14.呪い
「君そんなこと思ってたのかい?」
「若い頃の話じゃし、若い頃の!
でも婆はこの子らが不憫でのう」
「だいたい予想通りだけど……
ラズ?」
ラズさんは耳を塞ぎうずくまっている。
「いっそ一思いに殺して頂けたら」
「逃げては駄目じゃよ」
「そもそも紫水が全部悪いんじゃないですか。
ちょうど良い、ラスボスでしたっけ。憂さを晴らします」
「私もせいぜい血液提供ぐらいかと思ってたわ。結婚しなくちゃいけなかったなんて」
「あ」
クランさんが何か言いかけた所でモモさんに口を塞がれる。
「してやらんのか、結婚」
「別に私は構わないけれど、選択肢がないなんてラズが可哀相じゃない」
「未暗、貴方がそういう人なのはわかっていました。
でもせめて私は何か格好つけたかった……!
家同士の呪いで結婚なんてしたくなかった」
「ラズだってこう言ってるしねぇ」
(未暗は何か誤解してると思うんだけどな?)
翠さんの心の声が聞こえた。
「血液提供でも魔力減退するよ」
「あら、良かったじゃないラズ」
「いや……」
「血清とかは僕らの代でも作ることは出来なかったけど、ラズ君は生命力担保があるのだから研究してみるのもいいかもね」
「……未暗」
「なぁにラズ」
「魔法科学の使えない私なんて、ただの役立たずですよね」
「そうね!」
未暗さんは笑顔で答えた。
「ということで私等が教えてあげられることは以上じゃ。
達者でのう、若人よ」
「結局指輪はどうすればいいんでしょう」
「それ、ルーファスのお父様に返したら捨てられると思うな。
捨てられたら僕たちの魔力結合がさらに悪くなるから、保管しておいた方がいいと思うけど」
「私も捨てたいです」
「じゃあ僕が預かっておくよ。
ただし僕も死者だから、無くしてしまったらごめんね」
結局何も進まなかった。
私はずっとこんな寿命では未暗を迎えに行けないと思っていたけれど、今度は未暗が私の魔術的才能を守るため遠慮してしまう。
……いや、未暗は私のことなんて、近所の小さい子、ぐらいにか思っていないんですが。
それもこれも全部紫水のせい。
私が何もなくても未暗に好かれるほどの甲斐性がないのも紫水のせい。
今は外れているけれど、絶望をもたらしたあの鎖も。
私の愛する民が危機に陥っているのも全て紫水のせい。
「早く討ちますよ、紫水を!」
「ラズ、やる気があるのはいいけれど、装備品や隊列、作戦の確認をしないとね」
「今回は未暗とラズのターンだからね。
僕は回復役に入っていいと思うけど、春華とヨウ君は見学でいいんじゃないかな。
紫水様は子供に甘いから、無理に戦ったりしないと思うよ」
「はーい」
まだカブラペンの使い方もわからないのだもの、仕方ないか。
「未暗は紫水の足止めをお願い出来ますか?
私は長めの魔法詠唱をしますので。
ええ全身全霊、全解放の魔法で負けたら私も諦めます」
ラズさんはどろどろとした邪気を放っている。
「いいわよ。
剣技では同程度だもの。延ばすだけなら楽勝ね」
「ヨウと私は出番なかったねぇ」
これからこれから、という声が聞こえた。




