがたい話です、魔王軍との戦いに優秀な戦力が加入してくれているというのは」

「…ありがとうございます」


軽く挨拶を済ませると、早速とでもいうように控えていた女性が鞄をテーブルの上へと置き、開いた。

そこには、おそらく今回の懸賞金だろう、金貨の山が入っていた。


「魔将エド、並びに魔将ダーレイの討伐報酬、合わせて7億です。ご確認ください」

「どうも…口座を作って、預けておいてもいいでしょうか?」

「ご利用ありがとうございます、では手続きの書類を…」


話は手早く進んでいき、書類に簡単に必要事項を記入すると、チーム用の口座を作り終える。

一通りの手続きを終えると、ユリウスさんが口を開いた。


「帝都にご滞在の予定でしたら、私たちの方から宿の手配などを済ませることもできますが…いかがいたしますか」

「…せっかくなのでお願いします。皆もそれでいい?」

「構わないわよ」

「承知しました。それでは、これにて失礼させていただきます」


丁寧に頭を下げると、ユリウスさんと女性は部屋を退出していった。

僕はふぅ、と一息ついた。


「ギルドの偉い人が出てくるとは思わなかったな…ちょっと緊張したよ」

「それだけあたしたちが活躍してるっていう事よ。自信持ちなさい」

「お嬢はお嬢で平然としすぎだろ…度胸があるというかなんというか」

「特に問題が起こらなくて何よりです」


仲間内での雑談に花を咲かせつつ、僕らは宿の手配が終わったという報告を待った。

そしてその後、ギルド本部でやる事を終えると、ユリウスさんの手配した宿へと向かった。

宿は帝都の中でも質の高い場所だったようで、マリアさんの宿屋の数倍の規模の建物だった。

入るなり広いロビーに案内人が現れ、ユリウスさんの事を伝えると宿の部屋へと案内してくれた。

そうして各自自分の部屋へと入室すると、窓から日暮れ前の夕焼けが見て取れた。


「今日も、もう終わりか…少し、疲れたな…」


椅子に腰を下ろして、窓から帝都の街並みを眺める。

数多くの堅牢な建物が立ち並び、大通りは未だに大勢の人々で賑わっている。

魔王軍との戦いが日夜行われているとは思えないほど平和な光景だ。


「少し早いけど、明日に備えてもう休もう」


そう決断すると、僕は上質なベッドへと横になり、目を閉じた。

不定期更新予定です。

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