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「おいおい、こういうのは元々作戦立案の奴らがやる仕事だろ、なんで俺達がしないといけないんだよ」
『現在、大企業の令嬢がこの戦争に参加しているの。今私達は彼女を生かして返すことに全力を注いでいるわけ。でもそうするとあいつらが野放しになるからあなた達にどうにかして欲しいのよ』
んな無茶苦茶な、とレオンが呟くがカイトは直ぐに送られてきたファイルを開く。
「あ、ダメだ。わかんねぇ」
「え、お前設計図の読み方知らねぇの? 意外だな」
「いくら学生兵って言っても兵器の弱点を設計図から探せるほど万能じゃねえよ」
「仕方ねえな。何が知りたいんだ?」
「推進装置とエアークッション部分だ。あれだけの大きさをエアークッションだけで支えられるはずがない」
えーと、とレオンが設計図をスクロールして探し出す。
「推進装置はピカピカに磨いた鉄板の間にレーザーを反射さして空気を爆発的に膨張させて進んでいるみたいだな。プロペラで鉄板の間に空気を補充しているみたいだ。それとエアークッション部分だが中にフロートも使ってる。フロートとエアークッションで海の上に浮かんでいるみたいだ」
「フロートもついているのか」
「エアークッションで浮かんでるって言ってもフロートは海面に接しているんだろ? なら魚雷で沈められるんじゃないのか?」
「無理だ。海面を進むタイプは機関銃で処理されるし、気づかれにくい海中から海面に飛び出すタイプも狙いがピンポイントだからあんだけ速いと当たらないんだよ」
そんなことをしている間にも味方の軍艦が沈んでいく。
「フロート……レーザー……エアークッション……」
「おい、どうするんだよ。こんなことをしている間にも沈んでいってるんだぞ」
レオンがカイトを急かすがそれを全て無視してカイトが通信機でシャルロットに連絡を取る。
「フランセス少将、チャフってまだ残ってましたよね」
『残ってはいるがどうする気? あれにチャフを振りかけたとしても今のアイツらは電波でやり取りなどしていないのよ』
「そうだぞ。というかチャフを撒いたところで俺達には被害が出るだけだろ」
「電波の妨害が目的じゃない!決められた道筋を通るレーザーをチャフがあちこちに反射さしてくれる。そうすれば推進装置が壊れたホバークラフトなんてただの的だ」
「おいおい、そんな上手くいくわけがないだろ。だいたいそんなただの一兵士が考えた作戦を少将クラスが使ってくれるはずがないだろ」
『いや、学生兵の考えた作戦よ、試す価値はあるわ』
学生兵、今までさんざんカイトのことをそう呼んできたがこれは別に派遣留学とかでは無い。
アイドルをしながら学業にも勤しむ、そんなことが出来るのを知っているだろうか。
それと同じようなことである。星の数ほどある高校の中でもひと握りしかない難関高校。その中でもある程度の成績を持ち、体力、運動神経もある正に文武両道の生徒。彼らは希望によって軍に所属することが出来る。彼らは日頃は軍に所属し、学期に一回、本国に戻り高校で試験を受ける。そしてある程度の成績を残したものは高校を卒業でき、軍に少佐として入ることが出来る。
また学生兵として軍で働いている分も給料が出るので普通に高校を卒業する学生よりも金を稼ぐことが出来る。
そして彼らも、自主的に軍関連の勉強もしているため作戦立案時に将校様がアドバイスを貰う時がある。
すなわち、出世街道を歩く、エリートである。
そしてカイトの作戦が実行されチャフが辺り一面にばら撒かれる。
今回撒かれたチャフは空中に長く滞空するタイプのチャフだ。
いきなりチャフを撒かれて戸惑った『共産主義』兵だがすぐに電波障害用のチャフだと気づきチャフに突っ込んでいく。
その結果はお察しの通りだ。プロペラによって吸い込まれたチャフはレーザーを乱反射し、推進装置をぶっ壊す。
