第19話 ギルド試験、目覚めるシスコン
昨日に続いて今日も更新です。結構時間が取れてきたので、ペースが上がってきてます。やったぜ。
このペースを保てるように頑張ります!
「父さん」
「ん〜?」
「何したの?」
「俺は彼に何もしてないぞ」
「じゃあなんでああなってるの?」
「ん〜…。なあイギリシア」
「何だ?」
「なんでこうなってるんだ?」
結局、自分が何をしたのか思い出せず、隣にいたギルマスに聞く父さん。
(いや、覚えて無いんかい)
「ほら、この前軍が止めきれなかった邪龍を倒して勲章もらっただろ」
父さん、そんなの聞いた事無いんですけど?ちょっとどういうことですかね?
「あ〜…そういえばそんなことあったな〜」
「いやいやそれって、そんなこと で済むレベルなの?」
「軍が負けたんだぞ。そんなこと、で済む話じゃねぇよ」
と答えてくれた強面試験官。デスヨネー
「一応最初は手加減してやるよ。その後は知らねぇけどな!」
テンプレかよっ!
「あ、そういうの別にいいんで」
「このっ!…ガキが、調子乗ってんじゃねぇぞ」
おお〜怖。
「これより、冒険者ギルドの実力試験を開始する」
長話が終わり、ようやく試験が始まる。
「試験内容は、身代わりの腕輪を使用した一対一の実戦形式で行う。両者、異論は無いな?」
「はい」「大丈夫です」
身代わりの腕輪とは、喰らうと絶対に死ぬ攻撃のみに反応して、その攻撃を一度だけ無効化するチートアイテムである。一度だけな上に、使った日はもう使えない、しかも効果範囲が決められており、その範囲外では機能しない。んでもって高い。
「試験を開始する。両者準備は良いか?」
「「はい」」
「それでは、始めっ!」
早速魔力回路で硬化を発動。そして目の前には試験官の右手。
「いってぇ!…。え、何それ?」
身体強化魔法は発光するとの事なので、魔力回路も若干光るようにしときました。体がぼんやり光るんじゃなくて回路だけが光ってるから、本当の身体強化とは全然違うんだけど。ちなみに顔の回路は見えなくしてあります。
「身体強化魔法…ですけど?」
「いやいや、普通そんな量の魔力出ねぇから」
「あ、そうなんだ…。んじゃあもうちよっと改良しとかないとな〜」
「何をごちゃごちゃ言ってんだ!」
「すみません。あ、もう手加減とか良いんで全力でお願いします」
「チッ…どうなっても知らねぇからな」
流石に頭にきたらしく、背中に背負っていた、いかにも重たそうな戦斧を右腕だけで軽々と構た。
「行くぞぉ!」
見た目からは想像できない程のスピードで突っ込んでくる試験官。俺から2メートルぐらいのところで両手持ちに変え、歩幅?を変えながら体ごと左に大きく振り始めた。
「くらいやがれっ!【回転戦斧】ッ!」
何だか勢いは凄いけど、隙まみれな気がする。初心者とか子供相手の脅しになら、これで十分なんだろ。
まあ俺には効かないけど。とりあえず二歩下がって大振りの戦斧を回避。うっわ正面がら空きじゃん。もうここで終わらせよっと。
身体強化魔法の出力を一気に上げて、一気に間合いを詰める。んでもってがら空きの腹に、思いっきり右手を叩き込む。
「パリィィィン!!」
ガラスが割れるような音がなり、試験官の付けていた身代わりの腕輪が弾け飛んだ。
「そこまでっ!」
ギルマスが、「受付で待っててくれ」との事なので、俺と父さんは受け付けの横で待機中だ。ちなみにあの後、試験官は俺に対してもペコペコし始めた。そんな大袈裟にしなくてもいいのに…。
そこにさっきのお姉さんが歩いて来た。
「クレルベールさん、ギルドカードの登録をしますので、このカードに一滴だけ血を染み込ませて下さい」
「は〜い」
カードと一緒に渡されたピンを指に軽く刺して、血をカードに染み込ませる。
『【真祖】の所有者の体内血液の減少を確認しました。【真祖】より、【貧血Ⅰ】が解放されました』
うおう。いきなり来たからビックリした…。つーかまた前世に一歩近づいたんだが?
「はい、これにて登録完了です。依頼完了時の報告や、街や国の出入りの際にも必要になりますので、くれぐれも無くさないようにしてください」
ギルドカードって結構色々な事に使えるんだな。無くさないうちにしまっとくか。
「特別枠での合格ですので、ランクⅤとなっております。一年以上活動しなかった場合は降格となってしまいますので、注意して下さい」
「は〜い」
「その他何か聞きたい事がございましたら、いつでも質問してください」
「は〜い」
登録が終わったので、ギルドの建物を出て宿に帰る。
「あ〜超緊張した〜」
「アレで緊張してたのか?」
「俺ずっと敬語だったじゃん」
「あ〜言われてみればそうだったな」
「受け付けでも「は〜い」しか言ってないし」
「あ、ホントだ…」
コミュ障は辛いぜ、全く。
時は流れて卒業式。学校敷地内の講堂に集まった全校生徒数百人が、教頭先生っぽいババ…ゲフンゲフン。女性のアナウンスで、立ったり座ったり礼をしたりを繰り返している。これはどの世界でも共通なんだな〜。ガッツリ貧血だった俺にとって、中学の卒業式はマジで地獄だったからな〜今となっては懐かしい…。
「卒業証書、授与。卒業生代表、シャノリア・レイグレイ」
「はいっ!」
スっと立ち上がって壇上にあがり、校長先生から卒業証書を受け取り、席に戻る。
それから校長の長〜いお話が始まり、それが終わればようやく卒業生の退場。全校生徒の拍手に包まれ、卒業生が歩いて退場する。中には泣いている人もいるみたいだ。
「お兄ちゃ〜ん!」
シャノのジャンピングアタックを正面から受け止める。すっかり大きくなったな〜。もう本当に天使みたいな美少女だ……。
そして俺は、ある重大な事に気づいた。
(こっこれは!……前まではほとんど気付かない程度だったが、今ではハッキリと分かるこの柔らかな膨らみ…そしてほのかに漂う優しい香り…。あぁ…魂が浄化されていく…)
何とか正気を取り戻し、笑顔でこう言った。
「久しぶり。卒業おめでとう」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
その言葉にありがとう…。
「シャノ、卒業おめでとう」
「おめでとう」
「お父さん、お母さん、ありがとう!」
おっといけない。ずっと抱き合ってたら流石に不味い。嫌われてしまったら、元も子もないからな。とても名残惜しいが、一旦離れる事にしよう…。両手をシャノの背中から離して、シャノを地面にゆっくりと降ろす……
が、シャノの体は一向に動く気配がない。
(は、離れない…だと!?)
いつの間にか、シャノは俺に両腕で抱きついていた。しかもその両腕は、しっかりと俺の首に回されていて、なかなか外れそうにない。
(あぁ…。ここがエデンか…)
ついにクレルの中に眠っていたシスコンが目覚めました。やったぜ。
結局、試験官の名前は決まりませんでしたw
クレルは鑑定使えないからね。仕方ない。
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