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さっさと爆発して欲しいヘタレ様へ
そんなにイチャイチャしたいなら洗濯機の中に突っ込んでやろうか?
ずっと抱き合ってグルグルできるぞ。
と、言いたいところなんだがどうも少将さんがこれからバカンスに連れていってくれるって言うんでな。
水着回を全力で楽しんでくるぜ。
ここはサンサンと太陽輝く美しいビーチ。ベトナムの南端である。
現在、世界は戦時中である。今から80年ほど前にソ連がキューバにミサイル基地を建造、アメリカと全面戦争が始まり、その結果、国連が『共産主義』と『資本主義』に別れて冷戦が激化、二大勢力がぶつかる第三次世界大戦が勃発した。
さらに『資本主義』、『共産主義』の中からキリスト教やイスラム教などの宗教が突然、独立を宣言し、唯一神を進行することで全ての人類を統一するという『神政主義』が出来た。
そして現在の地球は『資本主義』、『共産主義』、『神政主義』、の三勢力が戦争しているわけである。
ただ、『神政主義』だけは自分の領地からあまり出ず、領地の防衛だけに専念している。
そのため『資本主義』と『共産主義』の勢力争いになっているのである。
そしてカイト達が所属する『資本主義』軍第225中隊は南極やオセアニアなどの功績と大企業クリークの令嬢からの評価もあって長期休暇を頂いたのである。
「あれ? レオンはもうお酒に手をつけ始めてんのか? 早くないか?」
レオンにカイトが声をかけると、レオンは麦の絵が描かれた缶ビールを右手で飲みながら左手に持ったもう1つの缶ビールをカイトに向かってグイッと突き出す。
カイトはそれをじっと見つめる。そのままじっと見つめる。
「はぁー、まったく」
途中からキツくなってきたのか腕がプルプル震えてきたレオンが可哀想になったカイトがビールを受け取る。
「つーかこれ何%なんだ?」
未だに口を離さないレオンは空いた左手の指を3本立てる。
「3%か、よくそんな飲めないものを渡してきたな」
するとレオンが左手を違う違うとでも言いたげに振る。
「まさか30%か!?」
想像を遥かに超える数字に辿り着いたカイトは急いで缶ビールの表示を確認するが、ビールを1缶一気飲みしたレオンが答えを口にする。
「-3%だよ」
「いや、-3ってなんだよ。アルコール度数に負の数字なんかあったのか?」
「あ? なんだ、まだ酒が飲めねぇ未成年はいくら学生って言っても酒には詳しくないんだな」
『共産主義』と違い娯楽が豊富な『資本主義』ではもちろん酒や煙草も盛んだ。
しかし酒などは飲みすぎると仕事の効率が悪い。そのため開発されたのがこのアルコール度数マイナス%という特殊なお酒だ。
アルコールは体内で酵素の力により分解される。その酵素を沢山含んだ特殊な薬を普通のビールに配合するため、最初に少しだけ酔い、数分経つと直ぐに酔いが覚めるのである。
もちろんみんな0パーだとか呼んでいるが実際の表記は「8-8%」となっている。前がアルコール度数で後ろが薬の濃度だ。薬の濃度はアルコール度数と同じでアルコール度数が3%で薬の濃度が3%のものを飲めば、完全にでは無いが相殺されるという訳だ。
そしてカイトが手に持っているのは-3%、つまり「0-3%」のものである。これはとある酒豪が「薬入りは少し味が変わるから薬だけを作りやがれ!」と言ったことを元に作られたものでアルコールを分解する酵素と水分、ミネラルなどが入ったもので、もちろんカイトも飲める。
だけど飲む気になれないカイトはそのままレオンに返す。
「なんだ、いらねぇのか。酒好きが喜んで飲むように酒風味に仕上げてあるから楽しめるぞ」
「高校生にはジュースがお似合いだよ」
そんなことを話しながら2人は料理が乗ったテーブルに歩いていく。
「いやぁ、バカンスはいいねぇ」
