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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

気づけば私はひとりになっていた

作者: 金子将章

短編小説を書きたくて挑戦しました。

「今日も1日良い日で有りますように」

これは私が朝起きると必ず窓辺でで言うお祈りみたいなものだ。

私の名前はクリムゾン。

サファイトという国の王をしている。

と、同時に研究者でもある。


幼い時から体の弱かった私は本ばかり眺めて過ごしてきた。


そのため、「強靭な肉体」「不老不死」といった言葉に敏感になっていた。

不老不死とは、もしかすると権力者の欲望、さがなのかもしれない。


今も本を読み漁ったり有名な学者、医者などを呼び寄せて人体の研究をしている。

周りからは変わり者と思われているみたいだ。


食事にも気を使っているので、城のコックたちは大変だ。

私が直接食材を集めさせ、それを美味しく調理せねばならないから、

たまにとんでもない物を食材として用意することもあった。


そして研究を重ねていると、どうやら魔力と生命力には密接な

関係があることを知った。


私は魔導書なども読み漁っていたので高度な魔法が使えた。世の中には

魔力が無くても強靭な肉体、生命力を持つ者もいれば、私の様に魔力は

強大だが、身体が虚弱な者もいたので魔力と生命力の関係性が分かった

時には大いに喜んだ。


きっかけさえ有れば私も強靭な肉体、不老不死が手に入るかもしれない!


