1ページ目
敬愛なる敵軍人様へ
なるほど、それは大変でしたね。
まあ、私の上司は性格もいいし仕草も可愛いしで言うことないですが、もっと美しい人を見つけたんですよ。
そうですね。金が全てのあなたの軍にいるかどうかもわからないほどの素晴らしい人です。
まあ、ほんの数時間前の話なんですが
現在、世界は戦時中だ。今から80年ほど前にソ連がキューバにミサイル基地を建造、アメリカと全面戦争が始まり、その結果、国連が『共産主義』と『資本主義』に別れて冷戦が激化、二大勢力がぶつかる第三次世界大戦が始まったわけだ。
さらに『資本主義』、『共産主義』の中からキリスト教やイスラム教などの宗教が突然、独立を宣言し、唯一神を信仰することで全ての人類を統一するという『神政主義』が出来た。
そして現在の地球は『資本主義』、『共産主義』、『神政主義』、の三勢力が戦争しているわけで、中でも『神政主義』だけは自分の領地からあまり出ず、領地の防衛だけに専念している。
そのため『資本主義』と『共産主義』の勢力争いになっているというわけだ。
ここで重要なのは『神政主義』が自分の領地の防衛に専念しているというところだ。確かにその通りでもあるのだが宗教を使って金を儲けようとする『資本主義』とはあまり仲が良くない。それに比べてみんなで仲良く楽しく平等に生きよう。というのを掲げる『共産主義』は『神政主義』の神がお造りになられた人間は皆平等であるという精神と似通っているところがある。
そして『神政主義』は他の勢力地に入り込むことがある。
「──────」
そう、神敵認定された者の暗殺のためだな。
まあ、奴らは暗殺ではなくこの世の浄化とか言っているがやってることは同じだ。
「──────」
いったい何が言いたいんだって?
まあ、落ち着け、お前が取材したいって言ってる『神政主義』ってのは守るだけ、暗殺するだけの戦争真っ只中の国には珍しい。だが逆に言えば社会が求めている銃撃ちまくりの戦争は撮れないってことだ。
それでも撮りに行くのか?
「──────」
なるほど、数年前にあったアフリカの独立国家と防衛戦をやった時みたいなのを撮りたいわけか。
しかし気をつけろよ。奴らは神敵に対しては人の情とやらが消えてなくなるタイプの人種だ。
お前が神敵認定されない事を願ってるよ。
───────────────────────
『資本主義』、『共産主義』、『神政主義』、3大勢力のどれにも属さないいわゆる空白地帯というのがここ、アフリカ南端、フォールス海だ。空白地帯と言っても戦火から離れた安全地帯というわけではない。
むしろその逆、ここを占拠すればアフリカ大陸への進軍が楽になる。元々『共産主義』が占拠していたのだが『資本主義』が南極大陸の『共産主義』軍基地を占拠したことにより『資本主義』がフォールス海までやってきたのだ。そして『共産主義』にとっては防衛戦、『資本主義』にとっては攻略戦の戦争が始まった。どちらも負けそうになると戦力を拡大し、ある程度まで拡大したところで睨み合いになった。
すると莫大な税金を使うその基地がどうして1つも戦火を挙げないのか、と国民達が疑問に思い始め、両軍は軍基地の近くに立ち入り許可を出した。
その地区には小さな店がいくつか立ち並び始め、商売を始めた。
その結果として二大勢力が数十キロしか離れていない場所で共に小さな街を構えるという不思議な空白地帯が出来たのである。
そして『共産主義』軍ケープ半島防衛大隊はバッフェルス・ベイ・ビーチに拠点を構え、そこには『神政主義』の騎士様がいた。
騎士様は黒い軍服に身を包んだ金髪ロングの女性で周りを簡易店舗に囲まれた軍基地の中を悠々と長官室に向かって進んでいく。案内を担当しているのは緑の軍服を着た銀髪ショートの男性歩兵のメイソンだ。
「随分と活気があるもんだな」
「日頃金の使い道がない兵士たちが少ない小遣いを持って買い物を楽しんでますから。『資本主義』と違って娯楽が少ない『共産主義』では買い物が立派な娯楽ですし」
「しかしそれを考慮しても『資本主義』の市場より活気立つのが『共産主義』らしいな」
「お金が動けば活気があるというわけでもない、だいたい売り買いを仕事の1つと割り切ってお金と商品の交換だけに専念する『資本主義』と違って、コミュニケーションの1種として確立されてます」
そうこう言っているうちに長官室に着いた。
長官室には幼いの女性が座っていた。
「『神政主義』軍所属、『死神』のアメリア・ロンダートだ。今回は協力を申し出てくれて感謝する。アンナ・マフタン中佐」
「困った時はお互い様ですよ。それよりも問題なのは今回のターゲットが『資本主義』に亡命しょうとしている事でしょう?」
「その通りだ。準備は出来ているのか?」
「勿論ですよ。今すぐにでも始められますよ」
「感謝する。だがこちらとそちらの作戦の擦り合わせが必要だな。後で担当の者をこちらに寄越す」
「君では駄目なのかい?」
「残念ながら私は『鎌』の方でね。そういうのは『顔』に任せることにしているんだ」
「なるほど」
それだけの事を話し合ってアメリアが長官室を出ていく。
「おっと」
長官室の前にはメイソンが待機していてぶつかりそうになる。
「買い物をしに行くなら案内しますよ」
「そ、そうか。それなら頼もうかな」
そんな2人をアンナは監視カメラを通して見ていた。
「しかし、見た途端に一目惚れか、羨ましいなぁ」
うーん、主語が抜けてるし、羨ましいんだね。
───────────────────────
「食べられない物とかあったら言ってください」
「私たちの教義にはそんなものはないよ。『神政主義』が禁止しているものは殺人屋窃盗などの『共産主義』でも法律で禁止しているものと同じだよ」
「そういうものなんですか?」
「『この世界は弱肉強食であり、世界で生き抜くには団結しなければいけない。また食物は幸せに生きていた動物達、植物達の命を生きるために奪っているので感謝し、どんな食物でも残さずに食べなければいけない』これはそちらさんの憲法と同じような物、『神政主義』の聖典だよ」
「それは好き嫌いもですか?」
「勿論、できるだけ好き嫌いせずに食べろと教えられる。だがどうしても苦手な食べ物がある場合は周りの人が片付けるんだよ」
「なら普通の料理よりもちょっとゲテモノに走った物の方がいいですね」
「ははは、お手柔らかに頼むよ」
2人が色々な店を周り、伝統の土産物などを見ていく。
その中で見つけた髪飾りなどをいくつか買い、お昼ご飯を食べる店を探し始める。
「あそこの店にしましょう」
メイソンが肉料理系の店を指さした。
「普通とは違うのか?」
その店は他の店と同じような外見をしており、メイソンの言っていたような記念になりそうなものが感じられない。
「羊の頭が食べられるんですよ」
「頭を?」
「ええ、東洋の島国ではマグロの頭を食べるらしいですが、この辺では家畜の肉は余す所なく食べるみたいです」
「なるほど、カブトニ、のようなものか」
店に入り、メイソンが料理を頼む。




