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「さて、またまた移動命令だよ。今度はイギリスか、徐々に北に行っているとは思っていたが遂に北極点近くにまで辿り着いたみたいだね」
「また、移動ですか」
この数ヶ月間に2回も移動するなんていう珍しい体験をしているのはメイソンだ。
「ああ、それと階級が変わったみたいだぞ」
「上ですか? それとも下?」
「斜め上だな」
訳が分からない回答を現在の上司が返す。だがその疑問も上司から手渡された紙を見て解消される。
「『死神』の『腕』、ですか?」
「良かったな。まさかの『共産主義』軍から『死神』に所属移動だとよ」
なんかもういっぱいいっぱいなメイソンに上司が一言。
「頑張ってこいよ」
ああ、他人事だと思ってやがるな。
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「さて、ミーレス中将とやらはミーティングでなんて言ったんだ?」
「なんでも北極で『神政主義』の実験動物を見つけたから保護しろだってさ」
「なんで?」
「『神政主義』の実験動物って言ったら科学技術の塊だからなぁ。解析して金儲けのネタにするんじゃないかな?」
『資本主義』軍情報解析部隊のレオンと、学生兵のカイトが北極に向かう船の上でそんな話をしていた。
レオンが言っていたミーティングと言うのは作戦立案を担当する者達だけで行われるものだ。カイトは学生兵で作戦立案に有効なアイデアを出せるかもしれないという理由で参加が認められている。
「しかし、北極か、道理で寒くなってきたわけだ」
「少し前は海とビーチの夏だったのにね」
「その前は南極だったけどな」
はっはっはっはっ、と笑うがそれで暖かくなれば苦労はしない。
「しかし実験動物がすごいなんて言う証拠はあるのかね。捕まえてみたらまだ何もされてないただの動物でしたとか最悪だぞ」
「その点は大丈夫そうだね。冬の北極海を飲まず食わずでイギリスから北極まで泳いだみたいだし」
「その実験動物って魚?」
「いや、熊」
「熊かぁ」
軍隊の仕事の1つに街に降りてきた害獣の駆除というものがあるがその中でも一際面倒だった熊退治のことを思い出してげんなりする。
「ただただめんどくせぇな」
「ならもっとめんどくさいことを教えてあげようか?」
「あ?」
「科学技術の漏洩を防ぐためにあの『死神』が出てくるらしいよ」
「あの地獄に落ちることを承知で人殺しをする暗殺集団が? もう、帰ってもいいんじゃねぇのか?」
「さらにソ連の方から『その実験動物は北極から泳いでソ連まで来れるかもしれない。そうなる前に捕獲し、本国の安全を確保せよ』という命令分持ちの部隊が向かってきているみたいだよ」
「3勢力揃い済みかよ!」
「実際は小さいテロ組織とかもその実験動物を利用したいみたいで20勢力ぐらいいってそうだけどね」
めんどくせぇー
と、お空に向かって叫んでいるレオン達の元に1人の少女が歩いてきた。マイラだ。
「大丈夫ですよ、全部爆弾でぶっ飛ばせばいいんですよ」
「それに巻き込まれるのは俺たちなんだぞ」
「ミンチ肉が食えなくなるくらいのトラウマ植え付けるのはやめてくれよ。ほんと頼むから」
すっごく楽しそうなマイラに対して野郎2人はお疲れの様子だ。
「まあ、何はともあれ実物を見ないとな」
「そうだな」
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「またまた上官、というかこれからずっと上官のミア・グリーンバーグだよ。よろしく、『腕』くん?」
イギリスの中でも珍しい裏が川に面している宿でミアがそう言った。
「はぁ、よろしくお願いします」
元気なミアに対してメイソンはため息から入る。
「どうしたの? お腹が冷えたのならタオルケットがあるよ」
「なんでいきなり『死神』に移動なんですか? というか勢力が違いますよね」
まあ、『共産主義』の軍隊から『神政主義』の『死神』だからな。普通なら移動などありえないことだ。
「私が裏で手を回してね、『共産主義』の荷物持ちくんが優秀だから『死神』に欲しいって言ったんだよ」
「でも私の意見も聞かれるはずですよね。何も聞かれてないんですが」
「ああ、それならね」
ミアがポケットから何かを取り出す。
それはまるで録音機のようで。
「よっと」
『あなたは人間なんです。少しは自分の体のことにも気を配ってください』
スイッチを入れた録音機から聞こえてきたのはメイソンの声だ。
『あなたがここにしか居場所がないというのならここに入り込みます』
「あ、」
メイソンが何かに気がついたように声を上げる。