魔力と生命力との関係についてもっと知識が欲しかった私は

精霊や悪魔、天使などほぼ不死の存在に目をつけた。

そして高名な召喚術士や魔術師をも研究にさそった。


しかし20歳を過ぎても妻を娶らない私に補佐官達は

「どうかご結婚をし、世継ぎをおつくり下さい」と、うるさく言われていた。

「わかった、そのうちにな」

と、いつもあしらっていた。


そんな時、私の変人ぶりのうわさを聞きつけ一人の女性が現れた

彼女は天文学、医学、薬学、魔術、魔法に詳しい研究者だという。

本当かどうか直接会って話を聞くことにした。


会ってみるとその容姿は金髪、金眼、色白の美しい女性だった、名前はティース。

彼女の研究内容を聞くと興味が湧いてきた、私も自身の研究について話した。

お互い興味を持ち、彼女は私の研究の助手にすることにした。


次第に彼女との関係は良きライバルそして良き恋人同士となっていった。

そして彼女と結婚した。


研究は続き、ついに老いについてあらがう術を発見した。


まず、時の神の魔法陣を構築し、そこから時の精霊を呼び出す。

後はその精霊と契約を結び、時の魔法を発動させるということだった。


そして時の神の魔法陣の構築に取り掛かった。何度も失敗を繰り返し

2年かけて構築に成功した。


早速、時の精霊を呼び出すことにした。

ティースが魔法陣に向かって呼びかける・・・・。

すると魔法陣が輝きだし、そこから美しい羽の生えた人型の精霊が現れた。


「ん? お前ら人間か? 人間に呼び出されるのは初めてだ」

「しかし目的は分かっている、ワシと契約したいのだろう? 」

「契約には膨大な魔力を消費するが、どちらがワシと契約するのだね? 」


強大な魔力を持っているのは私だ。「私が契約する」とティースに耳打ちした。

そして精霊に言った。

「私、クリムゾンが契約致します」

「そうか、お前か、それでは我が神に宣言する、

この者クリムゾンと我、契約を結ぶ」

すると周りが光に覆われ、その光が段々と小さくなり、

私の胸の中へと入っていった。

と、同時に全身から力が抜けてしまい、ティースに倒れかかった。


思った以上の脱力感、立っていられない。

「これで、ワシとお前は繋がりを得た、時間の流れを思いながら呪文を唱えれば

対象の時間を進める事も戻す事もとどめる事も出来る。」

「ただし、世界の時間はどうにもならない」


そして精霊はゆっくりと姿を消して、居なくなった。


こうして、私達は寿命からは解放されたが、

まだ不死への研究は続けた。


しばらくして、私達は子供を授かった。

名前はブラットティアーズ、ティアと呼んでいた。


私たちの研究は国民の怪我や病気の治療にも役に立っていたが、

その裏で悪魔のような人体実験も行われていた。


時の魔法では死んだ人間は生き返らない、一度切断してしまった

手足は戻らない、そんな実験を繰り返していた。

「ザホータ! 「時の呪文」」

「やっぱり駄目だわ、縫い付けても戻らない」


これは人間や動植物に関してだけだった。

例えば割れた花瓶などは、時の呪文で元に戻るのだが

動植物は一度切断や潰れてしまうと時の呪文では戻せない

回復魔法でさえ、潰れてしまったり、

切断された部位、致命傷まではどうにもならない。


「うう、何故だ! 何故元に戻せないんだ! 」

「そんなに焦らなくても私達にはいくらでも時間があるでしょう? 」

「落ち着いて、クリムゾン」


時間があるのは分かっている、しかし時の魔法を手に入れてから

5年、それから進歩が見られない。唯一の癒しは家族だった。

娘ももう4歳、かわいい盛りだ。


それから何の進歩もなく繰り返される人体実験、

実験に使われる人間は身寄りの無い孤児ばかり

自分の娘は愛せるのに、他人には何にも感じない。


ここ最近、近隣の村々が魔物に襲われているらしい、

なかなか手強いらしく、冒険者ギルドだけでは手に負えないらしく

近日、国の兵士や騎士団も動きだすようだ。


数週間後、魔物の情報が入ってきた。

なんでも、補佐官が言うには、その姿は人間そのものなのだが、自我が無く

手足を切断しても生えてくる、しかも頭まで再生するらしい!

ただ夜にしか出てこないそうだ。


「ゾンビや死霊のたぐいじゃないのか? 」

「それが、どうも生身らしく切られれば出血し、

痛みも感じているらしいのです。」

「なんだと!? それじゃあまるで不死身ではないか! 」

「はっ、皆はあの者を「バーサーカー」と呼んでいました」

「是非ほしい! 生け捕りにできないか!? 」

「現状では難しいと思われます」


ティースと相談してみた。

「生きているって言うのなら、痺れ薬や麻酔薬なんかが有効じゃないかな? 」

「そうか、その手があったか! 」


早速その案を補佐官に知らせ、痺れ薬と麻酔薬を兵士や騎士団に持たせた。


数日後、見事バーサーカーを捕獲して来てくれた。

手錠、足枷のうえ鎖でグルグル巻きにされていたが、

見た感じでは、ただ眠っているようだった。


早速バーサーカーを実験台に括り付け、

実験を開始した。


切断した手足は直ぐに蒸発してなくなり、断面から生えてくる。

これは頭部でも同じだった。蒸発する前に元に戻すと切断面がくっ付いた。

次に心臓を潰してみたが、胸から湯気が立ち上り後に再生されている。


数々の実験から発明された様々な機材を用いて彼を計測してみた。

年齢は16歳、身長187センチ、体重95キロ、魔力係数は?

魔力計測器が壊れてしまった。おそらく計り知れないほどの魔力の

持ち主ということだ。


後日、魔力計測器を改良して計りなおした。

魔力係数は? 12万! 

魔力が以上に高い、平均で100前後、私でさえ1万6000だというのに!?


以前から魔力と生命力には密接な関係があることを知っていたが、

彼は魔力と生命力を直結出来ているんだ! 


