魔獣討伐
援軍のうちが3人が魔獣を追いかけようとしたが、黒い髪の女の人が呼び止めた。
「森は魔獣の有利な場所だ。無策で追いかけても、被害が大きくなるだけだ。」
援軍の3人はその指示に従った。あの黒い髪の女の人がこの援軍のリーダーだと思われた。
僕とメイは建物の陰から出てきて、ジースさんのもとに向かった。
先ほど魔獣に風魔法で攻撃した赤い髪の少女は、ずっと魔獣の逃げた方向の森を見ていた。
赤い髪の少女見ていたら、学園で一緒に学んだ同期だったことに気付いた。
学園で学んでいたときよりも、大人っぽくなっていたので、すぐには気づかなかったのだ。
名前はエリンという。綺麗な燃えるような赤い長髪で腰まで伸ばしている。
顔立は綺麗な感じで目は青みがかかっていた。
メイと同じで最初の印象は近寄りがたい空気はあるが、誰もが一目をおきたくなるようなそんな存在感がある。
剣士の装いで白色の軽装に身を包んでいて細身。
服装の関係からか胸の膨らみは抑えていた。
それでも、口には出さないが、メイよりは大きかった。
腰には銀色の長剣を装備していた。
学園では主席で卒業。剣と魔法の腕は天才的と言われていた。
魔法は風属性のみしか使えないが、学生の時から魔法発現速度、射程距離、魔法の速度は一流だった。
唯一の欠点は火力が少し足りないくらいだが、並みの魔法使いと比べても見劣りしない。
他のすごいところと比べたら、普通かなと思うくらいだ。
ジースさんが討伐隊のリーダーの髪の黒い女の人に近づいた。
「久しぶりだな。キョウ」とジースさんは言った。
「ああ、ジース、そうだな。」
リーダーの名前はキョウというらしい。
後で聞いた話ではあるが二人は昔からともに仕事をした仲らしい、年も同じ40歳だそうだ。肩書も支部長補佐と同じみたいだ。黒髪で肩まで伸ばしていて、顔立は綺麗だった。外見も年よりも若く見え大人の魅力があった。30歳と言っても信じてしまいそうだ。
ジースさんとキョウさんは挨拶もそこそこにこの場にいる皆を集めた。
エリンも魔獣に壊された柵の近くにいたが、戻ってきた。
僕はエリンに話しかけた。
「エリン来てくれて助かった。」
「レイ!」
エリンは驚いていた。エリンはメイにも気づいて声をかけようとした。
「まあ、積る話もあるとは思うが後にしよう。」
エリンが話を続けようとしたが、ジースさんは遮って止めた。
僕も反省した。まずは、魔獣が先だ。
ジースさんは皆に今まであった出来事を簡潔に伝えた。
「魔獣は負傷しているし、すぐに追ったほうがいいと思うがどうする?」
とジースさんは言った。
キョウさんはジースさんを見て言った。
「ちょっと待って。秘策がある。」
そう言ってキョウさんはエリンに話かけた。
「エリン、魔獣を追えるか?」
「ええ、大丈夫です。風に覚えさせました。」
風に覚えさせた?どうゆうことだ?
「エリン、逃げた魔獣の位置がわかるのか?」と僕は聞いた。
「そうね。離れすぎてなかったら、追えるわ。」
僕は考えた。なんで、追えるのかがわからないからだ。
エリンは僕の様子を見て話を続けた。
「さっき、魔獣が逃げ出した時、風魔法が右肩にあったのは覚えている?」
エリンは問いかけるように聞いた。
「え?ああ、うん、覚えているよ。」
僕は思い出しながら言った。確かに魔獣が逃げる直前エリンは風魔法を撃って右肩に当てた。
「あの魔法はね、マーキングなのよ。私は追い風って名前をつけたんだけど、追い風に当たった生き物がどこにいるのかがわかるのよ。」
僕は驚いていた。聞いたことがない魔法だった。
学園を卒業して、エリン自身が作り出した魔法なのだろうと思った。
エリンを案内役として僕とジースさんとメイ、キョウさんをはじめとした隊の仲間で魔獣を追うことにした。
僕たちはエリンたちについていって北の森を見渡せる高台に登った。
僕は確かにここからだと北の森全体を見渡すことが出来るけど、森が遮って魔獣なんて見つけられないだろうと思った。
でも、そこからはエリンは森を見回して、右の方向を指さして隊の仲間たちに声をかけた。
「この方向の300m離れた位置に魔獣がいます。」
エリンは魔獣がどのあたりにいるかわかっているようだった。さっき言っていた「追い風」という魔法のおかげか。
「了解。あの魔法でいこう」
キョウさんはエリンを見て言った。
「了解です。」
エリンはそう言って3mほど後退した。
「ハル、ギラン準備はいい?」
キョウさんは聞いた。
「「はい」」
ハルとギランと呼ばれた2人の女性はエリンと変わるように前に出て魔法の準備をした。
手から赤い炎が立ち上がりエリンが指した方向の10m離れた位置に火の魔法を撃った。
2つの炎がぶつかって、混ざり合って大きくなった。直径3mある大きな火の玉が出来上がったのだ。
合体魔法か?