「確かに、ただ長期休暇を与えると税金の無駄遣いって言われるから企業の令嬢や跡取り息子のバカンス護衛のためっていう建前が用意されてるけどあの人らは自分専用の護衛がいるからな」
「おいおい、こんな時まで仕事の事を考えているのか? ちょっと真面目すぎじゃねえか、学生さんよ」
「しかし護衛って確か傭兵だっけ?」
「ああ、普通のシークレットサービスじゃカバーしてくれない戦場も護衛してくれるからって専属を頼んでくる企業がわんさかいるらしいぜ」
「企業の専属か、慣れたら金持ちルート一直線だな」
「現在そのルートを一直線に走ってるやつが何言ってるんだか」
2人は雑談をしながらも食べ物を口に運ぶ手を全く休めない。
「しかしうめぇな。いつものレーションよりも上手いんじゃないのか?」
「そりゃそうだろ。あんな栄養調整しまくった味付きゼラチンの固まりみたいなレーションがフライドチキンに勝てるわけがない」
口の周りを油でベタベタにしながらチキンを貪っている2人はそのまま話を続ける。
「そう言えばお前は何味のやつを選んでるんだ?」
「洋風、和風セットに焼肉味だな」
「マジか、それでどれだけ掛かってるんだ?」
「530ドルだよ、年で6000ドルくらいだな」
「さすが、エリート候補だな。金はいくらでもあるってか?」
「料理大国の日本生まれとしては譲れないだけだよ」
「なら『共産主義』のレーションは最悪だな」
「味付けすらされてないからね」
軍から兵士に支給されるレーションは様々な工夫が施されている。
例えば『共産主義』軍では全ての人の味覚に合う物は作れないためわざと味が抜いてある。しかし、完全に味を抜くと飽きてしまうため時々ふりかけのような物が配られるのである。
その点、『神政主義』は特殊だ。軍にいる全ての兵士が唯一神を信仰しており、パンとワインが配られるのである。
さて、では本題の『資本主義』だが、昔は『共産主義』と同じように味無しが配られていたのだが、そこは金にがめつい『資本主義』である。ある会社がレーションに目をつけ、味付きの美味しい、そしてカロリーも高いレーションを開発したのだ。
しかし、いくら美味しくしても全ての人の好みに合わせられる訳でもないし、結局その味に飽きてしまっては意味が無い。
そのためその企業は様々な味のレーションを開発したのだ。
もちろん軍はこれに飛びついた。今まで不評だったレーション、それの開発を代わりにやってくれて、製造や、個人個人の包装もやってくれるのだ。
そして軍は兵士にレーションの分だけ増やした給料を払い、兵士達は自分で好きなレーションを頼むのだがこれまた『資本主義』らしく、1月分のレーション代、300ドル。もちろんこれだけだと、原材料が安いレーションか、オレンジジュース味などの技術的に作りやすいレーションしか買えない。そのため自分の給料から少し出して美味しいレーションを買うのだ。
まあ、結果として3大勢力の内、『資本主義』だけが、一般市民にも愛されるレーションになったのだ。
しかしそんな工夫をしたところで結局、きちんとした食材が使われた料理には敵わないわけである。
「いやしかしほんとうめぇな、このフライドチキン」
「何せ肉汁が溢れてくるレベルだからね」
「こんなに美味いもんがあるのに女性陣は大変だねぇ」
レオンの目線の先ではシャルロットやマイラなどがスイーツのテーブルの前で紙とにらめっこしていた。
「わざわざカロリー表を確認してから食べてるからね」
「食いたきゃ食えばいいのになぁ」
「栄養調整されたレーションのおかげで今が良い体型だからさ、それを維持したいんだろうよ」
体型なんて太ってから考えればいいんだよ
という考えのカイト達は1口ハンバーグやらトンカツやらステーキやらと茶色いものばかりを詰め込んでいく。
「そろそろ射撃場にでも行ってみるか?」
「そうだね、今日のノルマをサッサと終わらせて水着回を始めよう」




