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奮闘

それから、一度休憩をとることにした。


魔獣が襲ってくる可能性があったけれど、一回間をとらないと、話にならないだろうとジースさんが提案した。確かにこの場の空気は悪かった。


ジースさんは僕の顔を見て、それからメイのほうを見て、首を振った。それで、僕はなんとなく察した。


僕はメイとともに席を外して、外に出た。


村の様子を見ながら、メイに話しかけた。

「メイが無事でよかった。」


メイは頷いてつぶやくように答えた。

「隊のみんなのおかげ。」


間をおいてメイは申し訳なさそうな声で言った。

「レイさっきはごめんね。私ぜんぜん冷静じゃなかった。」


僕はメイのほうを向いて言った。

「僕のほうこそ、ごめん。幻術魔法があるから、生かしてもらえたみたいなこと言ったけど、たぶん、それだけじゃないよ。隊のみんなはメイのことが好きだったんだよ。」


「私も隊のみんなが好き。隊に入ってから何もわからなかった私にたくさんのことを教えてくれた。」


メイは一呼吸を置いて言った。

「絶対、魔獣を倒すよ。」


メイの目を見ると狂気じみていた。少し、心配だったので、僕は助言した。

「無理はしないでね。僕たちもいるんだから。」


「わかっている」


僕とメイは集会所に戻って、席に着いた。

ジースさんは僕とメイを見て、そして、周りを見て全員が着席しているのを確認してから、話を再開した。


「それじゃあ、話を再開しようか。まず、最初に魔獣の対処をどうするか決めよう。」


もう一度、周りを見回してみんなの顔を見てから話を始めた。

「とりあえず、俺からの提案だが、俺たちだけでは、魔獣を倒すのは難しいとメイの話でわかったから援軍を待つのが先決だろうと思う。」


僕は頷いてから答えた。

「そうですね。魔法でアガレストに連絡して援軍を要請しましょう。」


「それはやった。休憩中にアガレストに連絡して確認したんだが、ちょうど、近くにいるみたいで今日中には来るだろう。」

僕は驚いた。いつの間に、さすがはジースさん。仕事が早い。


ここ数年前に国と町と村にそれぞれ通信機が設置され、魔力を使って、連絡することが出来るようになったのだ。そのおかげで、任務の効率が格段に良くなった。相手との行き違いがなくなり、相談できることによりミスを減らすこともできた。

しかし、短い時間しかできない欠点もあった。

この辺りは改善の余地が残されていると思う。


「それで、メイは戦闘に参加できそうか?」

ジースさんは確認した。

メイの幻術魔法は魔獣との戦いにおいてはかなりの戦力になるから、できれば参加してほしいという気持ちもあったんだろう。


「はい、大丈夫です。」

メイは答えた。すこし、表情はこわばっていた。


「よし、簡単な戦闘の配置だが、メイが後方から幻術魔法で敵をかく乱する。レイも後方から魔法で足止めして敵を動けなくする。俺が前に出て魔獣をひきつける。あとは、援軍が来てからかな。」

ジースさんは僕たちを見て言った。


「私たちは何をしましょうか?」と村長は聞いた。


「村長たちは村人たちに避難勧告と、」

ジースさんは急に会話をとめた。話している途中に外が騒がしくなったからだ。


急にドアが開いて若者が入ってきた。そして、大声で叫んだ。

「村長を大変です!!村に魔獣が入ってきました。」


村長はかなり驚いた顔をした。他の人も例外ではなくて騒然としていた。


僕も驚いていた。来るかもしれないという可能性は確かにあったが、こんなに早く来るとは思わなかったのだ。

しかし、ジースさんだけは落ち着いていた。

「皆さん。落ち着いてください。」とジースさんが大声で言った。


それを聞いて皆は静かになった。

「私たちで対処します。皆さんは魔獣に近づかず、避難してください。」

村長たちはジースさんの指示に従った。


「レイ、メイ準備はいいな。」ジースさんは落ち着いた声で僕たちに言った。

僕とメイは頷いて言った。

「「はい」」


魔獣は村の入口あたりにいるようだ。

守衛たちが避難する時間を稼いでいるようだが、僕たちが着いたころには、ひどい惨状になっていた。村の入り口の柵は壊されていた。守衛たちは生き残ってはいたが、半分ほど地面に倒れていた。生死は不明。その守衛たちの前には銀色の熊の魔獣がいた。


