17.18歳
セーブした訳でもないのに現代に戻ってきていた。
ん、というか
授業内容が漫画のこと!?
何と、ここは私が名前も知らない漫画の学校らしい。私は入ったばっかりの18歳。
お財布の中にK高校の卒業記念カードが入っていた。うそ、覚えてないよ!?
私は絵が描けるようになっていた。
レイちゃんの絵柄を退化させたような絵。知ってたけど才能はなかったらしい。
「うち漫画の学校なんて行ける金銭的余裕あったんだぁ」
そもそも真面目一辺倒なお母さんが許した所が驚き。
えぇっと。
あれ、何か忘れてない?
携帯がタブレットになっていて驚く。
誰かから着信があったみたいだ。
さっきので授業は終わりで今は放課後。
授業終わった? とメールのようなアプリに連絡が入る。
校門で待ってるよ、と続けて入る。誰だろう?
けれどそんなようなやり取りは履歴に沢山あって、私はちゃんと答えている…
ええいいいや。
私は校門に向かった。
長い緑の髪をポニーテールにして、黒いシャツに赤いネクタイをして
何故かズボンのふとももにベルトが巻いてあったり鎖があったり服装はかなり違うけど
「翠さん!」
この現代人に擬態しきれていないエルフはやっぱり翠さんだろう。
良かったここはリリファの泉の中で。
「もう、今はそのコスプレしてないだろ?
でも俺緑髪ポニーテールって似合うよね。今日もしてきちゃった」
「どちら様ですか」
「春華ったら冗談きついな。
ほら、今日はパース定規買いに行くんだろ、行こう」
私の手を掴んで歩き出す。
いや翠さんはこんなチャラチャラした外見の人ではなかった筈だ。
中身はチャラチャラしてたかもしれなかったけど。
「春華、そこ段差あるよ」
「あ、はい」
服装は変だけど自分は車道側を歩き細かい気配りは忘れない。
あれ、これ翠さん?
わからなくなってきた。私も18歳だし…
「春華、今日はあまり喋らないね。何かあった?」
「いや……
その、背景の授業、難しくてね」
「あぁ。
今まで俺が描いてあげてたもんね。
でも学校行ってるんだから、ちゃんと練習しないと駄目だぞ」
明るくほほ笑まれても困るな……
パース定規を買っているあたりでふと正気に戻った。
自分の作品が見たい!
ここが泉でも未来視でも記憶喪失でも。
私の暗黒の中学時代と失われた高校時代は何を頑張ったのだろう。
「翠さん、私自分の作品が見たいの。お家帰ればあるかなぁ?」
「僕の名前、マリヤね、春華ちゃん」
別の名前を名乗ったのに、口調が翠さんに近かった気がした。
「手土産、お菓子じゃなくていいの?」
「一品作ってあげた方が、お母さん喜ぶだろ」
マリヤさんは慣れた感じでお台所に立つ。
外見が浮いてるだけでハイスペックエルフはそのままだ。
私は少し配置の変わった自室の中、私が一番大事なものを置きそうな場所を探る。具体的には机の上の高い棚の一番右側。
「あった」
分厚いノートにかかれたネーム。タイトルは虹の国。
でも2冊目の途中で止まっている。
あぁ、まだラズさんと未暗さんの課題で潜ったばっかりの所!!
「う、どうしよ……」
先の展開がわからない。
進まないと漫画も進まない。
「どうしたら虹の国に帰れるんだろう」
料理が終わった翠さんが帰ってきた。
「あ、春華、虹の国また進めるのかい?
俺それが一番好きなんだ! 頑張って」
頑張ってと言われても続き考えてるのは私じゃないし。
「翠さんって誰だかわかる?」
「キャラの名前簡単に忘れたりしないって!
女の子好きなハイスペックエルフだろう?」
「何かマリヤに似てると思わない?」
「俺が?
俺は春華だけ居ればいいよ」
「今のセリフ、絶対に翠さんは言わないわ」
「あは、格好よくなかったかい?」
「じゃあ紫水さんは?
紫水さんのことはどう思うの?」
「紫水… 様は……」
どう見ても日本人じゃないオレンジ色の瞳に涙が滲む。
「早く 紫水様に会いたい
いかないで 父様……」
戻った!
私は14歳だし翠さんはハイスペックエルフ!
ここはリリファルシアンの泉で翠さんは泣いている。……あれれ。
私は翠さんの髪を撫でる。
「あの時の妖精は、君か」
「?」
「取り乱して悪かったね。
僕の予定では、遊園地デートもするつもりだったのだけど、早く見破られちゃったなぁ」
「どうしてこういうプランだったんです?」
「春華きみ、肩凝ってるだろう」
え、バレバレ?
「今度それ用の薬湯淹れてあげるけど、まずは君に
明るい未来もあるのだと、知って欲しかった。
リリファルシアンにも時代考証協力して貰ったんだよ。良く出来ていただろう?」
「ホラーでした」
「あとはね、君とよく話したかった。
何でだろう、僕に子供時代なんてなかった筈なのに、君を見ていると懐かしいんだ」
「それは紫水さんの、子供だからでは?
支えてあげたいと、思っているんですよね」
「そう……
そうなんだ。大切な人。
あの人が俺を見ていなくても、助けてあげたいんだ」
具体的には270ページ目。




