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「そして調べることが出来たから死んでもいいと」
理解できないようなメイソンの言葉にルードが否定を表す
「少し違うな。私は彼女になら殺されてもいいだけで君には殺されたくない」
「どうして私じゃ」
「さて!」
未だに疑問をぶつけようとするメイソンの言葉をルードが大声で止めた。
「ここから先は本人の口から聞きたまえ。さあ」
アメリアの方を向き直り手を広げ1歩近づく。
「殺してくれ」
アメリアが腰からナイフを抜き、ルードの心臓を突き刺す。
ルードの体がビクンと震え、力が抜けたようにアメリアに持たれかける。本当に力が抜けたのか自らの意思でもたれかかったのかわからない。
「────」
ルードの口が小さく動き、しかししっかりとした口調で最後の言葉を紡ぐ、それはしっかりと2人の耳まで届いた。
アメリアがナイフを抜き、ルードの体がゆっくりと倒れていく。ルードの首筋にナイフをあて首だけを切り離し、専用のケースを組み立て中に入れる。そして、使った爆弾の分だけ空いたメイソンのバックパックに丁寧にしまう。
「さあ、原子炉が臨界爆発しないうちにここを出るぞ」
「分かりました」
急いで最初の部屋まで戻る。
そして潜水服を着て二重扉を通り、通路を抜け、ハッチから外に出る。
普段は700mくらいの深い所を運行しているのだろうがルード・フォールンという逃がさなくてはならない人物を乗せているせいか50メートルくらいの浅いところに潜っていた。
「ぷはぁ。というかこれからどうやって逃げるんですか。原子炉の臨界爆発ってものすごい大きさですよ」
海面に出てそうそうメイソンがこの作戦の穴を見つける。
「ヘリを呼んであるんだよ。私だってクロールで臨界爆発から逃げ切れるなんて思っていないさ」
その言葉通り兵員輸送用のヘリが飛んできた。降りてきたロープを体に巻きつけてヘリに乗り込む。
「よし、これで大丈夫だね。サーシャ、飛ばしてちょうだい」
「OK、ボス」
サーシャと呼ばれた女性がヘリを潜水艦から遠ざけていく。
そして数分後、轟音ともに海面が盛り上がり、ドーム状の海面からとても大きな水柱がたった。
ものすごい風が吹き、ヘリが揺さぶられる。
「ちょっと勿体ないですね」
「いや、そうでも無いさ。周期表に乗ることがなかった鉄よりも軽い物質だ。恐らく崩壊し始めるのも早いだろう」
「なるほど」
海面に見えていた大きな影が沈んでいく。
「ルード・フォールンが最後に言っていた言葉はどんな意味だったのでしょうね」
「『どうだ? 私の最高傑作は』か。そうだな。お前には話してもいいか」
アメリアがメイソンの対面に移動する。
「ルード・フォールン、博士は様々な分野を担当する科学者だった。特に生物分野が得意でな。ウイルスの研究をして治らないと言われていた病気を治す薬を作り出したり、虫の羽を分析して全く音の立たないドローンを作り出したりとな」
「凄いですね」
アメリアが言った功績は全て『共産主義』の新聞などにも乗っているほどの事だ。
「そして博士は人間工学も研究していてな、人間の筋肉強化やしなやかさを保ったまま骨を固くする方法など様々な発明をしてな。孤児を改造していたんだよ」
「それは違法には」
「ならないさ。孤児も了承しているからな。そして孤児の肉体改造もげんかいがあった。開発した全ての機能を乗せられる人間はいなかったんだよ。1人を除いてな」
さすがにここまで聞いたらメイソンも理解出来る。
「それがアメリアさん?」
「そうだ。5歳の頃に博士に引き取られた私は博士の手によって体のほとんどの部分を弄られたわけだ。メスが入っていないところはほとんどないよ」
「恨んではないんですか?」
「恨むなんてことはしないよ。私が『死神』になるまで育ててくれて、今まで生きていられたのは彼のおかげだ。恨むどころか感謝しているよ」
「…………」
あまりにも辛すぎる人生にメイソンが黙るしかなくなる。
肉体改造されても親だと思い、命を削りながら神敵を殺す日々に居場所を見つける。果たしてどれだけの絶望を乗り越えればここまで来られるのだろうか。
「私は孤児で肉体改造された化け物だ。言っただろう? 私が人の役に立つにはこれくらいしかないって」
アメリアが笑う。だがその笑みは少し悲しそうでもあった。
「化け物にはこれでいいんだよ」
「アメリアさんは化け物じゃないですよ。『資本主義』の兵士からも守ってくれましたし、優しくて」
メイソンがアメリアの目を真正面から見つめる。
「あなたは人間なんです。少しは自分の体のことにも気を配ってください」
突然のことにアメリアが驚く。
「そう言ってくれるだけでも嬉しいよ」
そして追い討ちをかけるようにアメリアの手を握る。
「あなたがここにしか居場所がないというのならここに入り込みます。そして手を引いて救い出してみせます。だから待っていてください」
自分が出来る最大のセリフをアメリアにぶつける。
が、
「ありがとう。でも無理はしなくてもいいよ」
どうやら全く届いていなかったようだ。
メイソンが元の席に戻り、少しうなだれる。
そしてアメリア以外の『死神』からため息が漏れる。
どうやらこの女騎士を口説くのは相当苦労しそうだ。




