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4話:やったか

 前回のあらすじ。

 エポックは人工精霊の話をすると早口になるぞ。

 あと敵っぽいものが来た。

「お前の好きそうな奴じゃないか」



 隠れることなく通路の真ん中を闊歩する人型の魔物。

 冒険者には幸と不幸の両方を運ぶ存在として知れ渡っている。

 名はノーフェイス。



「残念ながらあたしの好みとはほど遠いッスね」



 2人の視線は交わらず、ノーフェイスに注がれている。

 ノーフェイスは人のように頭と手足があり、表面は光沢を放つ鎧に覆われていた。

 その鎧は研磨の跡すら存在しないほど滑らかだった。

 顔に当たる場所には目鼻を連想させるものは一切なく、胴体と同じように滑らかな鉄板になっている。



『ID登録のない2名を確認』



 抑揚のない声がノーフェイスから聞こえるが、2人には何を言っているかはわからない。

 おそらく古代遺跡が繁栄していた時代の言葉のだろう、と冒険者の間で語られているが真実は未だ解明されていない。



『警告。当施設からの退去または登録証の提示を要求致します。身分を証明できない場合は警備法建造物保護第31条に則り強制退去を実行致します』

「相変わらず何言ってるかわからねぇな」



 ウィリアムは構える。歓迎されていないことは明白だった。



『警告。危険物の所持及び使用は治安法危険物所持第16条に則り臨時逮捕権が発生します。抵抗は重罪になります。危険物を放棄してください』



 ノーフェイスはいくつかの行動パターンが冒険者の間で知られている。

 まず、ノーフェイスは同じことを3回言う性質を持っている。

 この時、冒険者が取れる選択肢は攻撃か逃走の2つだ。

 攻撃を開始すればノーフェイスは話の途中であっても戦闘になり、逃亡すればノーフェイスは追跡をしない。

 エポックはビスクドール型の人工精霊をすでに出現させており、攻撃、防御、支援の魔術を掛け声1つで実行できる準備が完了していた。



「ウィリアムさん、ノーフェイスは形状的にプレーンッスね」

「ああ。アームやフライじゃなくて良かったぜ。めんどくさいからな」



 ノーフェイスが幸と不幸の両方を運ぶ存在と言われる所以は高額買取価格を設定された魔物だという点だった。

 獣が魔力の影響で突然変異する、無機物が魔力の作用で自我を発現する、元々魔力によって活動していた精霊などが凶暴化、死体がアンデットになるなど、魔物が生まれる方法はいくつか存在する。

 だが、ノーフェイスは根源が不明の魔物だった。

 研究者はノーフェイスに古代の文明を解明するヒントが存在するのではないかと注目し、高額買取価格が設定されていた。

 実現した人間は未だにいないが、全身を無傷で持ち帰ればそれこそ数年遊んで暮らせるような金額だ。ノーフェイスを目的にした専門冒険者パーティさえ存在する。



『再三の警告を完了しました。退去の意思なし、と認識し強制退去を実行致します』

「来るぞ!」



 ウィリアムが鎖を振るうのとノーフェイスが腕を突き出すタイミングは同時であった。

 ノーフェイスの指先から発射された流線形の金属片が弓矢よりも早く標的のウィリアムとエポックに向かう。



「甘い」



 空中を舞う鎖は金属片を捉え、彼らに命中する前に地面へ叩きつけられた。



「燃やしてくださいッス! 『フレイム・バーナー』!」



 エポックの人工精霊がウィリアムの横を通り過ぎた。

 ノーフェイスは再び金属片を発射するが、エポックの人工精霊は空中を巧みに旋回し回避する。ビスクドールが火炎の鞭を振り、周囲の壁や床を溶かし、熱波は空気を焼く。並みの生物では一溜まりもないであろう。

 だが、ここは古代遺跡。この世界で3つしかない最高難易度のダンジョンだ。



『鎮火します』



 ノーフェイスは卵のように白く緩やかな曲線を描いていた胴が割れ、隙間から全方位に白い煙が噴出された。

 燃え広がる炎は煙に触れると溶けるように勢いを失っていく。



「オラァ!」



 横薙ぎの一閃。

 ウィリアムが振るった鎖がノーフェイスに命中し足が浮き、壁へと激突して崩れた。ノーフェイスの体が壁の瓦礫によって半身が埋まる。



「もう一発!」



 身動きの取れないノーフェイスに追い打ちを叩き込み、全身が崩れた壁の瓦礫に埋もれることになった。

 粉塵が舞う中、ウィリアムとエポックはノーフェイスの反応を見極める。



「やったッスか?」




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