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「化け物だからな。用心して悪いことはないだろう」
人体改造を施されたアメリア。その化け物を相手に油断しないというのは正解だ。
だがいくら頭では理解出来ていても銃弾が胸の中央に命中し穴が空いた状態になったアメリアには少なからずの油断があったのだろう。
「おっと」
「グラン?」
突然グランがバランスを崩し、地面に両手をつく。
そして倒れたグレンの目の前にあったのは未だに生気を失っていないアメリアの目だった。
「グラン、足が!」
リンダの焦ったような声を聞き、足に目を向ける。
だが見慣れた足ではなく、足首が離れた悲惨な足だった
「ぐおああああああああぁぁぁ」
「グラン、落ち着いて!」
今まで感じていなかった莫大な痛みがグランを襲い、絶叫が上がる。
そんな中でも元『死神』のリンダは焦りつつもしゃがみこんでグランの手当を始める。
簡単な止血だが効果はあるだろう。
「あ……れ……?」
だが、グランの足からではなくリンダのお腹から血が出たことにより止血が止められる。
アメリアがやったのではない。
『私が何かしらの方法でグランに傷を負わせる。そしたらメイソンは動きが止まったリンダに短距離狙撃銃で鉛玉をぶち込んでくれ』
やったのはそんなアメリアからの指示を完璧にこなしたメイソンだ。
リンダのお腹に風穴を開けたメイソンが大急ぎでアメリアの元に駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか?」
メイソンが血だらけのアメリアを抱き起こす。
「な、何か返事をしてください」
「メ、イソン、大丈、夫だ」
「重傷なんですから少し黙っていて下さい」
少し怒ったようにメイソンが返す。
「ははは、理不尽だな」
その間にもメイソンがバックから血止めやら包帯やらを取り出して応急処置をしている。
「心臓ぶち抜かれて生きてるのも不思議な状態なんですから安静にしていてください!」
メイソンがそう叫ぶがアメリアは不思議そうな顔をする。
だがメイソンはそれに気が付かない。
『あー、やほー。聞こえてるかな? 今からそっちに向かうからリンダ達が逃げないように見張っておいてね 』
『な、アメリアさんが重傷なのにその2人の方が重要なんですか!」
「もちろん重要だよ。私達は死んでも目的を果たす「死神」だよ』
その言葉に言い返そうとしたメイソンの元に見覚えのあるジープが止まった。
「はいはい、小言は後で聞くからアメリアちゃんを乗せておいて。あの二人はこっちでやっとくよ」
無言でアメリアをジープに乗せる。
すると運転席からサーシャが顔を出す。
「何?」
「血が足りない。輸血袋あるか?」
「わかった」
サーシャの短い言葉を理解してアメリアが現状を報告する。
サーシャが座席の下から輸血袋を取り出してアメリアの腕に針を刺して輸血を始める。
「アメリアさん、助かりますか?」
「助かるよ」
そう答えたのはリンダとグランを後ろに積み込んだミアだ。
「片方は貧血気味でもう片方は脇腹に被弾。君は心臓を狙っていたようだけど焦って外したみたいだね」
「それでアメリアさんは」
「まあまあ落ちついて」
ミアがメイソンを宥め、メイソンが渋々座る。
座ったのを確認してサーシャがジープを出発させる。
「さて、アメリアの事だったね。アメリアはこれでは死なないよ」
「え、でも」
アメリアの胸の穴は確実に心臓を抉る位置に出来ている。
「大丈夫だよ。アメリアは普通の人とは内蔵の位置が違うんだよ。そして主要な内臓には金属の板で作られたカバーがしてある。だから何も問題は無い。まあ、少し貧血気味になるくらいだね」
「そうですか」
「そう、だから何も心配することは無いぞ」
メイソンが体を起こしたアメリアの体を押し倒して強制的に横にならせる。
「それでも心配はするんですから休んでいてください」
ミアやサーシャに言われたら確実に無視して無茶をするアメリアだがメイソンの真剣な目を見て少し考え込む。
「わかったよ。少し休む」
いつも捨て身のようなアメリアとは違う言葉にミアとサーシャが驚き、そして笑顔になる。
「それが一番ですよ」
そしてメイソンはアメリアの傍で手を握って笑っていた。




