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親愛なる敵兵様へ
いやぁ、どこの誰だか知らないがちょっと愚痴を語らせてくれねぇか?
うちの将校様が頭のおかしい命令を出してくれたもんでね。
少しくらいあの容姿に似合う精神を持って欲しいんだが、まあ、今日の話なんだが
ここは吹雪と氷河のオンパレード、南極である。
その大きな氷の上に座りサバイバルセットの中に入っていた釣竿で釣りを楽しんでいるのは黄色い軍服を着た高校生くらいの男と青い軍服を着た18歳くらいの男だ。
「んで、カイト、俺たちはなんでこんな所にいるんだ?」
「『共産主義』の奴らに占拠された南極の奪還作戦だろ。つーかさっきから氷の上に座ってるせいでお尻が冷たい」
カイトと呼ばれた黄色い軍人が釣竿を無意味に動かしながらそう言った。
「はぁ、なんで『共産主義』の奴らはこんな寒いところを占拠したがんのかね」
「国境が存在しないし、資源が取れるんだろ」
ふへー、と青軍服のレオンがため息をつく。
「それじゃそろそろ行くか」
カイトが釣竿をしまって立ち上がるがレオンは座ったままで立ち上がらない。
「おいおいどうしたんだよ。まさか寒い中戦うのが嫌だからここで釣りしとくとか言うじゃねえだろうな。そうなったら俺もあのロリ少将に叱られるんだぞ」
カイトがレオンの腕をグイグイ引っ張るが全く立ち上がろうとしない。
「なぁ、カイト……」
「あ? なんだよ」
レオンが絶望したような顔でカイトの方を見る。
「やべぇ、なんか尻が氷に張り付いた」
「うわ、なんだこれ。体温で溶けた氷がまた固まったのか?」
「と、とりあえず剥がしてくれ」
「おう、わかったちょっと待ってろ」
レオンの腕をカイトが掴んでグイグイ引っ張る。するとビキビキビキッと音が鳴る。
「あ、」
「おいどうしたよ黄色い学生さんよ。なんかヤバそうな顔するのやめてくれないかな」
「氷河にヒビ入ったみたい」
「嘘だろ!?」
レオンがカイトの指さしている場所を見ると確かにヒビが入っていた。
「やべぇやべえ、早く戻らねえと極寒の南極で寒中水泳する羽目になっちまう」
「早く逃げろぉぉぉぉぉぉぉ」
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現在、世界は戦時中である。今から80年ほど前にソ連がキューバにミサイル基地を建造、アメリカと全面戦争が始まり、その結果、国連が『共産主義』と『資本主義』に別れて冷戦が激化、二大勢力がぶつかる第三次世界大戦が勃発した。
さらに『資本主義』、『共産主義』の中からキリスト教やイスラム教などの宗教が突然、独立を宣言し、唯一神を信仰することで全ての人類を統一するという『神政主義』が出来た。
そして現在の地球は『資本主義』、『共産主義』、『神政主義』、の三勢力が戦争しているわけである。
ただ、『神政主義』だけは自分の領地からあまり出ず、領地の防衛だけに専念している。
そのため『資本主義』と『共産主義』の勢力争いになっているのである。
そして『資本主義』の簡易基地の中に現在高校2年のカイトはいた。
「で、みんなが働いている間お前らは海で楽しく泳いでいたと」
「いや、だから海に落ちたって言ってるだろー。そこんとこ理解してくれるなら解放してくれよー」
「理解していないから解放しないでいいわね」
「いやそういう問題でもないんじゃないかなぁって思うんですけど」
ロリ少将ことシャルロット・フランセスにレオンが愚痴を垂れながら抱きつこうとするが雪国仕様のブーツで頭を踏まれて動けなくなる。
「おーい、レオン大丈夫か?」
「あははは、ご褒美だ」
「ほんとレオンって変態だよね」
カイトがレオンに向けていた視線をシャルロットに向ける。
「(細い体にぺったんこの胸、それと150あるかないかという身長、うん)」
「まさにロリ少将だな。とか思ってるんだったらお前にもご褒美をあげるわよ」
「うへぇ、俺には踏まれて喜ぶ趣味はないですよ」
「そうかそれは残念ね。少佐、紅茶を貰えるかしら?」
「どうぞ」
とてもいい香りがする紅茶を片手に地位が高いものしか座れないフカフカの椅子にレオンを足置きにしながら座っているシャルロットが1枚の紙をカイトに渡した。
「これは?」
「今回の作戦についての詳細が書いてある書類よ」
「この敵の基地に潜入して上層部を殺して戻ってくる、っていう訳がわからないものに俺たちの名前が入っている気がするんですが」
「安心して、あなたの目がおかしくなった訳ではないわ。公平なるくじ引きの結果あなたが選ばれただけだから」
「いや、普通そこは1番の適任者がやる物じゃないんですか?」
「その適任者がくじ引きで決まったのよ」
シャルロットが2人の名前が掘られた木の棒をカイトに投げる。
