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英雄候補の冒険譚32

魔将エドを討伐して数日後。

僕らは、現状の自分たちの戦力を把握するためにチームメンバーでローランドさんの邸宅でテーブルを囲んで会議を行っていた。


「改めて考えるとウィルの魔法の才能はずば抜けているわよね…私も自信はある方だけど、一歩劣ると言わざるを得ないわ」

「言うほど凄いかな、僕」

「凄いのよ」


テーブルから身を乗り出して強い声音で断言するローザ。


「一目見て魔法を習得するなんて、聞いたことがないレベルの話よ。それも基礎魔法とかじゃなくて、父様の奥義を…あれには驚かされたわ」


腕組をしながら、改めて椅子に深く背を預けるローザの姿を見ながら、僕はそういうものなのかと思案していた。


「魔法の構築も滅茶苦茶早いし、無詠唱や並列魔法も覚えている…魔法戦なら人類の中でもトップクラスでしょう。…この年で末恐ろしいわよね。流石はあたしが見込んだだけのことはあるわ」

「褒められてばかりだと何だか気恥ずかしいな…」


得意気に話すローザに対して、少し照れ気味に頬を掻きながら視線を逸らす。

ローザは足を組みなおして頬杖をついた。


「まぁ、剣士としては特に見るところのない技量だけど…魔法使いなら気にするほどの欠点じゃないわよ。あたしだって、杖術は護身程度だし」

「そっかぁ…」


剣を持ってはいるが、扱いが熟練しているわけではないのは自覚しているので、素直に頷いた。

なんだかんだで、自分の才能が魔法使いとしての能力に偏っているのは薄々感づいていた。

今から剣の腕を鍛え上げるよりも、魔法の扱いに習熟した方が効率は良いだろう。

そう自身の今後の方針を結論付けると、次に他のメンバーについて話を転がす。


「ローザは…僕と同じで魔法使いだよね。能力に関してはどう見積もっているの」

「得意の炎魔法ならウィルにもそうそう劣らないとは思っているわ。他の魔法も多少は覚えているし…同世代の中じゃ飛びぬけている方なのよ?」


ローザがそういうからには、事実としてそうなのだろう。

つまりこのメンバーには二人の優秀な魔法使いがいるということになる。

火力面に関して言えば、非常に優れていると言っていいだろう。


「アリスは…回復魔法と、パワー型の接近戦スタイルだよね。前に出て戦う前衛型のタイプだ」

「そうですね、そのつもりで動いています」


アリスが首肯を返す。

最初の頃はそんなにパワーに優れているという印象は受けなかったが、意外なことに適性があったらしい。


「魔力による肉体強化に秀でている、と言えるわね。腕力ならこのチームの中でもトップなんじゃないかしら」

「お褒めに預かり光栄です」


心なしか自慢げに胸を張るアリス。


「…で、俺が前衛の盾役、と。まぁ、魔力を放出する才能は無いんで自然とそうなったわけだが」


続けて口を開いたヴィンセント。

ヴィンセントは軽く肩を竦めてみせる。


「鎧含めて全身を強化して、防御を一手に引き受ける。まぁ、地味だが重要な役割だと思っているぜ」

「異論はないよ、助かってる」


僕はヴィンセントに同調するように頷いた。

魔法使いとしては敵を足止めしてくれる前衛の存在は非常にありがたかった。

いるといないとでは魔法に対する集中力が違ってくるため、威力などに影響が出かねない。

一通りチームメンバーの能力の確認が終わったところで、僕は意外とバランスの良いチームなんじゃないか?と思った。

前衛後衛半々で、対応力も随分と高いように思える。


「良いメンバーが揃ってるよね、僕たち」

「そうね、一等級冒険者として恥じないだけの実力はあるわ」


はっきりと自慢げに胸を張るローザ。

その姿からは、自分と仲間たちの実力に対する自負が感じられて、頼もしい。

そんなことを感じながら、僕は改めて皆に口を開いた。


「…これからは、魔王軍との戦いに積極的に参加していこうと思っているけど、皆の意見を聞かせてくれないかな」

「それは…この間の襲撃を踏まえての事かしら」

「うん」


魔将エドとアイリーンとの戦いにおいて、彼らは僕らを的にかけるだけじゃなく、マリアさんの宿を襲撃するといったことまでやってきた。

今後、また同じようなことが起こらないとは限らない。

そうなると、安心して生活ができるようにするためには、そんな計画を企てた魔王軍を討伐することは必要なことだと僕は考えた。

リスクはあるだろうが、恐れてばかりもいられない。


「私はいいんじゃないかと思うわよ。冒険者なんて稼業をやっている以上、危険はつきものだし」

「俺もお嬢に同意見だ。まぁ、無理や無謀をしなけりゃあ問題ないだろう」

「私はウィルの方針に従います」

「…ありがとう」


三者三様ではあるが、僕に肯定的な返事をしてくれた。

そのことにほっと胸を撫で下ろしながら、安堵のため息を零した。


「話はまとまったようだね」


そこへ家主のローランドさんが現れて、声をかけてきた。

いつから聞いていたのかは知らないが、涼しげな顔で話を続けてくる。


「魔王軍と戦うつもりなら、帝都へ向かうといい。あちらでは魔王軍との戦いが盛んでね、人手が足りないのだよ」

「帝都ですか…行ったことないんですけど」

「何、治安が悪いわけではないとも。戦況は五分と言ったところだ。すぐにどうにかなるような状況ではない」


微笑と共に状況を伝えてくるローランドさん。

帝都でその戦況は良いのか悪いのか、と言いたくなったが突っ込むのはやめておいた。


「それじゃあ…行ってみようか、帝都。各自、準備しておいて」

「わかったわ」

「あいよ」

「了解です」


会議を解散し、各々が準備のために自分の部屋へと戻っていく。

僕は、出発の前にマリアさんに挨拶を済ませておこうと思ってマリアさんの部屋のドアをノックした。


「はい、どうぞ」

「失礼します、マリアさん」


部屋に入ってみると、マリアさんが椅子に腰を下ろして寛いでいた。

僕は次の目的地として帝都へと向かうことが決まった事をマリアさんに話し始める。


「僕らは帝都に向かうことになったので、その報告に来ました」

「おや…そうなのかい?何か考えがあっての事なんだろうけど」

「はい、魔王軍と戦うために行くつもりです。…マリアさんは、これからどうするつもりですか?」


包み隠さずに率直にマリアさんに伝え、問いを投げかける。

マリアさんの宿は先日の魔将の襲撃で破壊されてしまっているので、すぐに戻ることは無いだろう。

それでも、マリアさんの安全を考えて聞かずにはいられなかった。


「私は、暫くこのお屋敷に厄介になるつもりだよ。ここは安全だろうしね。宿が治り次第、戻ることになるだろうけれど」

「…気を付けて下さいね、また襲撃がないとも限りませんから」

「わかっているとも。私なりに何か対策をしておくさ」


苦笑して、頷きを返してくるマリアさん。

不安は消えてなくならないが、その返事に納得しておくことにする。


「ウィル君こそ、気を付けておきなさい。不慣れな土地では何が起こるかわからないからね」

「ご心配ありがとうございます。…行ってきます」

「ああ、行ってらっしゃい」


こうしてマリアさんとの別れの挨拶を終え、僕らは帝都を目指すことになったのだった。

不定期更新予定です。

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