リタとサラとリヒトー
リタは小柄で可愛い女の子だ。男どもの秋波にさらされて、ちょこちょこちょっかいを出される。その度いつも私がそばでリタを守っている。
「ちょっと、サラ。あんまり過保護すぎるんじゃないか?」
「いいの。ほっといて」
「恋愛は誰でも自由だと俺は思うんだがなぁ」
「うっさい」
「人のことより、自分の心配しろよ」
「なんで?」
「男女なんて言われて嫌だろう?」
「だって」
私は背が高くてガタイがいいから、せめてお姫様を守る騎士になりたいのよ。
リヒトーは首をふりふり、私に意見するのをやめて、バスケ部の練習に戻った。
「サラ!」
またしつこいのに絡まれながらリタが逃げてきた。
「しっしっ」
「なんだよ、やる気か?」
「およびでないの。リタが嫌がることしないで?」
「嫌がってないよなー、リタちゃん!」
「あの、嫌、です」
「なんだよー」
ぶうぶう言いながら男の子がはけていった。
「そんな風にいつもちゃんと自分の気持ち言えばいいのに」
「サラがいてくんなきゃ言えない!」
「なんで?」
「わかんない」
「こいつー」
こちょこちょ。きゃはははは。
多分、私たち、お互いに依存している。
「サラ、リタ、帰ろうか?」
リヒトーが着替えてやってきた。
暗い道を女の子だけで帰ると物騒だから、ってリヒトーがいつもついてきてくれている。
リヒトーはリタには紳士的だから、安心。
「リタはサラに邪魔されて恋愛できないんじゃないの?」
「むう」
リヒトーったら余計なことを。
「いいえ、いつも助かってます」
「ふむ」
そうよね、そうだよね。
「むしろ、私の方がサラの恋愛邪魔してそうで……」
「そんなことないよ!」と即座に私は叫ぶ。
「いや、そんなことあるんだよなこれが」
「えっ?」
どういう意味?
「そうですよね、私ダメだなぁ」
なんでリタがそう言うの?
翌日、リタが私に、リヒトーのことが好きだと告白した。
私は……。
リタとリヒトーに幸せになって欲しい。
あれ?
ぼろぼろ涙が出てくる。なんで?
「やっぱり。サラはリヒトーが好きなのね」
「ちが、」
「違わない」
リタが私の両頬を手で包み込み、下から見上げるようにして言った。
「宣戦布告!どっちが勝っても恨みっこなし!」
強い口調で、ビシッと。
気高い騎士だった私はへろへろになって、心ここにあらず、となった。
3人で帰る時気まずくて気まずくて。
「どうした?」
「私がリヒトーが好きって言ったら、サラの様子がおかしくなった」
「なんじゃそら」
「私、リヒトーも好きだけど、サラも大好き!」
リタが私の手を握った。
「俺だって二人とも好きだぞ」
「そんなんあり?!」
カバンをリヒトーが取り上げて、空いた方の手を握った。3人で手を繋いで歩いて帰る。
「私ら、小学生かあああああああ!」
私の叫びが虚しくこだました。