体毛は銀色で、日の当たりかたによって輝いて見えた。体長は250cmほどで熊の中ではかなり大型の部類に入るのではないかと思う。魔獣の口と爪には返り血がついていた。目は鋭く、こちらが狩る側だと言わんばかりである。


ジースさんは魔獣の前に立った。魔獣との距離は10mほど離れていた。

さらに、30mほど離れた建物の陰に僕とカンナは隠れていた。

僕とメイは魔獣に隠れているのが気づかれないようにジースさんからもらった薬でにおいを消していた。魔獣に近づきすぎると効果はないが、遠くにいれば気づかれないはずだ。


僕たちはここに向かう途中に簡単な作戦をたてた。

まず、ジースさんが魔獣をひきつける。ジースさんが合図したら僕たちが魔法撃ち込んで動きを封じる。時間がなく、単純な作戦しかたてることができなかったが、やるしかない。


ジースさんは魔獣の様子を見ながら、守衛たちに後ろへ下がるように指示をした。

守衛たちを見てみると、震えているのがわかった。戦意喪失しているようだが、村人の避難の時間を作るために、必死にやっていただろうということがわかった。

守衛たちは「来てくださって、ありがとうございます」と言って後ろに下がった。


魔獣はジースさんに気付いてジースさんを見ていた。

ジースさんもまた、魔獣を観察していた。

剣を中断に構え、どんな攻撃が来ても防御できるようにしていた。

魔獣に対峙したときのいつもの通りの構えだ。油断はかけらも感じなかった。


僕も建物の陰から様子を伺っていた。隣を見ると、メイは震えていた。

僕はそっと、メイの手の上に手を置いた。メイは驚いた顔をして僕を見た。

僕は大丈夫と意味を込めて頷いた。

メイは意図を察したのか、頷き返してくれた。

そして、メイとともに魔獣を観察した。

ジースさんと魔獣の一挙一動も見逃さないように観察した。


魔獣は動き出した。ジースさんに真っすぐに突っ込んできた。

メイから聞いた通りものすごい速さだった。

あっという間にジースさんの目の前まで来て頭を噛もうとした。


ジースさんはこの攻撃を想定していたのか、見切って剣で受け流していた。

そして、ジースさんは後ろに回り込んで、死角から一撃を入れようとした。

しかし、魔獣はその攻撃を見えているかのように前に飛んで回避して見せた。

ジースさんも攻撃が避けられるのがわかっていたのか、剣を振り切らずに途中で止めて素早くバックステップして魔獣から距離をとった。


また、最初と同じ距離の10m位置からお互い様子を見ていた。


ジースさんの戦い方は基本的に受け身主体である。

敵からの攻撃を受けるか、受け流すかをしてスキができたところに一撃をいれる戦い方を好んでしていた。

ジースさんの目がかなりいいのもあるけれど、勇気のいる戦い方だった。

なんたって、魔獣の一撃はどこにもらっても、致命傷になるのだから。

とても、僕には真似ができるものではない。


また、魔獣はジースさんに突っ込んだ。今度は爪で攻撃をした。ジースさんはその攻撃も受け流して、背後をとり、一撃入れようとした。魔獣はまた前に飛んで回避した。

やっぱり、魔獣は見えてなくても匂いでジースさんのいる位置がわかるのだ。

だが、ジースさんは戦闘方法を変えなかった。


同じような攻防がこの後3回行われた。


4回目にジースさんが背後をとって、一撃をいれようとしたときに魔獣は前に少しだけ回避行動をとってすぐに背後に振り向いて突っ込んできた。さすがに何回も同じような攻防が続けば、魔獣も学習する。


