15.決戦①
「やっと来たか、待ちくたびれたぞ」
黒が基調の広い教会の内部。
教徒が座る席などはなく、ステンドグラスの下に王様の椅子だけがある。
「おい、指輪はどうした」
「泉の中で落としました」
「……」
紫水さんは目を見開いたまましばらく固まった。
「どうせ俺は魔物にも、人間にもなれないんだ…。
いいんだ、俺を受け入れてくれるのなんてクロウだけなんだ」
「いや、その期待は重いんじゃ」
翠さんが口を挟む。
「お前まで裏切るのか」
「はじめから除外しておいて、その言い方はないでしょう紫水様。
僕は今回は回復魔法しか使わないけれど、
僕が勝ったら貴方を持って帰ります」
「恩を仇で返す奴らだ。
もういい、まとめてかかって来い!」
「ちょっと可哀そうね」
「未暗、お願いします!」
作戦通り未暗さんが紫水さんの動きを封じる。
ほんの少しでも間ができると紫水さんが魔法詠唱しようとしているのがわかって、きっとそれを一撃でも受けたら全滅するだろう。
いや
紫水さんは攻撃魔法を詠唱する気はない?
何かを組み立てているような動きだ、何だろう
「忌まわしきこの身の呪い。
かのものに受けし制約。
果たされなかった願い。
全てを無に帰すことを誰の息子でもないラズが命じます
絶禍根水撃!!」
攻撃のタイミングで未暗さんが離れ、紫水さんに攻撃が直撃する
と思ったら、10分の1ぐらいがラズさんに返ってきた。
「何ですって!」
「最大出力で魔力ぶつける奴があるか! 死ぬぞ!」
「きゅう」
ラズさんはのされている。
「ありゃ、これは負けだね」
「負けね。
しかも敵に塩まで送られて……
情けない」
「ラズが気絶しててよかったな」
「嫌がっても拒絶してもあいつは俺の子孫なんだ……
シェンが他の奴と人生を共にしたのは良い。
それでもなかったことにはしないで欲しかった」
「あら、置いて行ったのは貴方じゃなかったの?」
「俺は勝手な奴なんだよ」
ずぶ濡れのまま腕をくんで紫水さんは格好つける。
「鎖で命を繋いでおくのがラズのためだと思ってた。
けどこいつは命を捨ててまで俺に逆らいたかったんだろうな。許さないけど」
「そういう所じゃないですかね紫水様」
「何だ」
「クロウさんが言うこと聞いてくれないの、とか」
「……
君はずっと、私が縛り付けなくても傍に居ただろう。
そういうのはね、君しか居なかったんだよ」
紫水さんは両羽に包まれて消えてしまった。