一部の波長があう魔法使いしか使えない魔法だったと記憶している。
なかなか使えるものがいないはずだ。
でも、それだけでは終わらなかった。エリンはそこに風魔法は撃った。
直径3mある火の玉に風魔法が当たって、火の玉はさらに大きくなった。
そして、一直線に魔獣のいる方向に飛んでった。
ものすごいスピードだった。
その火の玉は魔獣がいると思われる場所に当たって爆発した。
爆発した場所の森は炎に包まれていた。
規格外の威力と射程距離だった。こんなの喰らったら魔獣は生きていないだろうなと思った。
でも、僕は森が燃えていることに対して、悲しい気持ちになった。
それに、夢の燃え盛る町のことをいやでも、思い出して気持ちが悪くなった。
「山火事になるんじゃないか?」
僕はたまらず言った。
いや、森火事かな。山火事は森の火事も含めてだったかな。うろ覚えだ。
でも、そんなのどっちでもよかった。
エリンは僕の言ったことを聞いて、表情を変えずに言った。
「そうね。でも、魔獣は倒さなければならないもの。」
それを聞いて、エリンは変わったなと思った。
確かに魔獣は倒さなければならないが、昔は自然にも配慮していた。
魔獣討伐において手段を選ばなくなった。
何がエリンをここまで、変えたのだろうか?
僕の考えのほうが、甘いのかな?
わからない。
「安心したまえ、そのために私がいるんだから。」
キョウさんはそう言って水魔法で雨雲を作って、炎に包まれた場所に雨を降らせた。
炎が消えていっているのがわかる。
爆発した位置の焦げてしまった木などはどうしようもないが、これ以上炎が燃え広がる心配はないなと思った。
「それで、エリン魔獣はどうだ?」
キョウさんは魔獣がいると思われる場所を見ながら聞いた。
エリンは目を瞑って、姿勢を正して確認した。
「もう、あの場所から動いてません。」
キョウさんが頷いて安心した表情で皆にも聞こえるように言った。
「なら、倒せたなきっと。」
僕たちは炎がすべて消えてから、慎重に歩みを進めて魔獣のいた思われる場所まで移動した。
そこで、発見したのは銀色の熊の魔獣が黒焦げになった死体だった。
原型はかろうじてとどめていた。
これで、討伐完了なんだなと僕は安心した。
しかし、少し悔しい思いをした。
エリンたちが来たことによってすぐに解決してしまったのだ。
エリンたちの実力は本物だった。
魔獣討伐が終わった後に、村に報告に行ったら、村長たちに大変感謝された。
「これで、魔獣に襲われる心配はなくなりました。」
村長は涙ぐんでいた。
夜に集会所で祝勝会まで、開いてくれた。
料理はキノコ料理が多かった。
アケ村ではキノコよく採れるのだそうだ。
そのため、行商人は良く来るそうだ。
銀色の熊の被害があったから、しばらくは行商は無理かもしれないが、落ち着いたら再開できるだろうと思う。
メイは心も体も疲れ果てて食欲はなかったそうだが、キノコ料理が美味しかったのか少し食べていた。そのあとすぐに部屋に引き上げていった。
僕は無理はないと思った。今日一日、色んなことが起こった。僕もかなり疲れ果てていた。
僕は疲れ果ててはいたけれど、お礼を言うためにエリンのもとへと向かった。
「エリン、今回はありがとう。」
「こちらこそ、レイたちが弱らせてくれたおかげよ。」
僕とエリンお礼言い合った。
エリンがお互いに学園を卒業してからのこれまであった話をしたいと言ったので、僕はエリンと久しぶりに料理を食べながら話した。
僕とエリンはお互い学園を卒業して以来ほとんど、会っていなかった。同じ魔獣兵団に所属しているが最初は上司について任務で王国を離れてしまうため、会う機会がほとんどない。お互い任務がない休暇は王国で過ごすのだけど、不定期なため、休暇が合うことなんてほとんどない。
でも、会っていなかった分、話すことはたくさんあった。
これまで、行った町や村について。どんな任務があったか。休暇どのように過ごしたのか。
楽しい話もあり、悲しい話もあった。
思い出話がある程度、話し終えたところで、エリンは気になることを言った。
「最近、新種の魔獣がどんどん増えているらしいのよ。」
「そうなのか?僕は3年間で今回が初めてだった。」
「私は3回目。でも、キョウさんに聞いたけど、このペースは異常だって。他の兵団の人も新種の魔獣の被害にあっているみたい。しかも、強すぎるみたい。」
僕はエリンの言ったことが気になったが、祝勝会はお開きになった。
翌日の朝、僕とジースさんとメイで集まって反省会をした。
「メイ言うか迷ったが、今後のこともあるから言うことにするよ。」
とジースさんは苦い顔で言って、間をおいた。
「今回、魔獣が村まで来たのは、メイのにおいを追ってきたんだと思う。」
メイは驚いた顔になった。
「じゃあ、村での被害は私のせいで。」
メイはつぶやいて顔を青くしていた。
「たしかに、守衛が犠牲になった。」
とジースさんは言った。
それからメイを見て、一度間をおいて話を続けた。
「だが、結果的に魔獣の有利な森で戦わずに済んだのも事実だ。グリン隊と一緒に今回の魔獣と戦ったメイならわかると思うが、森は鼻のいい魔獣と戦う場としては圧倒的に不利なんだ。森は視界が悪く、足場だって悪い可能性だってある。こちらの攻撃が当たらない可能性が非常に高い。逆に魔獣のほうは森は住み慣れた場所だから、どこに何があるのかもわかっているのかもしれない。そんな場所で戦うということはこちらの犠牲を覚悟しなければならない。」
ジースさんはメイをもう一度見た。メイは青い顔で聞いていたが、ジースさんの話を真剣に聞いていた。
「メイ、今回のことは忘れるな。心に刻め。」
ジースさんはそう言って、反省会を終了させた。
昼頃にグリン隊長たちの遺体が北の森で発見された。
メイはそれを見て、泣いた。「ごめんなさい」とつぶやくように言っていた。
僕はメイに何も言えず、立ち尽くしていた。
ジースさんも暗い顔をした。
僕は茫然として空を見上げて思った。
魔獣がいなくならない限り、こんなことが何度も起こるのだ。
僕は今回のことを心に刻んだ。




