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今の状況を確認するべきかもしれない

僕たちは丘を登り切って、丘の平たい場所の岩に座って一息ついた。


そんなに、高さのある丘ではなかったが、森を見渡す分にはちょうどいい高さだと思った。まだ、夜明け前で周りが良く見えないが、日が出てくれば、スマトラがどの方向にあるかは見えるかもしれない。その見える方向から、アケ村の方向を割り出せればいいのだけど。


「皆の意見を聞いておきたいんだけど、アケ村の位置が分かり次第、向かう方針でいいか?」

僕は、メイ、リノンをそれぞれ見て聞いた。


二人とも頷いて、「うん」と言った。でも、その顔は浮かない表情だった。

きっと、ナジュさん達が心配なのだろうと思った。


僕も先に逃げたことは後悔はしている。本当にナジュさんたちを置いてきてもよかったのか?

とずっと、考えている。


本当は放送で住民の避難を呼びかけた後、研究データの事は放っておいて、みんなで逃げるべきだったのではないかと考えている。


ナジュさんは研究所の防犯機能と町にいる魔獣兵団の兵士を信用していた。魔獣から逃げるだけなら、問題ないと言っていた。

だからこそ、重要な研究データなどを持って逃げようとしていた。


じゃあ、なぜ、リノンを先に逃がしたのか?

たぶん、ナジュさんは不測の事態が起きて、研究所に魔獣が侵入するかもしれないとも考えていたのかもしれない。だから、せめて、リノンだけでも逃がしたかったのだろうと思う。


ナジュさんにとって、リノンはそれほど、守りたかった存在なのだと思う。


僕は研究所での自分の判断について一通り考えてから、このことについて考えるのをやめた。

自分の判断が合っているかはわからない。

でも、あの時の僕はメイとリノンを守ろうと決めたのだ。

なら、もう進むしかないじゃないか。


僕がそんなことを考えていたら、ひとりごとをつぶやくように、メイは言った。


「あの、黒色のフードの人がリノンの言っていた人為的に魔獣を作っている人なのかな?」


メイも一人で色々と考えを巡らせているみたいだった。口に出ていることに気づいていない様子だった。


「そういえば、黒色のフードの人は魔獣を召喚したのよね?」

リノンはメイのつぶやきを聞いて、疑問に思ったことを聞いた。

メイはリノンに話しかけられたことに気付いて慌てて言った。

「え、うん。魔法で魔獣を召還するなんて本当にできるのかと、不思議に思っていた。」


「そうね、確か、アガレストでは植物を召還することができる人がいたわよね。なら、理論上は可能なのかしら?」


「でも、魔獣を召還しようとする人はいないだろうね。」と僕は言った。


「そうね。やろうとする人はいないわね。」とリノンは僕に同意した。


魔獣を召喚しようとすること。それはすなわち、敵を呼び寄せるに等しいからだ。

召喚したとしても、魔獣は召喚者を襲うだろう。でも、あれ、待てよ。


「メイ、黒いローブの人は召喚した魔獣を操っていたように、見えたか?」

と僕はメイに聞いた。


僕は、実際には現場を見ていない。メイの幻術のフクロウの視覚共有の魔法でメイが見た状況説明から黒フードの人が魔獣を召還したことを知っただけだ。


メイは実際に見た状況を思い出しながら言った。

「実際に操れていたかはわからない。でも、魔獣たちは黒フードの人を見ていてもなにもする様子はなかった。」


「事実はわからないが、操っていると仮定したほうがいいのかもしれない。常に最悪の想定をしていたほうがいいような気がする。操る技術みたいなものがあるのかな?例えば、魔法に召喚者を襲わないように組み込んでいたとか。」


