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「愛は神獣や、世界、法なんてものじゃ止められないのよ」キラン
は? 何言ってんだこいつ?
的な表情で止まっているアメリアに対して、先程まで『神政主義』らしい正義やら傲慢やらの哲学的な話であまりついてこれていなかったメイソンが突然女子高生の恋バナレベルに落ちたこの話に割り込んでくる。
「えっと、つまりグランに恋したから正義や思想とかを投げ捨てて着いて行ったと」
「その通り!」
呆れそうになるメイソンだが今思えば自分も似たような状況にいることを思い出して少し落ち込む。
「恋なんかのために『死神』を抜けたのか!」
「確かにあなたには共感しにくいのかもしれないけど、どうやら勢力も違い、生きる世界も違うのに追い続けている人もいるみたいだしね」
リンダがメイソンの目を見る。
「さて、それじゃ話したいことも話せたし逃げさして貰うわね」
リンダが窓に手をかける。
「待て!」
もちろん待てと言われて待つ逃亡者はいない。
ボンという音と共に部屋の中に煙が充満していく。
「発煙弾?」
「それだけだといいが」
目が使えない中でアメリアが窓の位置に銃を撃ってリンダに対する牽制と、換気を行う。
少しすると煙が薄れ、視界が確保されていく。
「なっ、」
「なるほど、さっきの爆発はこれでしたか」
さっきまでリンダが立っていた位置の床が四角く崩れ落ちている。
「爆薬で足元を崩して下から逃げたのか。昔に建てられた木造だから爆薬を上手く配置すれば少ない衝撃で床を落とせる。切れ込みなんかを入れておけば綺麗に落とすことも出来るだろう」
「追いますか?」
「いや、罠があるかもしれない」
アメリアが悔しそうに壁を叩く。
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アメリアとリンダが正義と恋について語り合っていた頃、ミアとサーシャはメイソンが持っていった通信機(に取りつけた盗聴器)から聞こえてくる情報に耳を傾けていた。
「このことボスは知っていたんですよね」
「うーん、まあ予想は出来てたかな?」
「なら何で言ってあげなかったんですか?あの子が理解できないのは分かってたでしょうに」
「(アメリアと違って『死神』に居場所を、自分の正義を見出せず、神にすがり法に依存していたあの子が自分の居場所を見つけて挙句の果てに自分の信じる正義すらも見つけられたんだからね。彼女が信じた正義や彼女の思いを知りたいじゃないか)」
サーシャには気付かれないように自分の思いを紡ぐ。
なら言わなければいいじゃないか、と思う人もいるかもしれないが。
自分の心を出来るだけ押し殺さないといけない『死神』には時々口に出したい気分になる時もあるのだ、としか言い様がない。
「しかし、あのエースが一目惚れですか」
「納得いかないかい?」
「アメリアとは違う意味で恋愛沙汰に関係なさそうでしたからね」
くくく、とミアが苦笑する。
「確かに仕事以外には目もくれずに殺し回る娘で、娯楽には興味のなさそうだったのにね」
「それが今じゃ男に首ったけ」
はぁ、と2人がため息をつく。
「私にはエースの愛が理解できませんね」
「あら、やっぱり『死神』を抜けるのは理解できない?」
「『死神』でいる間がもっとも気楽ですし、メイソンみたいに引っ張って欲しいですね。付いてきてもらわないと行けないような男は論外ですね」
まあ、あんなヘタレも嫌ですが。と付け足す。
「そうね。でもエースから見たらあなたの恋も理解できないものかもしれないわよ」
「そんなもんですかね」
「……一応聞くのだけど、あなたの性別は?」
「女ですよ。というかこのボンッキュッボンを見て男だと思うのですか?」
「まあ、ボンッキュッボンは置いておいて、あなたの好きな人は?」
「もちろんボスですよ?」
何も疑問に思っていないサーシャの顔を見てミアが頭を抱える。
「ほんと、恋って理解しにくいのよね」
それにはすごく同意するよ。
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「それで、どうやって追うんですか?」
「とりあえずミアに報告する。そしたらミアが作戦を練っている間に何か逃げ道を特定できそうなものが無いか部屋の中を探す。それが最善策だ」
メイソンのリュックから通信機を取り出してミアに繋げる。
「ミア、リンダに逃げられた。何かしらの対策を考えてく」
『ああ、はいはい。いつもの通りの報告はいいからとりあえず指示通りに動いて。今宿前の大通りを西に向かって走ってる』
アメリアの説明を制止しつつミアが指示を飛ばすだがその内容はまるで
「見えているのか?」




