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「うわぁ、グロい」
「そんなこと言ってたらやってられないぞ。基本的に神敵は首だけ持ってそれ以外は体を切り刻んでポイだからな。」
有言実行とばかりに頭と体を切り刻んでハッチから捨てる。
「これ海を汚してることにならないんですかね」
「小さくなってるから魚が片付けてくれる。水葬とかいうものだ」
ドッグタグだけは残しておいてやるのが優しさとばかりにずんずん進んでいく。
「そのナイフに刻まれた紋章ってなんですか?」
「ああ、これか?」
ナイフに付いた血や油をピッ、と払っていたアメリアにメイソンが聞く。
そのナイフには女神が鎌を持っている絵が彫られていた。
「『死神』の紋章だよ。『神政主義』では殺人を禁止しているからね。自分の身や家族の命を守るための戦いは認められている。その戦いで人を殺してしまった場合、その人をきちんと弔い、その人の分まで生きなければいけない。そう教えられて育つんだよ」
「なら『死神』も、守るための戦いに入るんですか?」
「いや、入らないさ」
そのまま歩いていると見回りの兵士達に会うが兵士達が慌てて銃を構えるよりもアメリアの方が速い。サッと奪ったサブマシンガンを構えて撃ち殺したり、角で出会ったりした時はナイフで殺したりとして進んでいく。
「私たちがやっているのは禁止されている殺人だよ。別に例外なんてない。『死神』の紋章というのは神の代理として神敵を殺す者。対外的にはそうなっている」
「対外的には?」
「そうだ。実際には『神の領域に入り込んだ者』という制限をつけた殺人鬼で、神敵を地獄に送る代わりに私達も地獄に落ちる」
「それは、『必要悪』ってやつですか?」
「確かにそうだ。『共産主義』や『神政主義』の中では許されているが所詮は人が決めたものだ。神が許す訳じゃない」
「それでもいいんですか?」
「良くはないさ。ただ私はこんなことでなければ人の役になれないからな」
「そんなことはないですよ!」
「お、おう。ありがとう」
突然メイソンが大声を出した。目の前に突然『資本主義』の兵士(銃持ち)が現れても眉1つ動かさずに処理していたアメリアもこれには驚いたのか少し戸惑いながら話を続けた。
「だから私達は戦場で死ぬのがお似合いなんだよ」
「……そうですか。しかしどうしてこんなにシャッターがあるんですかね」
少し不機嫌になりながらもメイソンが伝えた。
「さあ、穴が空いた時対策じゃないのか?」
「ここに随分大きな扉がありますね」
「これは水密扉か? なんで潜水艦の中にあるんだ?」
「恐らく二重構造になっているじゃないでしょうか。外殻に穴が空いても大丈夫なように」
っと、ここまで考えたところでふと気づく。
「あれ? じゃあハッチが壊れてても潜れるんじゃないか?」
「でもまだ沈んでませんよね」
「外殻と内殻の間の通路を警備してる兵士が逃げる間沈まないんじゃないか?」
「でもこっちじゃなくて向こうに向かってましたよね」
アメリア達は潜水艦の通路を真ん中あたりから右回りに進行方向側、前の方に向かって進んでいたが兵士達は逆側、後ろの方に向かって進んでいた。
「ならここはなんなんだ?」
「恐らく燃料庫じゃないですか? それより早く反対側に行かないとここに水が入ってきたら大変ですよ」
急いで元来た道を戻るが途中でガコンという音ともに通路のパイプから海水が入り込んできた。
「なんであんなに水が入ってくるんだ?」
「ここは通路じゃなかったんですよ。ここがこの潜水艦のメインバラストタンクだったんですよ。通路をメインバラストタンクにして中央を開ければ生活区域とかが沢山取れるんです」
潜水艦はメインバラストタンクというタンクに水を入れて沈み、タンクの水を出して浮上する。普通は中央近くに作るものなのだがこの潜水艦は外殻の内側すぐにあるみたいだ。
「でもそうなると今回のように穴が開くと水が抜けなくなって浮上出来なくなるんじゃないのか?」
「穴が空いてもシャッターを閉じて排水するんじゃないですか? それに複殻式を採用して穴が開きにくいようにしているんでしょう」
そう言っているうちに海水が足首のあたりまで溜まってきた。
「やばいやばいやばい。あとちょっと」
目の前に見える水密扉を強引に開けて中に入る。二重扉になっているようで手動式のポンプを使って排水してから2番目の扉を開ける。
「ふぅ、間に合った」
「ここには兵士が居ないみたいですね」
水密扉を抜けた先には小さな休憩室のような所でいくつかの潜水服が置いてあった。
「とりあえずルード・フォールンを殺す算段をつけないとな」
「……」
メイソンが黙って考え込んでいる。
「どうした?」
「今まで合った兵士は3人でした。隠れて亡命するために少ない人数でコソコソするのは普通なんですけど、それならもっと小さい潜水艦でもいいはずなんです」
「1人の亡命にしては大きすぎる?」
「そうです。確か新しい原子を作り出したって言ってましたよね。それはどんな原子なんですか?」
「……オリハルコンだ」
メイソンが絞り出すような声で言った。
「別に神話の世界の金属という訳では無い。ただ普通の金属よりも軽く、硬く、しなやかで高い温度でないと溶けにくい。戦時中の今の世界ではとても価値のある金属だ。それもできる限り安価な、炭素とかその辺の物質から作ることが出来るみたいだ」
「それも運んでいるとしたらどうですか。サンプルとしての金属、作るレシピ、他にも必要な機材などそれがここにあるかもしれません」
「すなわち、この潜水艦はルード・フォールンだけでなく技術までも乗っけているということか」
「『資本主義』は金が全てです。安価な元手で莫大な利益を作り出す金の成る木なら二つ返事で亡命を受け入れてくれるでしょう」
「ならそれもついでに潰してしまおうか」
そう言いながらメイソンのバックパックから爆弾を取り出す。
「この潜水艦は原子力潜水艦なのだろ? ならその原発を臨界爆発させてしまえばいい」
「出来るんですか?」
「これだけあれば出来るだろう」
「それなら早めに行動しないとですね」




