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カイトとシャルロットのため息が重なる。
「それでいつその令嬢が来るんですか?」
「あともう少しで来るらしいのよ」
「もう、少将の権力で潰せませんか?」
「ちょっと無理かしらね。あそこの銃は性能がいいし」
またまた2人のため息が重なる。さすが軍人、毎日苦労してるなぁ。
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ババババババババババ、とヘリが大きな音を立てながら船に1人の女性とその取り巻きを下ろす。
その少女は銀髪に赤い目をした17歳くらいの女の子で見るからに偉そうな雰囲気を醸し出している。
その少女を守るように降りてきたのは大柄な黒スーツ黒サングラスの傭兵だ。
基本的に『資本主義』では金さえあればなんでも出来るので傭兵は珍しくない。
そして着陸そうそうの令嬢の言葉が
「ふぅ、随分とむさ苦しいところですわね。よくこんな所で生活できるもんですわね」
うわぉ、the貴族じゃん。
と、カイト達が思うほどの完璧な仕草をやってのけたソフィアは護衛から1枚のお札をもらいそれで汗を拭く。そしてそのお札を地面にぺいっと捨てる。
「あ、それが欲しければご自由にどうぞ。平民は平民らしく地面を背屈ばって生きているのがお似合いですわ」
『共産主義』や『神政主義』なら「うわぁ」と、言いたくなることをサラっと言いのけた。
そしてソフィアが船の中に入っていくとお出迎えしに来ていた兵士たちがお札目掛けて一斉に飛びつく。
100ドル紙幣に飛びつくなんて、さすが『資本主義』、がめついな。
とか思っている人は甘い、甘すぎる。グラブジャムンに砂糖と蜂蜜をかけたように甘い。
「よっしゃ、大企業の令嬢が汗を拭いた100ドル紙幣なんてオークションにかけたら1万ドルはくだらねぇぞ」
わかったかね。これだけがめつくないと『資本主義』では生きていけないのだよ。
「さて、随分と私の部隊にお金を落としてくれたみたいね」
「軍のおかげで随分と稼がせてもらってますからね」
「あら、演技をしなくてもいいの?」
「演技も何も、キンググループの令嬢相手に出来るわけがないでしょう。演技は商人の娘として当然、そして礼儀を持つのも当然のこと」
「まあ、いいわ。私の部隊をぜひ楽しんでいってね」
「ええ、もちろんです」
そう言って白いドレスの裾を摘み、綺麗なカーテシーを見せたソフィアは護衛とともに部屋を出ていった。
「相変わらずの変わり身の速さ、友達として誇りに思うわ」
さすがシャルロットさん、随分と面白い友好関係ですね。
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「さあ、さっさと言ってくれる? 後ろがつっかえてるのよ」
シャルロットが船の端で固まっている兵士たちにそう言った。
「いやいや、海面までの高さが50メートル超えてるのにいちにのさんで降りられるわけないだろ?」
「カイトとマイラは既に海面でぷかぷか浮いているのに?」
「うっ、あいつらと俺らは違ああああああああ」
セリフの最後が悲鳴になっているのはシャルロットがレオンの尻をその細い足を鞭のように振って船の上から落としたからだ。
そのあとも船から降りようとしない兵士たちにズバン、ボチャンと1人1人丁寧に蹴り落としていく。
「くそ、あのロリ俺らを蹴り落とす時に無茶苦茶無邪気な笑顔してやがる」
「そんなレオンの顔も笑顔なのはなんで?」
「そんなことをいちいち言わせるなよ学生、嬉しいからだよ」
うわぁ、相変わらずレオンは変態だなぁ、はははははは。
と、笑っているカイトの元に黒い物が落ちてきた。
「なんだこれ?」
「爆弾ですよ、それを取り付けてあの黒いのを吹き飛ばすんですよ」
「ああ、そう言えばそうだったな」
マイラに言われて自分の役目を思い出したカイトがマイラと協力してさっきから自軍の軍艦と豪快な撃ち合いをしてる敵軍艦の船底近くに爆弾を設置していく。
爆弾は粘土のように形を変えることが出来て、投げれば壁などに張り付く。だがいくら張り付くと言っても所詮は粘土だ。そのまま船の壁にぺたっとした所で並に攫われるのがオチだ。
そのため強力な電磁石を船底に張り付け、それを爆弾で包み、鉄のカプセルを被せた半球状にするのだ。
そして爆弾の設置場所も決まっている。ひとつの所に集中させすぎると隔壁によって水が全ての部屋に入り込まず、沈まない。かと言ってばらけさせると水が入るほどの穴を開けるのに大量の爆弾が必要になる。
そんなたくさんの爆弾、用意するのも設置するのも容易ではない。その結果としていくつかのポイントに2〜3個を設置することになったのだ。
「しかしあのゴム版何に使うんだろうな」
カイトが爆弾の設置を進めながら上を見て言った。
「飛んできた砲弾から船壁を守るんじゃないですか?」
「ゴム版で守れるもんなのか?」
「さあ? 実際に採用されてるなら使えるんじゃないですか?」
「おーいお前ら口ばっかり動かしてないでちゃんと手も動かせよ」
マイラとカイトの話にレオンが割り込んできた。
「とは言ってもこれの使い方がイマイチ理解できないんだよなぁ」
カイトが魚雷に取手を付けたような機械を振りながらレオンに言った。
「その横棒を両手で握ってねじるんだよ」