「さっ、この馬鹿を連れてさっさと攻略してきてちょうだい」
シャルロットがめちゃめちゃ楽しそうに嫌がる部下2人を送り出した。
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「くっそ、あのロリ、俺たちをこき使いやがって」
「でもそれが嬉しいんだろ?」
「もちろんだよ」
変態軍人とカイトが廊下をずんずんと進んでいく。
目指しているのはシャワー室だ。
「まあでも作戦前にシャワーを浴びることを許可してくれただけマシなのかな?」
「おいおい、これだから学生さんは、あのロリのことだぜ、シャワーを浴びる前に出撃させられるに決まってら」
「ならさっさと浴びないとね」
カイトがシャワー室の扉をガラッと開ける。
中は脱衣所になっていてその奥に個室がいくつかある。
レオンがバッと軍服を脱ぎ捨てて一番右の個室に入る。
それに対してカイトは脱いだ服を綺麗に畳んむ。
「おいおい、服畳んでんのか? 真面目だねぇ」
「学生は真面目さが取り柄だろ。それでシャワーはどうなんだ?」
「いや、なんかここ壊れてるみたいだな、お湯が出ねぇ」
「なら他の場所に行けよ」
「そうだな」
レオンが個室の扉を開けようとするがガコンガコン鳴るだけで全く開かない。
「嘘だろ? 扉まで壊れてるのかよ」
「ははははは、ドンマイ、レオン」
笑いながら右から2番目の個室に向かう。
「(あれ? シャワーの音が聞こえるな。まさかレオン、冷たいシャワーでも浴びてるのか? タフだねぇ)」
少し音がすることに疑問を感じつつもさっさと海水を流して暖まりたいカイトは扉をガラッと開けて天使を見た。
そこに居たのはカイトと同じぐらいの身長でシャルロットよりも体の起伏があり、美しい銀髪を持った少女だった。
「ふむ、Cカップってとこかな?」
「何を冷静に判断してるんですか!」
「ぐふぅ」
少女からの全力ビンタを頂いたカイトはクルクルと回転しながら吹っ飛び扉にあたって止まる。
「え、おい、何を見たんだよ! なぁカイトー」
レオンが異変に気づいて声を上げるがカイトには届かない。
「なんで男専用の時間帯に女性がいるんだよ」
「それはですね。彼女が作戦前にシャワーに入りたいと言い出したので少将が許可したからですよ」
「うぉ、びっくりした」
突然扉が廊下側に開きカイトが倒れる。
「って秘書さんか、どうしたんですか?」
「とりあえず服を来てください」
「ん? その声ってもしかしてシャルロット少将のお付のロリコン中佐か?」
カイトがいそいそと服を着る。
なお、レオンが個室の中から声をかけているが、同時並行で未だにどうにかして個室から脱出出来ないか試行錯誤を繰り返している。
「ええ、その通りロリコン秘書です」
声だけを聞くと優しそうだがレオンがいる個室を蹴りながら言っているのでちょっと怖い。
それも金髪高身長のイケメンがスーツ姿で全力の蹴りを放っているので音がすごい。
「さて、彼女があなた達と一緒に行動する工兵です」
3分ほど蹴り続けて満足したのかスーツの皺を正しながら秘書が言った。もちろん突っ込んだら蹴りが飛んできそうなのでカイトも蹴りについて何かを言うことは出来ない。なので普通に話が進む。
「ってことは君がマイラ・ヒンリーか」
「あの後でよく普通に接することが出来ますね。まあ、その事はいいです。今回の作戦で同行する工兵のマイラです」
青い軍服に着替えて少し頬を赤くしているマイラが握手のために手を差し出す。それにカイトが応じ、手を握った途端。マイラがカイトの手を思いっきり引っ張って近づいたカイトのお腹に腰が入ったいいパンチを食らわした。
「さて、これで恨みっこ無しですね」
マイラが最高に可愛いいい笑顔を見せてくれた。
「見た目通りの威力でそんなに痛くないから可愛い笑顔でプラスマイナスプラスになった…」
マイラは銀髪ショートに紫色の眼をした16歳くらいの小柄な女の子で、変にごつい秘書や常に鍛えているレオンみたいな筋肉はなく細い腕なのでカイトにとってはあまりダメージがないパンチだった。
「ま、まあ、とりあえず仲良くしてくれ」
今度はカイトから手を出す。
「まあ、1発殴れたのでいいですよ」
今度はきちんと握手してくれた。
すると部屋の隅に取り付けられているスピーカーから連絡があった。
『久しぶりだな野郎ども、フランセス少将だ。潜入作戦に参加するメンバーはすぐに動き始めろ、『共産主義』に動きがあった』
シャワー室に静寂が訪れる。いや、ロリコンは惚けているだけだ。
「さ、行きますよ」
「あ、はい」
マイラがカイトの首根っこを掴みながら廊下を走っていく。
そして秘書がレオンを個室から引っ張り出す。
「ここは壊れまくっているのであまり入らない方がいいですよ」
「クソっやっぱりシャワー浴びる前に出撃させられるのかよ」
愚痴りながらもきちんと仕事をこなすのがレオンのいい所である。
