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英雄候補の冒険譚20

「んんんっ…!!」

「膂力が足りんな…力比べは十年早い」


僕が振るった剣と、ローランドさんの柄の中央が鍔迫り合いを起こす。

だが、体格で遥かに勝るローランドさん相手では押し切れない。


「その左手…隠し玉は何かね」

「答える、必要は、無い…ですっ!」


僕の方が力で劣っているのに、ローランドさんが押し切らないのはそこだ。

僕が引いて、ローランドさんの重心を崩した瞬間に魔法を撃ち込むのを警戒しているのだろう。

それでも徐々に、徐々に押されていく。

待っていても生じるはずのない隙を窺っても仕方ない。

こちらから隙を作りに行く。


「―――っ!」


無詠唱で左腕で発動させた魔法は、フラッシュ――閃光を放つ魔法だ。

攻撃力はないが、この魔法ならばマナリフレクションも怖くはない。


「また目晦ましか…!」

「そこ…っ!」


ローランドさんが咄嗟に左腕で目を庇い、鍔迫り合いの力の均衡が崩れる。

そのまま押し切って、タックルで体勢を崩しにかかる。

ローランドさんは、タックルを受けて僅かによろめいた。


「ちっ…!ファイアランス!」


その隙を庇うために、今回初めて魔法攻撃を先出ししてきた。

素早く放たれた炎の槍が、一直線に僕へと襲い掛かる。


「マナリフレクション!」

「ぬぅっ…!」


そこに先読みで発動したマナリフレクションが辛うじて重なった。

ローランドさんに反射された炎の槍が牙をむき、回避行動をとろうとした左腕に直撃した。

それを意に介さず、ローランドさんは接近する僕に対して新たな魔法を発動する。


「面白い…楽しませてくれるものだ!ファイアストーム!」

「っ!まずい…!」


詠唱に応じて炎の渦巻きが発生し、ローランドさんの周りを覆い尽くす。

中央にいるローランドさんは無傷だが、これでは接近できない。

マナリフレクションを使ったところで、渦が逆回転するだけだ。

そして、魔法同士は干渉して打ち消し合うため、相手を威力で上回らなければ魔法攻撃も通用しない。

咄嗟に足を止めて後ろへ跳び、直撃は避けたが、後手に回ってしまった。

…いや、冷静になれ。

今は相手からこちらの様子を確認することもできない。

これはチャンスだ、賭けるなら、ここしかない。




さて、次はどう返したものか。

私は炎の渦の中で試案していた。

強引に高威力の魔法で突破を図ってくるようならマナリフレクション、外で様子を窺っているならこちらから魔法攻撃を仕掛け、カウンター狙いのマナリフレクションには接近して槍での攻撃…まるでじゃんけんのようだ。

あのウィルという少年は思った以上に私を楽しませてくれている。

私も全力で応えてやるべきだろう。

私はどのパターンにも対応すべく、体内の魔力を循環させつつ、槍を構えてファイアストームを解除した。


そして私の目に入ったのは、巨大な紅蓮の炎の柱だった。




「父様のセイクリッドファイアランスは、威力もそうだけどマナリフレクションが通用しないわ」

「それは…聞いておいて良かったな」


ローズマリー曰く、放出され続ける奔流が、反射される炎と鬩ぎ合い、マナリフレクションの効果が切れた瞬間に炎に飲み込まれてしまうらしい。


「父様のお気に入りの魔法だから…正直、撃たれると同等以上の魔法がないとどうしようもないわ」

「じゃあ、やっぱり…覚えておくしかないね」


あっさりと言った僕に、ローズマリーは目を丸くしていた。




――よし、できた。

時間こそかかったが、僕は両手で構えて振り上げた剣の刀身へ、魔力の奔流を流し込み圧縮していた。

それは輝く紅蓮の炎となって、刀身から溢れ出している。

これは、昨日ローランドさんがローズマリーを倒す際に放った魔法。

位の違う強大な炎を形成し、武器と化す炎魔法の技の結晶。

ファイアストームを解除したローランドさんの瞳が、感嘆に煌めくのを僕は確かに見た。


「セイクリッド…ファイアソード!!!」


そして僕は躊躇わず、紅蓮の炎の放出によって形成される、天にも届こうかという炎剣を振り下ろした。




「セイクリッドファイアランス!!」


私は躊躇いなく、自身の槍へと魔力を注いで炎の剣へ迎撃の炎槍を放った。

拮抗する魔力は押し合い、互いに打ち消し合い、鎬を削る。


「ぬうううぅぅっ…!」

「ああああぁぁっ…!!」


互いに歯を食いしばり、全力で己の炎を押し付け合う。

しかし、拮抗が崩れるのは存外早いものだった。

徐々に、徐々にウィルという少年の放つ炎が私の炎を圧し始めたのだ。

万端の準備で放たれた魔法と、咄嗟に放った魔法のこめられた魔力の差か。

それとも、この勝負にかける想いの強さの差か。

もしくは――昨日の娘との戦いの消耗が、尾を引いたか。


「くっ…」


口の端から声が漏れる。

紅蓮の炎は次第に迫ってくる。

しかし逃げられない。

迎撃を諦めてしまっても、あの炎は私を逃がさないだろう。


「くくっ…」


ああ、遊び半分程度の気持ちで受けるものではなかったな、と自嘲しつつ。


「ハハハハハ――!」


私は、声高らかに大笑いしていた。

そして、振り下ろされた炎の奔流が私の身体を飲み込んだ――。

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