22.使い方
「受信した」
「?」
泉に戻ったらヨウが何か呟いた。
「リリファルシアンが潜って大丈夫だって。行くよ春華」
「え、ちょっと」
ヨウに連れられて泉に潜るけど、
これってヨウ溶けちゃうやつでは!?
「良く来たね、春華」
泉の中は紫水さんが居たような教会。でももっと赤い。
王座に立っているのはクロウさんだ。
紫水さんが描いていた絵の天使。今は羽根が黒いけれど……
「クロウさん」
「細かい話の前に、ヨウを呼んであげてくれないか?
その大きな筆で描けば出てこれると思う」
描くの? これで、私が?
……
18歳だった時を思い出して描いて見る。
うう、線がよれよれ……
何となく人型に見えた所でヨウさんが顕現した。
「ありがとう春華」
「どうしてクロウさんがここに?」
「紫水が倒れたから心配で来ちゃったんでしょ。
もちろん本体じゃない」
「泉に来たら会えるかと思っていたが入る場所を間違えたか」
「あんまり君が深く潜ったらリリファルシアンに障るでしょ」
「そうなんだ。
春華、私を描いて再召喚してくれ。
魂のブレた君が呼べば私の毒が減る」
「???」
よくわからないけれどよれよれの絵を描いた。
羽根が黒いクロウさんが消え、羽根が白いクロウさんが絵から現れる。
「あぁ、少し昔に戻ったみたいだね。
ルースが居たら居たでうるさいから居なくて良かったかな」
「?」
クロウさんはよく見るとヨウとあまり顔が変わらない。
両手にクロウさん。うーん。
「クロウ、反省なんかしてないくせに何で来たのさ」
「君たちが楽しそうにしてるからだろう」
「ほぼ鑑賞室でしたが」
「まぁ、
僕が冥界に戻ったとて、ヨウがここに居たいなら可哀相だ。
ヨウが実体を得るまでの旅に付き合うよ。
翠さんと未暗さんとラズ君を除外させて貰ったのは、起きた時一人だとルースが泣くからだ。
さぁ、行こう」
「僕の出番取らないでよね!」
クロウさんは存外楽しげに歩き出した。
扉を開けると森の中だった。
「~♪」
上機嫌なクロウさんは歩い… てない。随分低く飛んでいる。
あれはひこうではなくエスパーの飛び方。
正面から野球ボール大の黄色いものが転がってきた。
鳥だ。
鳥はこちらを威嚇している。
「え、倒すほどでもなくない」
「ほらほら、おいでおいで」
クロウさんは手を伸ばすがべしっと叩かれた。
「春華すごいよこの身体!
僕の紫眼が効かなかったなんてはじめてだ!!」
「……てことは僕ら魔法使えなくない」
「……」
「ほらほらピーちゃんおいで」
「ピ」
ピーちゃんは私の肩に乗った。
「名で縛り使役するとは」
「あれこれそういう話でしたっけ」
ピーちゃんは私の頭に乗っている。うーん。
「私が見るに、ここは私の時代だな」
森を出た小高い丘に神殿がある。
円筒形の柱は所々朽ちてはいるが……
「あれ、何なの」
「あれは神殿、というか精霊の住居だな。
人間が数百年に一度魔力の塊が取れるように作ったものだが、私達の時代ですら忘れられていた。
ちょうどいい、あそこでヨウの分の魔力を貰おう」
「魔力の塊?」
「見掛けは綺麗な宝石だよ。
現実の私の周りにも七つほど配置されていたから、今順番に割れているんだろうな」
そう言えばクロウさんは魔王なので怖いことも言う。
「それがあるから、人里に届くまでの緩衝材になってるのか……
それ今僕が取って大丈夫?」
「大丈夫だ」
リリファルシアンさんの泉の仕組みはどうなってるんだろう。
「ヨウ、蔦を出せるか」
「出せないよ」
「出せないのか」
「クロウも今は出せないでしょ」
「……本当だ、出せない!?」
「私の絵だから」
「僕たちは精霊だから、望めばすぐ貰える筈だったんだけど。
しょうがない、入るか」
クロウさんは恐れを知らず神殿の狭い入口に入って行く。
「ちょっとクロウ、春華も居るんだから慎重にね」
内部は外観と違い青く光るつるつるした洞窟。
私達が歩くと明かりがつく親切設計。
「人間だと判定されているみたいだな。
ふむ、となると」
キラキラ光る鶏卵ほどの大きさの緑の宝石がある祭壇で、突然声が聞こえる。
『力を望む者。私の問いに答えなさい』
「力を望むのは僕だから僕が答えるよ、何」
『その力、何に使うのですか』
「僕が生きるためだよ」
『それがないと生きられないのですか』
「うん。
そもそも、クロウを助けないと生き残っても全滅するからね、この力は僕、クロウ、妖精、人間、全てのものを助けるために使うんだ」
『良い答えですね。素晴らしい』
「こんな簡単でいいの?」
「精霊は嘘がわかるものたちが多いからな。こんなものだ」
『ではこの力は貴方に差し上げます。
力がよく馴染むように私も協力いたしますね』
リリファルシアンさんを緑にしたような妖精さんがにっこりと微笑みながら現れた。
「僕は身体が欲しかっただだけなのに
えぇい、緑華嵐!」
ヨウはクナイと緑の魔法(宝石の効果で使えるようになったのかな?)
を操りながら、緑の守護者さんに攻撃をかける。
「ヨウ頑張ってー!」
「ピー!」
「いいなぁ。
思いっきり身体を動かしたりしたことなかったから、僕もあんなことしてみたかったな」
「やってる方は大変なんですけど!!」
「いい汗を流しましたわ」
キラキラしてる守護者さんとはいつくばるばかりのヨウ。
私は聖水をヨウにあげた。
「ありがとう」
「頑張って下さいね」
守護者さんに手をふって別れた。
教会まで戻ってきた。
「僕は帰るよ。
死ぬばかりだと思っていたけれど、少し答えが見つかった気がする」
「クロウさん、大丈夫ですか?」
私はクロウさんの両手を握る。
私と同じくらいの大きさの手。冷たい。
「大丈夫。少しルースに頼ることにする。
だって何しても離してくれないんだから」
「まぁ僕がぼろぼろになってまで勝ち取った経験、君のためになったなら良かったよクロウ」
「きっとまた会うことになるよ。よろしくね、春華」
「はい!」
あ、帰りに一か所寄る所があったんだと言ってクロウさんは別の扉をあけて行った。