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「それでどうやって入るんだ?」
カイトがきっちり閉じられた扉に手を置きながらそう言った。
ここは『共産主義』の軍事基地、それの扉の1つだ。いつもは沢山のセンサーで守られている扉だが、『共産主義』と『資本主義』の銃撃戦に巻き込まれて機能しなくなっている。
「こうやればいいんですよ」
マイラが楽しそうにC4を扉につけて爆発させる。
「いや、確かに開いたけどよ、敵さんも沢山来てるじゃねぇか」
「それは戦闘係に頼みますよ」
「丸投げかよ!」
マイラに『共産主義』軍(ライフル付き)を押し付けられたレオンがライフルを適当にぶっぱなす。
「あれ? お前らは参加してくれないのかい?」
「いや、だって」
「私たちライフル渡されてませんし」
「クソっこれだから学生と工兵とは銃撃戦で一緒になりたくないんだよ」
「あ、私が気にしていることを!」
「俺たちだって役に立てるし銃弾だって沢山持ってきてるんだぞ」
「銃弾があっても銃がなかったら意味が無いだろうが」
するとマイラが私だって出来るんだもん、のノリで入口近くに置いてあった緊急出撃用の散弾銃に手を伸ばす。
「おい、待てよ、お前銃を撃った経験あるのか?」
「私これでも軍人ですよ、銃くらい扱えます」
「なんで目を逸らしながら言うんだよ。無いのか? 無いんだろ」
レオンが追求するがマイラは目を逸らしたままで答えない。
「あーもう、うるさいですね。こうすれば弾が出るだけの仕組みなんて簡単で…」
マイラが散弾銃を『共産主義』兵に向けて撃った。
轟音か鳴り響き弾丸が敵兵に向かって飛んでいく。
「おお、やるじゃん。そのまま他の奴らにも鉛玉をプレゼントして…」
レオンの言葉が途中で止まる。
「なんで倒れてるんだ?」
「は、反動がでかい…」
「嘘だろ? 1発でギブかよ!」
そのままぎゃあぎゃあ騒ぎながらも応戦し、近くの部屋に逃げ込む。
「クソっここはどこだ?」
「見た感じ休憩室みたいだな。とりあえずどこかに移動しないと死ぬぞ」
レオンがマップを見ながらそう言った。
「とりあえず整備場に行きませんか? そこにガソリンがあると思うのでそれを爆発させて遊びましょうよ」
「いや遊んじゃだめだろ」
しかし他に行くところないのでマップから整備場の場所を探し出して移動を始める。そして『共産主義』軍の兵士にばったり出会う。
「はあ、めんどくせぇ」
「そんなことを言わないでさっさと撃ち返してくれよ!」
カイトがレオンに銃弾の嵐の中で叫ぶ。
「──っ!」
その時突然マイラが倒れた。慌ててカイトが支える。
「おい、カイト、どうした?」
「くそ、マイラが被弾したみたいだ」
「ちっ、近くに部屋はないのか?」
「あそこの赤い扉が整備場だ」
「わかった」
大急ぎで部屋に滑り込む。
「大丈夫か?」
カイトが話しかけるが蹲ったまま反応がない。気絶しているのか喋れないのか区別がつかないがやばい事に代わりはなさそうだ。
「おい、見ろよ! 足と腹に被弾してる」
マイラの左足、そのふくらはぎの辺りと、左脇腹あたりが真っ赤に染まり、ふくらはぎの方はえぐれていた。
「クソっ。どうする? 置いて行くか?」
「どうにかして連れて行けないのか?」
「それが出来るならそうしてぇよ。でも背負っていくにしても危険すぎる。だいたいここは『共産主義』のど真ん中で軍医達もこれねぇ。かと言って背負って行ったところでけが人持ちじゃ攻略できねぇ」
クソっ、とカイトが悔しそうにマイラを見る。
「置いて行ってください…」
「大丈夫か、マイラ?」
「左足と左脇腹が痛くて動けません。軍人になった時から覚悟は出来てます。このドッグタグだけでもお母さんに届けてください」
その言葉を聞いたカイトが部屋の中をゴソゴソしだす。
「おい、何をする気だよ。もうマイラは置いていくしかないんだ。それともお前が背負っていくか? そんなことは出来ないんだよ」
レオンがさっきから頑張っているカイトの肩をガシッと掴む。
「諦めろ、これが戦争なんだよ、お前だっ」
「『共産主義』の指揮官さえ殺せばここから脱出しても良いんだろ?」
カイトがレオンのセリフを遮りながら言った。
今日は、龍鳴 竜です。
「魔王勇者の無双の旅」という作品をなろうに投稿している学生です。
元々1作目である↑これ以外を書く気は無かったのですが、元々親友キャラの説明用に書いた短篇の続きが思いついてしまったので2作目として投稿してしまいました!
魔王勇者の無双の旅に比べてファンタジー要素が皆無ですが(そういえば狂気もありませんね、珍しい)空想科学系の作品として楽しんでいただければいいなと思います。
最終話まで毎日投稿なのでぜひブックマークして続きをお読みください。




