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英雄候補の冒険譚25

「あ…ギルドですか。それだったら、この道を…」


話しかけられた僕は、聞かれるままにギルドへの道を答える。

見たところ、年齢的には僕らと同じくらいだろうか。

その少女は、僕からギルドまでの道を聞き終えると、困ったような顔を浮かべた。


「多分覚えた…と思うんですけど、ちょっと不安なんです。良かったら案内してもらえませんか?」

「そうだなぁ…アリス、どうしよう?」

「特に予定もありませんし、案内しても良いかと」


そこまで難しい道のりとは思わなかったが、そう感じているなら案内しようと思って、アリスに目配せする。

アリスは異論無いようで、僕の考えに同調してくれた。

少女もにこやかな笑顔になって、お礼の言葉を言う。


「ありがとうございます。私、アイリーンって言うんです。お名前を伺っても良いですか?」

「僕はウィル、こっちはアリスって言います」

「よろしくお願いします」


簡潔にあいさつを済ませると、道案内のために歩き出す。

その間にもアイリーンは、街の事についていろいろと質問してきた。

どこに何の店があるかとか、有名な冒険者はいるのかとか。


「アイリーンさんは、他所から来たんですか?」

「呼び捨てで良いですよ。はい、ちょっと遠い所から…お二人は昔からここに?」

「私は最近ですが、ウィルは昔からですね」

「へぇ、そうなんですか」


興味深そうに僕らの話に耳を傾けるアイリーン。

僕らも、答えられる範囲でその質問に快く答えていく。


「物心つく頃にはここで暮らしていたからね。それなりに街の事には詳しいと…おっと、着いたよ」


雑談をするうちに、ギルドの入口まで到着してしまった。


「案内ありがとうございました。あの、もし良かったら今度お礼をさせて下さい。どこにお住まいなんです?」

「ああ、僕らが住んでいるのは…」


マリアさんの宿の位置を告げると、ふんふんと頷きながら覚えて、お礼の言葉を言ってくれた。


「わかりました。ウィルさん、アリスさん、またお会いしましょうね!」


彼女は、柔らかな笑みを浮かべてそう言った。




ひらひらと手を振り、対象の二人と別れる。

とりあえずはこれで良いだろう、じっくりと時間をかけて探りは入れていけばいい。


「まぁ、あまり時間をかけすぎるとエドの奴が暴走しちゃうでしょうけど…」


その時はその時、と考えて思考を打ち切る。

今はそれよりも見つけた二人についてだ。


「ウィル君は純真そうで中々可愛かったわねぇ。アリスちゃんも良い感じだわ」


にこにこと笑みを浮かべつつ、二人の顔を回想する。


「本当に、食べちゃいたいくらい可愛いわ…」


傍を通りがかった野良猫が、私の顔を見て威嚇して逃げて行った。

おっといけない、内心が口だけじゃなく顔にまで出てしまっていただろうか。

手鏡を取り出して、笑ってみる。

良し、問題なし。


「とりあえずは、適当に潜入作戦開始ーっと」


そして私は、ギルド支部へ堂々と正面から潜り込んだのだった。




翌日、ギルド支部にて。


「ウィルさんじゃないですか。昨日はありがとうございました」

「アイリーン。ここで働いているの?」

「はい、冒険者になって働いてるんです。ウィルさんもお仕事ですか?」

「ちょっとウィル。誰よ、その女」


ローザから涼やかな声で問いかけられて、僕は素直に答える。


「昨日道案内をしたんだよ、それだけ」

「あらそう。それならいいわ」

「そちらの方は、ウィルさんのお仲間ですか?もし仕事で一緒になったら、よろしくお願いしますね」


礼儀正しく頭を下げて挨拶を済ませるアイリーン。


「そう、よろしく。でも、アタシたちは一等級冒険者。一緒になることはないと思うわよ」


鼻を鳴らし、にこやかに堂々と胸を張って返すローザ。

それに対して、アイリーンは驚いたような表情を浮かべる。


「そうですか。先輩だとは思いましたが、そんなに上の方だったんですね…。ウィルさんとは付き合い長いんですか?」

「ええ。ギルドに入って以来の仲よ。きっと私が一番ウィルを良く知ってるわ」


さらに胸を張るローズマリー。

それに感心したように目を輝かせるアイリーン。

しかし、すぐに顔を振って人懐っこそうな笑みを浮かべて。


「私、これからお仕事なので!またお会いしましょうね!」


そう言って、ギルドから立ち去っていった。

アイリーンの姿が見えなくなると、ローザは一息ついてから何とも言い難い表情で、僕の方を向いて口を開いた。


「…どうも苦手な子だわ」

「そうかな?素直そうな子だったけど…」


僕がそう言うと、ローザは難し気な顔を浮かべて頭を掻いた。


「なーんか、うまく言えないけど…すっきりしない相手だったわよ。考えすぎかしらね」




さらに翌日。


「今日はどうする?」

「間引き依頼で良いんじゃないかしら」

「異論ありません」

「俺も同じく」


ギルドの掲示板近くのテーブルに集まって話し合っていると、ギルドの出入り口からアイリーンが入ってきた。

僕の姿を見かけるなり、笑顔になって手を振ってから近づいてくる。


「どうもウィルさん!そちらの方は…お仲間さんですか」

「お、ウィル。誰だこの子」

「ちょっと前に道案内したんだよ、アイリーンって言うらしいよ」


ヴィンセントの問いに答えつつ、あいさつ代わりに軽く会釈を済ませる。


「仲間のヴィンセントだ、よろしくな」

「よろしくお願いします。おお…という事は一等級冒険者チームフルメンバー!ってことですか。凄いですねぇ」

「そう言えば、一等級となりゃあ凄いって扱いなんだよなぁ…。あんまり自覚は無いが」


へぇー、と言いながら目を輝かせるアイリーンは、如何にも駆け出しの冒険者といった感じだった。

その日は色々とアイリーンからの質問攻めに合いながら、依頼に向かうためにギルド支部を出発したのだった。

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