推進装置が壊れ、動きが止まったエアークッション船などただの滑りやすい板のようなものだ。ある程度の距離から軍艦の砲撃で沈められる。
しかしこれだけで全て壊せるほど『共産主義』軍のエアークッション船は脆くない。
直ぐにレーザーによる自爆だと気づき、レーザーを止めてプロペラだけで動き始めた。
たった1隻、沢山ある中のたった1隻だがカイトたちの元に向かってくる。どうやら1番軍艦の数が少ないところから離脱しようとしているみたいだ。
「おい、学生さんよ、あれはどうするんだ?」
「んなもんこうに決まってるだろ」
カイトが残っていたニトロ粘土を全て丸め、信管を挿して甲板の上に向けて放り投げる。
海面からの投擲だが別に軍艦の上に乗せようとするわけではない。ある程度低いエアークッション船のフロートの近くまで飛ばせばいいのだ。さらに今回は相手の方から近づいてきてくれている。上に上げるだけでも勝手に上手くいく。
そして爆発
カイトが投げた爆弾はエアークッション船の頭を吹き飛ばし、スカートに風穴を開ける。
するとエアークッション船が前に傾き、沈んでいく。
「さぁクソッタレな浮島ども。ここは綺麗なサンゴ礁が見られるんだ。海に潜って感動してな」
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「さぁ、じゃんじゃん飲みなよ。クリークの令嬢が面白いものが見れたって沢山送ってくれたんだから」
お祭り騒ぎである。
元々爆弾で船を爆破するだけの簡単なお仕事が死体が大量生産される本物の戦場に変えられたのだ。そこに令嬢からの差し入れとくれば今まで張っていた緊張の糸が解け、ほっと一息つくのも人間として当たり前なことだろう。
「しかし凄い量だな。何人分あるんだ?」
「さぁ、数えるのもめんどくさいくらいですね」
カイトはいつもの黄色軍服で、手にはコップが握られていた。カイトはこれでも高校生なのでコップの中身はオレンジジュースである。
それに対してマイラはいつもの青軍服ではなくグレーで膝の上までかかる大きなダボダボのパーカーと短パンだ。彼女も未成年なので手に持っているのはグレープジュースだ。
「いつもレーションばっかの私たちには実に最適なプレゼントよね」
「んな事言ったって『共産主義』の味無しや女神教会のパンの味がするレーションに比べたらうちらのレーションは美味しいですよ」
「ほんと、『共産主義』の何がいいのかしら」
「なんでも金に振り回されない分人間関係が作りやすいらしいですよ」
「人間関係とか信頼とかは金で買えるのにね」
人間関係を金で買えるなどとおかしなことを言っているがそれは『資本主義』以外の者の考え方だ。金を沢山持っていればそれだけたくさんの人と仲良くなれる。それが『資本主義』である。
「あ、でも共産、主義では福祉が、充実してる、らしいですよ」
マイラがそう言ったが、それを言う間に焼き鳥を4本を口に運んでいた。
「福祉が充実していてもなぁ」
「娯楽が少ないんだよねぇ」
そう、『共産主義』は福祉がとても充実している。『資本主義』は金が全て、貯金と所得によって色々変わる。例えば退職した老人やまだ働いていない子供は地位が低い。もちろんそんな人達に分ける税金など存在しない。
しかし『共産主義』はそうではない。老人には年金を、子供には学費無料や医療費無料などの待遇をと、とても充実している。
また『共産主義』では全ての民が少し裕福である。『資本主義』のように自分の力で成り上がれ、ではなくみんなに民を分配するというのが基本なので全ての民にお金が分配されている。
このように『資本主義』と『共産主義』は全く違う。娯楽が多く、上手く行けば一生遊んで暮らせるが、上手くいかなければもやし生活の『資本主義』。方や定年まで生真面目に働かなくてはいけないが仕事場は楽しいし、福祉も充実している『共産主義』。
どちらがいいかは人それぞれという訳だ。
さて、あなたはどちらが好みかな?




