Vol.15
にま。
にまにまにま……。
衣の家を出てから優太はずっとこの調子だ。
「……優太、大丈夫?」
とっても気持ち悪いんだけど、と未散はちょっと引きつりながら優太の隣を歩く。
「んふふふふ。大丈夫大丈夫」
気にするな俺のことは、と優太は言いながらまた1人にやける。
「そんな顔してたら誰だって気になるわよ!」
何なの一体!?と未散は優太のほっぺをむぎゅっ、とつねった。
しかし優太には全く効果なし。
相変わらずにやけ顔を続けている。
「そんなに聞きたい?」
なんか優太は偉そうな態度。
未散かがんで、と優太は未散に手招きした。
未散はしょうがないので優太に耳を傾けた。
「実はさ……」
ひそひそ言う優太の言葉に未散の顔は一気に紅潮した。
「優太、手早っ!」
なにどさくさに紛れて密室でちちくりあってんのよっ?!と外なのも忘れて未散は大声を上げた。
「ば、バカっ、声でかいって!」
しーっ!しーっ!と優太は大慌てで未散の口を手でふさぐ。
「……あーそうか。だから優太おばさんの顔まともに見れなかったのねぇ」
優太の手を払いながら未散は優太を見て口先だけで笑った。
つい5分前に未散と優太は衣の家を後にしたのだが、衣の部屋を出てきたときから2人の様子がなんかおかしかった。
2人で階段を下りたと思ったら、
「おばさん俺帰りますっ、お邪魔しましたっ。未散、帰るぞっ」
優太はそう一方的にまくし立てて帰ってきてしまったのだ。
「また来てね」
衣ママはそう言ってくれたが「また来ます」と返事をしたのは未散だけで、優太の方は未散をおいてすたすた出てきてしまっていた。
さらに衣ママに「おじゃましました」と挨拶したついでにさりげなく見た衣の顔は、幸せいっぱいの状態で未散に手を振っていた。
「……優太の癖にナマイキっ」
未散は優太の尻をぺちっと叩いた。
「未散ぅ、好きな女の唇っていいぞぉ」
優太はまた思い出し笑いをする。
「ちょっと……その生々しい表現やめて。聞いているこっちが恥ずかしいよ」
未散は優太の肩をどんっ、と押した。
「いや、だって未体験ゾーンだろ未散は」
教えてやってるんじゃんか、と優太はまた偉ぶる。
「……はいはいはい、貴重なお話ありがとうございますっ」
もういいから帰るよ、と未散は大またで歩き始めた。
「あ、照れてやんの。未散ってウブだよなぁ」
優太は未散をからかいなが追いかけた。
……しかし。
幸せは時に辛いことも一緒に運んでくるときがあるようで。
そのため未散はもう少しだけ人の恋路のお世話をすることになる。
こんばんは、愛梨です。
楽しんでいただけているでしょうか。
せっかくまとまったはずなのに何を壊そうとしてるの?!と突っ込まれそうですけど……はい、すんません、ちょっとだけ壊します(笑)。
モテる男と付き合うと必ずこういうことあるでしょ?……っていう展開を用意しております。
さてさて、衣ちゃんはどんな目に遭ってしまうんでしょうか……。
ということで、今回はこれにて。
それではまたです。