11.スイーツ攻撃
「私ただのおなごじゃし。攻撃とかできんし。
皆のもの攻め入れー!!」
ミミズのように歩行するずんだもちが攻めてくる。
「遅い!
疾風斬り!」
未暗さんは駆け抜ける間に七ずんだ斬った。
「弱すぎる!
ってラズ」
ラズさんはところてんに巻かれてきゅうとなっている。
私も何とかしてあげようとしているんだけどSTR4だし。
未暗さんが一薙ぎするとところてんは切れた。
「ルーファスの末裔よ、弱すぎるの」
「ここは私のフィールドではないんです」
「モモさん、彼等に話すのが恥ずかしいなら彼等だけくたくたにすれば良いのでは?」
「我々を売るんですか翠!」
「それもそうじゃな。
良い、良い。
ではそなたら3人は観賞席を用意するでの。茶でも飲んでいてくれ」
「まぁ、体力温存だよ。頑張ってね」
私と翠さんとヨウ(の蝶)はモニター付の部屋に通された。
「おぬしら、せっかく同じ年頃で生まれのに付きおうてないのか」
「いくら未暗のご先祖様と言えど余計なお世話です」
「私の方が随分年上だしねぇ」
「私の代はもっと祝福が強かったからの。
クランとは同じ年じゃったが彼が寿命で死んでも私はこの姿のままじゃった」
「祝福……?」
「私はまだ迷うておる。
言いにくいことじゃからのー」
そう言う未暗のご先祖様は我々がロッククライミングもとい飴の壁にコーティングされたチョコレートが刺さっているものを上るのを眺めている。
どうして無駄に体力使わせるんだろう。
「あぁっ」
足を滑らせて落ちそうになる。
「ちょっとラズ、大丈夫!?」
未暗が手を取ってくれた間に耐性を立て直す。
「おぬしの良い所とは何じゃルーファスの末裔よ」
「私は肉体派じゃないんです。魔法科学は今は使えないし……」
「魔法が使えずともクランは良い男じゃったがの。比べるのは酷か」
「とても傷つきました」
「まぁ、これでも良い所はあるのよ。
紫水に召されなければ魔法科学は民のために使うつもりだったのだし。魔力消費の関係でかなり制限されるようになったけれど、紫水の統治にも協力してたじゃない」
「それは、普通のことでしょう。
誰だって力を持てば人の役に立ちたいのでは」
「うむ。お人好しなのはわかった。そういうのもありじゃな」
「?」
何とか上りきってモモの所まで着いた。
「じゃがのー。やはり酷じゃしのー」
「あの、我々も急いでいるので無駄に体力消費させるなら早くお話をですね」
「素敵なイベントを用意出来れば良かったんじゃが、何よりクランは日常的に気がきく男じゃったからのー。
そうじゃ、このトラップいっぱいのスイーツ王国の何処かにクランがおるからの。
彼を見つけて料理用の包丁を貰うんじゃ。
そしたら料理室に案内するから
お互いがお互いのためにおいしいと思う料理が作れればモモ婆さんの過去を教えてやろう」
「やっと具体的な筋道が立ったわね。もしかして考えてなかった?」
「VTRの編集に忙しかったんじゃ。
あとはクランに任せるの。婆さんはそなたらの仲間がおる鑑賞室で待っとるわい」
せめてクランさんの外見的特徴を教えて欲しかったが、モモは既に消えていた。
「戦いは大変じゃないけど、もうくたくた。う、目から砂糖が出そう」
未暗は日頃から甘いものをたべないので参っている。
「お茶系は翠に任せていたので水しかないんですが」
「ありがとう」
未暗は水筒の水を飲み干した。
リリファルシアンの泉では空腹は感じないという説明だったので、精神的なものだろう。
道中は、だいたい未暗が何とかしてくれている。
未暗の剣技でもどうにもならなかった固い芋けんぴなんかは私の水でふやかした。
菓子類というのは大抵水に弱くて助かる。
「この戦い、意味があるんでしょうか」
「ラズの反応速度は上がってる。いいことなんじゃない?」
「修行なんて、するとは」
チャリン
首から下げていた二つの指輪がぶつかって音を立てる。
「そう言えばこれ」
考えたくなくて忘れてた。サイズの違う二つの指輪。
「考えたくないな」
指輪が見えないように握りしめると、魔物たちが引いた気がした。
「やぁ、いらっしゃい。
クランお爺さんの屋台にようこそ」
急に出店が現れたと思ったら、私の黒髪の姿によく似た男が立っている。髪は紺色だけど瞳は私より青い。はっぴなんか来て完全に遊んでいる。
「包丁が欲しいんですが」
「包丁は一等賞の景品だよ。そこにドーナッツ投げがあるだろう。一人15本ね」
そう言って渡されたドーナッツは浮輪ぐらいあるし、
ドーナッツを入れるピンは3メートルくらいある。
「無理では!?」
「未暗さんは体力あるし、ラズ君は魔法使えるだろう?
大丈夫、ドーナッツはいっぱいあるさ」
「もうリング状のものは勘弁……」
「うん、いけるわ」
「え」
未暗はドーナッツを片手に持ったまま、忍のように細いピンを上って行った。
ドーナッツを入れたら空中旋回して着地。
元々身体能力高いと思っていたけどそこまでとは。
「ラズの分もやってあげたいけど一人15本なのよね」
「一人15本だねぇ」
「ラズ頑張って!」
「水でドーナッツが溶けるんですが!?」
「所で君は未暗さんに指輪は渡さないのかい?」
水を早く動かすことで少しだけ浮かせていたドーナッツが崩れた。
「いやあの……
私ももう死体のようなものですし……」
「そうかぁ。
僕もねぇ、モモが大きくなるまで待とうと思っていたらそんなに僕が待てなかったんだ。
モモはきっと理由なく僕を好きで居てくれたんだけどね」
「未暗は私より良い人が居るでしょう」
「そうか。君達は将来を誓い合った訳ではないんだ。
じゃあ余計に君が頑張らないと」
「……我々が呪われているのならば
私の代で費えさせるのも一つの方法ではないのですか?
ご先祖様には、申し訳ないですが」
「君がいいならそれでもいい」
いい訳じゃない、けれど。