周りを見たら二人ともわからないという顔をしていた。そして、疲れているようにも見えた。


「ごめん、このことはアケ村に着いてから考えよう。夜明けまで、少し、休もう。」


僕は気持ちを切り替えるように二人に言った。

疲れていては正しい判断ができなくなる。休憩するべきだと思った。


二人とも頷いた。

僕とメイで交代で見張りをして、それぞれ仮眠をとることになった。

リノンは申し訳なさそうな顔をしていたが、「ありがとう」と言った後は何も言わなかった。


「リノンは頭脳労働のほうで、頑張ってもらいたいからさ、今はゆっくり休んでいてほしいんだ。」

と僕はフォローした。


それを聞いて、リノンの顔は明るい顔をして頷いた。

「わかった。」


夜が明け周りが見えるようになってから、僕たちは行動を開始した。


丘を周りから見回して、北西の方向にスマトラが見えた。


「丘から南に向かえば、街道に出れるかな。」とリノンはスマトラのほうを見ながら言った。


僕たちは頷いて、南を目指すことになった。

スマトラからアケ村までは歩きで1日の行程だ。

なかなかハードだ。


それに、魔獣の警戒もしなければならない。

魔獣は森の深くに住む傾向にあるから、街道まで出ることが出来れば、安心はできる。

あともう一つの懸念点があるとすれば、黒いローブの人と黒狼が今どこにいるのかがわからない点だ。


まだ、スマトラにいるのか。それともどこかに移動しているのかがわからない。

もし、鉢合わせしてしまったら、生き残れないかもしれない。

細心の注意を払わないといけない。


僕たちは丘を降りて、森を歩き始めた。

リノンはやはり、歩きづらそうにしていた。それに、疲労がたまっているのか顔色も悪かった。


リノンの格好は着替える暇もなく逃げてきたので、白衣のままだった。森を歩くには決して歩きやすい恰好とは言えない。それに、当然、森を歩き慣れてもいないのだろう。


リノンは研究者なので、外に出て、森を歩くことなんてほとんどないだろう。

森を歩くには、コツがいる。僕は歩きやすいところを選んで歩いているけれど、それでも、歩き慣れていないときついものだ。


「リノン大丈夫か?」

僕は心配になってリノンに声をかけた。


「大丈夫。ついていくわ」

とリノン元気よく答えた。


「きつかったら、言えよ。魔獣に出くわすかもしれないし、最低限逃げる体力は残しておかないといけないんだからな。」


「わかったわ。きつくなったら、言うわ。」


それからは何事もなく、森を抜けることができ、広い草原に出た。

もう少し、行けば、街道に出るはずだ。


その時何かが爆発するようなドーンという音が聞こえた。

僕は二人に「警戒するように」と言って、身構えた。


あの音は多分、魔法による攻撃なのかと思った。誰かが戦っている?


