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「諦めろ、これが戦争なんだよ、お前だっ」
「『共産主義』の指揮官さえ殺せばここから脱出しても良いんだろ?」
カイトがレオンのセリフを遮りながら言った。
「ならさっさと殺して帰るんだよ。マイラも連れてな!」
「無理に決まってるだろ!」
レオンが壁に拳をぶつけた。
「ここは『共産主義』の基地の中だぞ。いつもみたいに支給をいつでも受けられるわけじゃないんだよ。その状態で1番守りが硬い指揮官を殺すなんて無理に決まってるだろ!」
カイトがレオンの胸倉を掴んで壁に押し付ける。
「なら見捨てれるのかよ。まだ出会って数時間の女の子だが同じ軍の仲間だぞ」
「見捨てるしかないんだよ」
そう言い争いをしている間もマイラは衰弱していく。
「クソっ、なぁレオン、お前って確かに情報解析部隊に属してたよな」
「ああ、情報の解析がお得意のわかりやすい部隊だよ」
「ならそこのPCからここの地図出せるか? 出来るなら換気口も」
カイトが部屋の机の上に置いてあるPCを指さす。
「出来るけど換気口から侵入しようとか考えているんだったら諦めた方がいいぞ」
レオンがPCを操作して沢山のウィンドウを出す。そしてその1つを指さす。
「ほら、換気口はどの部屋にもついていて、一見どこにでも行けそうだが効率よく空気を循環させるためにプロペラファンが付いてるぞ」
「換気口を通って動く訳じゃないさ。それより、お前も手伝ってくれ」
「何をしているんだ?」
「ガソリンを集めてるんだよ」
カイトは先程からドラム缶を転がして集めている。何がしたいのか全くわからないが、レオンは他に案がないのでとりあえず同じように集める。
「あとはこれを換気口に流し込むだけだ」
「あ? まさかこれで焼き殺す気か? さすがに無理だと思うぞ」
「後で説明してやるから口じゃなくて手を動かせよ」
無言でドラム缶4本分を換気口に流し込んだカイトは背負っていたリュックからドザドザドサーとC4を出して、ペン型の信管を刺していく。
そして10分ほど刺すとマイラを抱えて走り出した。
「早く逃げるぞ」
「OK、ずらかるのは得意だからな」
最初に入ってきたのは違い、ジープが置いてある隣の整備場に行きジープを1つ奪って走り出した。運転手は唯一運転出来るレオンだ。
「それで、説明してくれるんだろうな? あれだけやって何もならなかったじゃ軍法裁判にかけられるぞ」
「まあ、まずは見せた方が早いな。車を止めてくれ」
カイトが車が止まったのを確認してからマイラの上着から探し出した端末を操って起爆させる。
その途端、物凄い轟音が鳴り響き基地の辺りが爆煙に包まれる。
基地が崩壊する衝撃波がカイト達の元まで駆けてきた。
レオンは爆発が見えて瞬間に蹲り、爆発に備えていた。だがさっきから血が足りなくて倒れているマイラはそんなことが出来るはずもないのでカイトが覆い被さる。
そして鼓膜が破れるんじゃないかという衝撃波がカイトたちの体を駆け抜ける。
「ぐぁ、お…カイ……何が…起……んだ?」
まだ鼓膜が麻痺しているのかよく聞こえない。カイトが首をふるふると振って立ち上がる。
「基地を爆破さしたんだよ」
「それは見たらわかる。どうやったのかを聞いているんだよ」
「ガソリンを換気口に流し込んだだろ、あれが揮発して基地内を埋めつくして、さっきの爆発で引火したんだよ」
「あ? そんなに上手くいくもんなのか? ガソリンなんてそんな簡単に揮発しないだろ」
「ここは南極だぜ、普通のガソリンじゃぁ車は動かねぇよ。氷点下でもじゃんじゃん揮発する特別性なんだよ」
命の危険が去ったからか車の上で無防備にべちゃくちゃと話し続けている。
『何を喋っているんだ? まあいい、よくやったな。もう戻ってきていいぞ』
「当たり前だ、これでまだ残業とかやる気ねぇよ」
「まあ、これで少しは楽になるといいけどなぁ」
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上官室でマイラとシャルロットが向かい合っていた。
「それで足の調子はどう?」
シャルロットがマイラの足を羽根ペンで指しながら聞いた。
「まあまあですね。まだ完治はしてませんが全力疾走くらいなら出来ますよ」
それを人は完治したと言うんだけどね、とシャルロットが頬杖をつきながらマイラの足を見る。
「かっこよかったでしょ?」
「そうですね、負傷した工兵を見捨てずに行くなんて普通の人ならしませんよ。それに爆破の際にも飛んでくる破片とかから守ってくましたし」
「そう、あいつはかっこいいやつなのよ。惚れちゃった?」
「そうですね。惚れてしまいました。でもそれが狙いだったんですよね?」
「学生兵は自分の意思で好きな隊に入隊することが出来る。学生兵の特権の1つね。そして色んなところから引っ張りだこ。いつまで手元に置いて置けるかわからない」
「だから私に惚れさせて引き止めろと言うんですか?」
「色んなところから引っ張りだこのエリート様を惚れさせる女性兵士を作るよりもエリート様に惚れる女性兵士を作った方が楽なのよ」
「少将は惚れないんですね」
「イケメン秘書がいるからね。エリートよりもかっこいいんだよ」
そうですか、とだけ言ってマイラが部屋から出ていき、シャルロットだけになる。
「しかし、レオンも銃弾の嵐から守ってくれていた気もするのだけど、運の悪い子ね」
まあ、レオンは主人公の引き立て役だからね。