ティースが顕微鏡を観ながら言った。

ウイルスだ」

「こいつは感染するかも知れないよ」


バーサーカーの血液をそのまま人間に注入すると魔力係数が跳ね上がり、

それと同時に自我を保てなくなる。魔力と自我崩壊は関係がない。

それから動物、人体を使って「ウイルス」の研究、改良を試みた。


3年が過ぎた、数百の鉄の棺桶が増設された地下室を埋めていた。

ついに自我崩壊を起こさない「ウイルス」が出来上がっていた。


ただ、感染させたその子は無理やりでないと食事をしなかった。

そのため、しばらく食事を抜いた。

すると自室の鍵を壊し、他の子のところに忍び込み、その子の首を噛み

生血を飲んで、肉を喰らっていた。


それからというもの、感染者には人肉を与えた。

普通の食事でも問題なかったのに何故か人肉を好んでいた。


ティースも私とは違うアプローチから自我崩壊を起こさない

ウイルス」の完成を遂げていた。

感染者には同じく人肉を与えていたようだった。


このころになると、あまりお互い干渉しなくなっていた。

不仲というわけではないが、実験体の管理方法に差異があり

その指摘にお互いが納得できていなかったのだ。


そろそろ最終段階だ、人肉を欲するという課題が残ってはいるものの

欲求を抑えられないのは実験体がまだ精神の未成熟な子供だからだろう。


それに実験により判明したが、筋肉の密度は8倍になり五感も鋭くなる

事が分かっている。あの強靭なバーサーカーの体が手に入るのだ! 


人肉への欲求以外リスクは皆無、培養した「ウイルス」を注射器で

自分へと注入した。その直後、ティースが部屋に入ってきて叫んだ。

「クリムゾン! 駄目ぇ!! 」

「ん? 何が駄目なんだい? 私はこれから不老不死の体を!?」

心臓が痛いほど鼓動を強く波打った。「ドクン!! 」


そして頭の中に直接響く声が聞こえた。

「この種を食い殺せ!! 」

「な、なんだ? これは!? この声は!? 」

「呪いよ! クリムゾン! 」


目の前のティースに襲い掛かろうとする自分がいる!

「ティース、逃げろぉ!!! 」

「あう!」

遅かった、私は手刀しゅとうでティースの腹部を突き刺していた。

「に、逃げろ・・・。」

段々と最初に受けた呪いの衝撃は和らいで来ていた。

自分の両腕で自分を抑えた。

ウイルス」の改良の効果があるみたいだ。


ティースは部屋から逃げて出て行ったが、

追いかけて行きティースを食べたいという欲求がおさまらない。


自制が出来るなどと、考えが甘かった、、。

少しずつ歩き出し、ティースを追いかけだした。

しかし、何処へ行ったか分からないティースを諦めようと思った瞬間


今度はティアを食べたくなってしまった。

「まさに呪いだな、愛する者から食べたくなってしまうなんて」


私はティアの部屋へ向かおうとして階段を上り始めた。

そしてティアの部屋までたどり着くと、ティースとティアがいた。

「ティース、ティアに何をしている? 」

「わ、私が改良した「ウイルス」を・・・ティアにあげているの」

「そんな事をしたら・・ティアまで私の様に」

「そ、そうはならないわ」


どうやらティースの改良蟲ウイルスは呪いを受けないらしい。

ティースは実験体を普通の人間のように扱い、

外で遊ばせようとしたり会話までしていた。

それで呪いの事を私よりも詳しく研究していたらしい。


ティースが窓辺へ向かいながら言った。

「もう、私だけの力じゃクリムゾンからティアを守れない」

「ティアとクリムゾンが殺しあう想像もしたくないわ、だから」


ティースは窓のカーテンに手をかけて叫んだ。

「クリムゾン! ごめんね!! 」


カーテンが空き、太陽の光が私を照らす。

とっさに両手を前に出し、光から体を守ろうとしていた。


私の体が崩れていく・・・バーサーカーの強靭な体が。

ああ、ティースが倒れこんでしまっている・・・。

このままではティースが出血多量で死んでしまう、

ティアも光を浴びて崩れてしまう。




「ティア、あなたに祝福を与えましょう」

「だれ!? 私の頭の中に直接響く声?」




ティアの体は崩れていかなかった、

ティース・・日光の事まで、そこまで完成させていたんだね。

私の体は完全に朽ち果てた。



「私の名前はブラットティアーズ、皆は私の事ティアって呼ぶの」



そうして、気づけば私はひとりになっていた。

思いのほか時間がかかってしまいました。


読んで頂き有難う御座いました。

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