「誰が、戦っているみたいだ。急ごう。」

そう言って、僕たちは急いで音のしたほうに向かった。


街道に近づいたとき、馬車2台と数人の人が見えた。

その様子を見ると戦いは終わっていた。

魔獣の黒狼が5匹ほど転がっていて息絶えているように見えた。


数人の人のうち一人赤い髪の少女がいた。


「エリン!」

僕はそう言ってエリンに近づいた。


「? レイ!メイ!」

エリンは僕たちに気付いたようだった。その表情は驚いているようだった。僕も同じ気持ちだ。まさか、エリンに会えるとは思わなかったのだ。


「さっき戦っていたのはエリンたちだったのか。」

僕は息絶えている黒狼を見ながらエリンに言った。


「ええ、急に黒狼が向かってきて襲ってきたのよ。」

そう言って、エリンは黒狼を見て疲れたような表情を浮かべた。

エリンの他にはエリンの上司のキョウさんがいた。後3人は確か、二人の女性はハルさんとギランさん、あと一人の名前はわからない。聞いていなかったなと思った。


「それにしても、なんでレイたちがここにいるの?」とエリンは聞いた。


僕は「実は」と言って事の経緯を説明した。


黒フードの人が黒狼を召還してスマトラを襲ったこと。

僕たちは研究所の地下道から脱出したこと。


あと、まだ未確認事項について、僕たちが脱出した後のスマトラの動きについても説明した。


ナジュさんと他の研究員は重要な研究データ持ち出すために僕たちよりも遅く脱出するということ。

町の住民は町にいる魔獣兵団とともに脱出するということを話した。


それを聞いてエリンは考え込んでから、エリンたちの状況についても話してくれた。


「私たちはノア村で任務を終えて、そのことをアガレストに報告するために魔法通話で連絡してみたんだけど一向につながらなかったの。それで、一度アガレストに戻ろうという話になったの。」


ノア村は確か、アケ村よりは遠いけれど、スマトラから2番目に近い村だったな。エリンは任務でノア村に行っていたのか。それにアガレストに連絡できないって何かあったのか?

そう考えて僕は、あることに考えが至った。


「まさか、スマトラだけじゃなくて、アガレストにも何かが起こった?」


「わからない。でも確かめるべきだと思う。」とエリンは言った。

エリンの顔は心配そうな顔をしていた。多分、一刻も早くアガレストに戻りたいだと思う。


僕はどうするべきか考えた。ナジュさんとアケ村で合流すると約束をしている。

それなら、僕たちはアケ村に向かってナジュさんを待っていたほうがいいのか?

でも、アガレストも、もしかしたら、スマトラのように魔獣の被害にあっているのかもしれない。もちろん、ただの魔法通信の調子が悪いだけの可能性もある。


どっちの選択がいいのか迷っていた僕にリノンは言った。

「一度、アガレストに向かったほうがいいかもしれない。」


僕はリノンのほうに振り返って、答えた。

「でも、ナジュさんとの約束があるし。」


「それは、この際置いておいていいと思う。」


僕はそれを聞いてリノンを見た。リノンの表情からは何も読み取れなかった。リノンはナジュさんとの約束を破ってもいいのだろうか?


リノンは話を続けた。

「まずは、いろいろわからないことが多い状況なら、アガレストに向かって情報を得たほうが良い。この大陸でなら、アガレストが一番情報を得られるのだから、行くべきよ。ナジュさんとの約束は確かにある。ナジュさんもアケ村に着いて私たちがいなかったら、なにかあったかもしれないと心配するかもしれない。でも、それよりも今重要なのは何が起こっているのかを確認することよ。そして、この問題を解決するべきよ。」


僕はリノン言ったことについて、考えた。

リノンの言っていることは最もな意見だと思う。

でも、アガレストに向かうにあたって、気掛かりがもう一つある。それは、リノンの事である。

もしかしたら、アガレストは今危機に陥っている可能性があるのだ。

そこに、魔獣兵団ではないリノンを連れって行ってもいいのだろうか?

そのことをリノンに聞いてみたら、「絶対に役に立つから連れって。」と自信満々に言った。


リノンは魔獣の研究者であるが、その知識はかなり幅広い。魔獣のことだけではなく、魔法や精神面でもいい知恵を与えてくれることは今までの行動を共にしていてわかった。

確かに戦いには役に立たないけれど、僕たちの行動に対して意見を言って、間違いがあったら正してくれる。とても、心強い知恵者だ。


僕は迷ったけれど、リノンを連れていくことに決めた。


リノンを連れて行かないにしても、ここに置いていくわけにはいかないのだ。

リノンを置いていくには安全なアケ村まで連れて行かなければならない。それでは、アガレストへエリンたちとともに僕たちは行けない。僕は今何が起こっているのか一刻も早く知りたいのだ。

この考えは自分勝手な考えかもしれないけれど、リノンには付いてきてほしい気持ちがあったのだ。


「エリン、僕たちもアガレストに向かうよ。」

僕はエリンのほうへ振り返って言った。


「わかった。じゃあ、一緒に行きましょう。」

エリンが安心したような表情で答えた。

こうして、僕たちはエリンとともにアガレストに向かうことになった。

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