10.スイーツ王国
いざ扉を開けてダンジョンにGO! するとそこはスイーツ王国だった。
ココアパウダーの地面。わたがしの雲。クッキーの煉瓦。
踊るジンジャークッキー。跳ねるわらびもち。
「う」
未暗さんが口元を押さえる。
「このラズの机上みたいな糖分の塊。駄目よ、筋肉が溶ける」
「悪かったですね筋肉溶けてて!」
おやわらびもちがこちらに気付いたようだ。
すぐに翠さんが前に出てわらびもちをのしていく。
「やっぱり僕が一番早いんだから弓の方が良かったかな?
ねぇ二人とも喧嘩終わったら早く来て。
あと誰か包丁持ってない?」
打撃では致命的なダメージを与えられないわらびもちが、包丁という言葉を聞いて一目散に逃げて言った。
「これはスイーツ特効、攻撃力+200の出刃包丁が何処かにあるフラグでは?」
「そうだねぇ。包丁探そうか」
「取り乱して悪かったわ。剣では駄目なのかしら?」
「魔法ってどう使うんです。
私完全なお荷物では」
「あぁ。
僕は詠唱なしで使えるけどはじめは詠唱した方がいいんじゃないか?
精霊に名前を明かして、何をして欲しいか具体的に頼むんだ。
自分の魔力の性質と合わせてどんなことが出来るかは自ずとわかっていくと思う。
ちなみに春華は魂の組成が違うからこちらの精霊は反応しないと思うよ。
その剣の使い方がわかるといいね」
「そうですね」
このペンの使い道とはなんだろう。
今の所迷子防止の印つけぐらいしか出来ない。インクは無限大のようだけど。
おそるおそる進んで行った我々はすぐにジンジャークッキーに囲まれてしまう。
手を繋いだジンジャークッキーにくるくる回られる。段々輪が小さくなってきたようだ。
「ラズ、水は君の方が得意だ。早く詠唱して」
「何で私がこんな
……
ルーファスの末裔
黒い髪と青い目を持つラズがお願いします。
水の精霊よ、あのジンジャークッキーを洗い流して下さい!」
ということで私たちまで水に飲まれた。
「はじめてにしては上出来じゃないか。
まぁ僕たちから円を描くように、って指定出来ると良かったね。
リリファが技名とか好きだから、今度使いなよ。ウォーター・ロンドとかでいいんじゃないかな」
「ここは水中の筈なのに水が出て来るのは一体」
「どうしてラズは魔法が使えるのかしら?」
「この世界の人はみんな使えるんじゃないんですか?」
「使えないわ。
私は魔力を無効化するほど適性がないけれど、普通は使えない。
翠と紫水が使えるのはわかる。人間ではないから。
泉の魔力値が高いから、地上では科学で補わなければならないラズが魔法を使える、というのはわかるけど……」
「私の先祖に魔物が居るんでしょう。未暗の先祖には居ない」
「それは」
「いい加減気付いたかひよっこども」
急に天から声がする。
赤い髪の女の子が舞い降りてきていた。
「どう見ても私の親族!!」
「何じゃ、勘がよいな。
いかにも、我が名はモモじゃ。
私の姉が未暗の先祖じゃの」
「随分、幼い姿だけれど、貴方は泉に核を返したのですか?」
翠さんが尋ねる。
「そうじゃそうじゃ。
私にはこの役目があると思ったからの。
リリファの泉で待っておったんじゃ」
「もう何も考えたくないな」
ラズさんが苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「そこのはルーファスの系譜じゃろ。
私の時代もみんな短命でな。よく命を繋いでこれたものじゃ」
「まぁもう私独りですけどね」
「それは可哀相じゃの。責任重大じゃ。
クランも弟が生まれるまでは悩んでおったからの」
「クラン?」
「婆さんの長い回想にはいずれ付き合うて貰うしかないが、私も昔語りをするの恥ずかしくてのう。
おぬしらがくたくたに疲れ果てた所で回想を挟むことにする!」
「だからどうして未暗の系譜は
脳筋なんですか――!!」




