表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/34

英雄候補の冒険譚19

翌日の正午。

ローズマリーとローランドさんが対峙した場所で、今度は僕がローランドさんと向かい合った。

ローランドさんは前回と同様に模擬用の槍を一本、僕は剣と小盾を構えて、魔封じの腕輪を付け準備を整える。

それを見守るのは僕の仲間たちで、審判はやはりヴィンセントが務めることになった。

先に口を開いたのは、ローランドさんだった。


「さて、ウィル君。ローザが見込んだその力、存分に見せてもらおうか」

「出し惜しみはしないつもりです。僕は全力で、ローズマリーのために戦います」

「では、私の勝利を阻んでみせるがいい。娘を失望させてくれるなよ」


自然体で槍を構えるローランドさん。

こうして向かい合ってみると、改めてよくわかる。

ローランドさんには、勝負に対する不安や恐怖といった負の感情が一切見当たらないのだ。

どれほど場数を踏んでいるのか想像もつかない。

こちらは自身の緊張を適度に振りほどくために、一度だけ大きく深呼吸を済ませた。


「旦那、ウィル。準備は」

「いつでも」

「大丈夫だよ」


二人の返答を聞いて、ヴィンセントはゆっくりと頷いた。

そして、開始の号令の前に僕に一瞥をくれた。

――勝てよ。

恐らくは、そんな意図だろう。

激励としては十分だ、僕も視線を合わせることで応えてみせる。


「では……始めっ!」


開戦の号令が、広々とした空間に響いた。




「アクセラレイション!」

「アクセラレイション」


僕とローランドさんが初手で同時に発動したのは、自身へのアクセラレイションだった。

しかし、お互いに相手の様子を伺いつつ動くことはしない。

両者ともに発動している以上、条件は五分だからだ。

隙を伺いつつ、じりじりと間合いを詰めていく僕。

それに対して、槍を構えたままその場に佇むローランドさん。


「どうした、仕掛けてこないのかね?」

「あなたの槍の腕前は存分に見させてもらいましたから」


槍の間合いより内側に入れば僕が有利だろうが、それまではローランドさんが有利だ。

相手の間合いの外、かつ一手で自分の間合いまで詰められる距離を保つ。

勿論、十分に魔法を発動させる余裕がある範囲でだ。

僕がローランドさんに明確に勝っていると思われる点。

それは、知られていない手札の数だ。

昨日、皆で話したときにローズマリーが言っていたことだ。


――アタシがウィルの習得している魔法を話したのは、ギルド入りした時点の内容よ。


つまり、その後に習得した魔法は知られていないという事。

逆に、僕はローランドさんの手の内や性格、戦い方の傾向の多くを伝えられている。

ローランドさんの戦い方は、基本的に後の先だ。

高い対応力で、敵の手を後出しで潰してくる。

恐らく、ローズマリーの使った加速火球ももう通用しないだろう。

僕は、魔力を体内で循環させつつ、大きく剣を振りかぶると地面の土を斬り飛ばした。


「これは…マナリフレクション」


僕は、土を飛ばすと同時に攻撃魔法ウインドスラッシュを無詠唱で発動していた。

ローランドさんは魔力の流れから察して風の刃に対して咄嗟に光の防壁を貼る。

当然、風の刃は反射されるが、風で飛ばされた土は別だ。


「目潰しか…」


予め反射される前提で動いた僕の回避行動と同時に、土飛沫がローランドさんに降り注ぐ。

咄嗟に左腕で目を庇うローランドさんだが、一瞬の隙が出来た。

一気に自身の間合いへ踏み込み、剣の一撃を放つ。


「まだ甘いな」

「ここからっ!」


ローランドさんは、左目に土が入ったのか、右目だけ開けた状態で、その一撃を槍の柄で器用に受け止める。

続くニ撃、三撃も同様に受けて、逸らす。

そして防御しながら徐々に下がって自分の間合いを取り戻そうと試みてくる。

僕はそれに対し、相手の左側に回り込むように接近しながら、追い縋るように剣を放ち続けた。


「よっし!嵌まったな!」

「後はこのまま、接近戦で押し切れれば…」

「確かに互角…だけど…」


審判役でありながらウィル贔屓を隠しもしない喜色の声を零すヴィンセント。

戦いを見守るアリスとローズマリーだったが、ローズマリーは未だ安心できない様子だった。

そう、互角では良くても引き分けであり、勝つことはできない。

相手が左目の視界を取り戻した瞬間に形勢は逆転するだろう。

ここからがさらに選択の時だった。


「やるじゃないか。相手の弱点を突くのは兵法の基本だ。加点してやろう」

「涼しい顔して防いでおいて…!本当に魔法使いですか!?」

「ふっ…」


間合いと視界の有利があって互角――想定以上だが、泣き言は言っていられない。

僕は小盾を捨てて、左腕に魔力を集中させる。


「おいおい!?大丈夫か!?」

「…ですが、守りに入ったら勝てません」

「ウィル…」


見切りが早すぎると言わんばかりの仲間の声だが、この展開になった以上攻め続けるしか勝機はない。

僕は、剣戟を捌き続けるローランドさんに力強く一歩を踏み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