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Vol.17

 未散と理がそんな会話をしていた頃。

――なにやってんだ……?

 自分の下駄箱の前でだろうか、手紙を何個か抱えてうつむいている小さい女のコをちょうど帰ろうとしていた佳佑は怪訝そうに見ていた。

――あれって確か、並木の彼女の……。

 昨日ちょうど部活の終わりごろに優太のことを迎えに来た女のコだったような、と思い、佳佑は彼女に歩み寄る。

「今日は迎えに行かないの?」

 佳佑が衣に声を掛けると、びくっとした顔で衣は佳佑を見る。

 そのはずみでばさばさと手から手紙が落ちた。

「あらららら」

 佳佑は床に落ちてしまった手紙を拾った。

――なんか、嫌な予感がする。

 宛名も差出人も書いてないその手紙に、佳佑の心臓は吐き気がするほど締め付けられる。

「ごめん、開けるよ」

 衣の返事を聞く間もなく佳佑はそこにあった手紙の封を全部開けた。

「…………」

 中身なんてちゃんと見なくてもすぐにわかった。

 2年前、佳佑自身が時々見かけたものと同じものだった。

 嫉妬に狂った女達からの、怨み辛みが込められたおぞましいまでの手紙の山……。

「……これいつから?並木は知ってるの?」

「……もういいんです……もう、貰うことはないと思ますから……」

 衣は佳佑の問いには答えず、床に落ちた手紙も佳佑の手の中にもあった手紙をひったくるようにしてかき集め立ち上がった。

「ちょっと待って、『もう貰うことはない』ってどういうこと?」

 立ち去ろうとする衣の腕を取り、佳佑はまた衣に問いただした。

「……さっき優太に言ってきました『別れよう』って。それがわかればもうおさまると思いますから……」

 それだけやっと言うと、衣はその場で泣き崩れた。

 佳佑、怖いよ、助けて――。

 そう言って同じように女のコが自分の腕の中で泣き叫んだ光景が佳佑に押し寄せた。

 優太のそばにはいたいけれど、こんな目に遭うのは耐えられない。

 別れると言ったのも断腸の思いだったに違いない。

 ましてや相手はあの優太。

 きっとなんで別れると衣が言い出したのか全く理解できていないに違いない。

――またこんなことが起こるなんて……。

 小さくなって肩を震わせている衣を見ていると2年前に引き戻されていく。

――どうすればいい、どうすればこのコはアイツの二の舞にならずに済む……?

 言いようのない怒りと悲しみが佳佑の中に湧き上がる。

「……優太って、自分の大事な人が傷つけられたらだれかれかまわず本気で懲らしめに行くんです。しかも精神年齢低いからやることけっこう残虐で」 

 少し落ち着いた衣が突然佳佑に話し始めた。

「中学のときも、急に背が大きくなった未散がからかわれて泣いちゃったときも、からかったコたちみんなを男も女も関係なく殴っちゃって、先生に『手加減しろ』って注意されちゃって」

「……なるほどね。友達でさえそこまでやっちゃうんなら、彼女となったら大変なことになるね……だから並木には言えなかったんだ」

 佳佑は衣の隣にしゃがんだ。

 衣は黙って頷いた。

「俺ね、昔付き合ってた彼女が同じ目に遭ったことがある。まぁ俺は彼女には『別れてくれ』とまでは言われなかったけれど……けどもし言われても俺は絶対納得できない。なにがなんでも守ってやるって思うよ」

 佳佑はそう言うと衣の持っていた手紙を引き抜いた。

「でも結局俺はそれができなくて彼女を失った。……あんな目に遭うのは俺一人だけでたくさんだ」

 佳佑の言葉に衣は佳佑を見る。

「別れなくていいよ、並木のそばにいてやってよ。ある意味小橋さんは『スーパープレイヤー並木優太の生みの親』なんだから」

 すでに優太からバスケを始めたいきさつを聞いていた佳佑はそう言うと衣に笑いかけた。

「2人のことは俺が守ってやる。絶対助けてやる。だから、ちょっとだけ待ってて」

 佳佑は衣の頭に手をのせ、衣に微笑んだ。

 衣はぼろぼろ涙をこぼしながら何度も頷いた。

 こんばんは、愛梨です。

 

 いったんまとまったハズの優太&衣に暗い影が忍び寄っております(汗)。

 そして今、さっそく衣がコテンパンにやられた状態です。


 一方それを知った佳佑先輩。

 どうやら彼は衣を見て元カノを思い出したようです……。

 ここでさらりと触れた佳佑の過去は機会をみて徐々に明らかになっていくので、気になった方は……すみませんが読み進めて下さい(笑)。


 さてと。

 衣はこんな感じですが、優太はどんな感じ?

 次回はそのへんをお送りします。

 それではまたです。

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