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英雄候補の冒険譚22

我が家の門を出るローザ一行を自室から見送る。

ローザは大層ご立腹の様子で、大股でずんずんと歩いて出て行った。

その後にウィル君たちが続いていく。


「少々、やり方が悪かったかな?」

「冗談にしては、趣味が悪かったかと」

「はっきりと言ってくれるものだ」


率直な物言いの部下の騎士に、私は苦笑して返した。

ウィル君とやらが余程頼りない場合を除いて、適当に理由付けして放してやるつもりではあったというのに。

私のそんな内心を知ってか知らずか、淡々と落ち着いてそういった言葉を返してくるあたりが気に入っている。


「寵児というのは、いるものだな。まさか使途がついていようとは」


あのウィルという少年が、嘘をついているようには見えなかった。

だとすれば、あの少女は未来視の異能を持っているという事になる。

話から察するに、そんなに明確な未来が見えているわけではないだろうが。


「監視などは要らないので?」

「要らん。好きにさせてやれ。未来視など当てにはならん」


部下の提案に対して、鼻で笑う。

どれだけ将来有望であれ、子供一人に命運を任せるような国であってはならないだろう。

私は部下に対して振り返ると、さっそく次の仕事を申し付けることにした。


「さて…それでは、魔王軍への対策についてだが…」




「父様ったら本当に嫌な人よねっ!」

「いや、まぁ…あの人なりにローズマリーを心配してはいたんだろうし…」


どんどん先に進んでいくローズマリーの後を慌てて追いかけながら相槌を打つ。

あまりに悪く言われると、良い所も出してフォローしたくなるもので。

僕は何故かローランドさんを庇うようなことを言いながら、ローズマリーについていく。

決闘の約束を取り付けるときは悪い面が目立ったが、いま改めて考えれば違う面から見ることもできた。

あの人は、あの人なりにローズマリーの身を案じていたのだろう。


「ウィル、あなたどちらの味方なのかしら?」

「それは、勿論ローズマリーだけど…」


頬を膨らませながらローズマリーはジト目でこちらを見てきた。

どちらの味方かは即答したが、どうやらその程度では許してもらえないらしい。


「な、何かな?」

「…名前」

「名前?」

「…ローザって呼んで。そうしたら許してあげるわ」


それでいいのなら、そう呼ぶことにする。

ローズマリーの機嫌がそれで直るなら、安いものだ。


「わかったよ、ローザ。…これで良い?」

「良いわ!」


一転して、機嫌良さそうな笑みを浮かべてまたローズマリー…もとい、ローザは歩き出した。

その歩調が、まるで機嫌のよさを表しているかのようだった。

僕は、遅れないようにそれについていく。


「家族にしかその呼び方は許していないんだから、有難く思ってよね」

「僕、家族と同じくらいの扱いになるんだね…」


ローランドさんがそう呼んでいるところしか聞いていなかったので、初耳だった。

どういう理由で呼んでいい、と言ったのかを聞こうとしたところで、先にローザが口を開く。


「当然でしょう?だってアタシ、そうなりたいくらいにはあなたの事が好きなんだから」


穏やかな目と柔らかな笑みで、あまりにあっさりと言われてしまった。

少し気恥ずかしくなって視線をそらしてしまう。


「…そっか」

「そうよ。何だったら、本当に家族になる?私は大歓迎よ」

「それは…考えさせて」


そして同時に、誰かにとってそれだけ大切な存在になれたことが嬉しくて、つい笑みが零れる。

歩き出したローザの後についていきながら、僕は充実感のようなものに胸を満たされた。

そう言うと思ったわ、等とローザは溜息を吐いていた。


「…お嬢、良かったなぁ。何とか穏便にすんでよぉ…」

「そうですね、ローズマリーと別れずに済んで安心しました」


そのさらに後方では、涙ぐむヴィンセントと、アリスが二人で話をしていた。

少し距離があって何を話しているのかはよく聞こえない。


「何もかも片付いたらくっついて欲しいもんだ…」

「…残念ながら、まだまだ何かあるのは確実かと」

「そうかい、しんどいなぁ…」


何やら話し込んでいる様子だったが、前を行くローザに話しかけられて意識を戻す。

話の最中に失礼だったな、と反省しながら。


「ちゃんと聞いている?ウィル」

「ええと、ごめん。何だったかな」


眉間に微かに皴をよせられてしまったが、そこまで気分を害した風ではない様子で言葉を続けてくれた。


「しょうがないわね。帰ったら次の冒険はどうしましょうか、って話よ」

「ああ、そうだね。とりあえずは帰ってから依頼を見繕って…それから、一緒に考えよう」


僕はローザに対して返事を返しながら、この先の冒険へと思いを馳せた。


「ええ、これからも一緒に頑張っていきましょうね!」


曇りないローザの笑顔を見て。

これからも、ローザ達と共に歩んでいけることに対する思いを噛みしめながら。

二章完です。


お読みいただきありがとうございます。


よかったら感想、批評など頂けると幸いです。

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