しかし、ジースさんは落ち着いていた。その攻撃を待っていたと言わんばかりに。


ジースさんは瞬時に土魔法を唱えて魔獣と同じ大きさくらいの土の壁を魔獣とジースさんの間に作った。


魔獣は土の壁に突っ込んだ。土の壁は壊されてしまったが、急に土の壁現れたことに驚いたのか、体勢を崩してよろめいていた。


そのできたスキにジースさんはある薬品を魔獣の顔に投げて命中させた。


その薬品には見覚えがあった。

魔獣の鼻を封じる薬品だ。これで、魔獣は匂いでジースさん位置がわかなくなっただろう。


魔獣は薬品が当たって、茫然としていた。


その間にジースさんはバックステップをして距離をとって空の上に火の魔法撃った。

それが合図となった。


魔獣はどんな攻撃だろうと上を向いていた。


そこに僕は魔獣の下に土魔法で直径3m高さ3mの円の落とし穴を作った。

魔獣は見事に落とし穴に落ちた。


予期せぬことが立て続けに起きて、しかも、上に注意が向いていたら、どんな敵でも下はおろそかになる。


僕は魔獣が落とし穴から出てこれないように闇魔法で重力場を作った。これで、魔獣の体重は数倍にもなっているはずだ。


僕はメイを見て言った。

「メイ、今だ!」

メイはそれを聞いて、落とし穴に向かって走りだした。


そして、落とし穴の前まで来て落とし穴に向かってメイは光魔法を唱えた。

落とし穴の中は光で包まれて、キーンって音も同時響きわったた。

メイの得意な幻術魔法で魔獣の目と耳を封じたのだ。


これで、魔獣の鼻も目も耳を封じた。次の攻撃は絶対に避けれらないだろうと思った。

メイは次の魔法の準備に入った。

僕はメイの魔法の準備が終わるまで、重力場を維持し続けた。


メイは僕のほうを見て、頷いた。魔法の準備が終わったのだ。僕は重力場を消した。

メイは重力場が消えたのを確認して、水魔法唱えて落とし穴の中を氷漬けにした。


さっきまで、「ぐおおお」みたいな魔獣の鳴き声が聞こえていたが、

聞こえなくなり静かになった。


これで倒せただろうか。


僕は落とし穴のあるところに向かった。


僕が向かっている途中、ジースさんは落とし穴の中を見て、何かに気付いたのか叫んだ。

「レイ、メイ油断するな!!魔獣が落とし穴からいなくなっている!!」

ジースさんは周りを見回した。


僕も周りを見回そうとしたら、落とし穴から2mほど離れた位置の地面から何かが出てきた。

魔獣だった。穴を掘って逃げ出していたのだ。僕は驚いていた。


魔獣はメイを見てそのままメイに向かって突っ込んだ。ジースさんはメイを守ろうとしたが距離がありすぎた。


僕は叫んだ。

「メイ!!」

だが、魔獣はメイをすり抜けた。魔獣は当たらなかったことに茫然としていた。


僕の手を引いている人がいるのに気づいた。姿は見えないが、メイだと気づいた。

「いくよ。」とメイは言った。

メイは僕にも幻術魔法使い姿が見えないようにした。

それで、最初にいた建物まで、僕とメイは後退した。


僕はかなり驚いていた。


メイは落とし穴に魔獣がいないの確認した後、幻術魔法で自分と同じ姿の身代わりを作り出して、メイ自身は姿を消していたのだ。


ものすごい機転だと思った。




建物の陰から、ジースさんと魔獣を観察した。どちらも動きはなかった。

魔獣は警戒しているのか、ジースさんを見ているだけで動こうとはしなかった。

ジースさんも魔獣の動きを観察するだけに留めている。


僕はこの後どうすればいいのかを考える。

僕たちは決め手に欠けている状態である。さっきの攻防で魔獣はかなり警戒している。

スキをつけない限り、魔法で攻撃しても、こちらの隠れている場所教えるだけの結果になりそうだ。

魔獣の鼻はまだ、しばらくは使えないかもしれないが、目と耳はもう回復しているのかもしれない。


僕は悩んだ。


だが、その悩みは解消された。

急に展開は動き出したからだ。こちらにいいほうに。


魔獣の背中は切り裂かれて血が噴き出していた。魔法攻撃だと思った。

魔法攻撃があったほうを見ると、村の入り口付近に5人の人がいた。援軍が間に合ったのだ。


魔獣は背後を振り返って、5人を見て逃げ出した。


「え?」僕は動揺した。

他の皆も同様だった。いきなり逃げ出すとは思っていなかったのだ。


魔獣は援軍のいる村の入り口からではなく、村の右手の柵のあるほうから逃げようとしていた。魔獣は柵の目の前まで来て、柵を爪で壊してしまった。


討伐隊の一人の赤い髪の少女はいち早く気づいて、魔獣に向かって、風魔法を撃ちこんだ。

魔獣の右肩に当たって切り裂いたが、逃げるのを阻止することはできなかった。


そのまま、魔獣は森に向かって逃げ出してしまった。


赤色の髪の少女以外は皆はその場に立ち尽くしていた。

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