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第二話

ふふふふふ♪

私は笑っていた。目の前すら見えない、暗闇の中で……

ふふッ♪キモチイイ!アハハはは!

いつ終わるのか、いや、終わるのかさえ分からない快楽の中でいつまでも、いつまでも笑っていた。

オヤ?また誰か仲間がやって来たヨウダ。

その仲間も気持ち良さそうに、狂ったように、笑い続けていた──

───ふふ♪君もおいでよ♪

───薄れていく意識の中でそんな声が聴こえた気がした。


◇◆◇


「ッッ!!」

目覚めたら学校で、授業中だった。

ここのところずっとだ。

寝ても必ずといって良いほど悪夢を見てしまい、寝不足気味である。

しかも、寝不足で寝てしまっても悪夢を見る始末である。どうしたものか……

私はため息を吐きながら、窓の外を眺めた。

目線の先には最近、連続して人身事故が起こっていると噂されている駅が、私を呼んでいるかの様にゆらゆらと映っていた──


「お前、最近ずっと寝てるよな?」

「…………あ、颯太」

幼馴染みの颯太が話し掛けてきたが、ぼーっとしていたため言葉の意味を理解する事が出来なかった。

「おいおい、本当大丈夫か?少し休んだ方が良いんじゃ無いか?」

「うん……最近、疲れてるのかな?保健室に行って帰らせて貰えるか聞いて来るよ」

「おう、学校が終わったら、特別に何か買って、お見舞いに行ってやるよ特別だからな!」

「ふふっ、ツンデレ」

「だから誰がツンデレだ!」

「じゃ、また後で」

「おう!その時は俺がツンデレじゃないことを証明してやんぜ!」

私は颯太に軽く手を振りながら教室を出て、保健室へ向かった。

──「あら?えーと?斉藤、いや佐藤さんどうしたの?」

「先生、名前が分からないからって、取り合えず日本で一番多い苗字を言えば良いやという考えは止めて貰えませんか?」

保健室に入ると、保健の先生がいつもの調子で迎い入れた。

「あーごめんごめん、それでどうしたの?」

「ちょっと具合が悪くて帰らせて貰えるかなと思って来てみました。因みに私の名前は、荒木です。そろそろ覚えてください」

この後者の方のやり取りはもう3回目である。

「あー荒木さんか……ちょっと待っててね?…………えーとどこにあったけ?あっと、あったあった」

先生は何やら紙を取りだしさらさらと書き始めた。

「よし!後ここに名前を書くと公認になるから、書いて職員室に出してね?あ、公認理由聞かれたら適当に誤魔化しておいて」

「………何故?」

「名前間違えて、不快な思いをさせちゃったかな?ってね」

「不快は不快だったので有り難くもらいますが、もうそろそろなれてきましたよ」

「ありゃ?何回しちゃったんだっけ?」

「3回目ですよ」

「テヘ☆」

いい大人が可愛らしくベロを出しながら利き手を頭に乗せていた。

「………それでは、公認届けありがとうございます」

私はそのまま保健室を後にした。

ドアを閉めた瞬間、先生が叫んでいた気がしたがドアが閉まる音のせいで聴こえなかった。


◆◇◆


私は職員室で誤魔化しのオンパレードを無事に終了させた後、逃げるように学校を後にした。

「はぁー。何で疲れてるから帰るのに、疲れが倍以上になってるんだろ?」

私は駅のベンチで延びる様に座っていた。

ピンポーンと通過の電車が来る事を知らせるベルがなる。

このベルが鳴ってから1分もたたないうちに、私の乗る電車が来てしまう。私は重い身体をほぐすように立ち上がる。

「えッ??」

死神が手招きをしていた。

少なくても私にはそう見えた。

彼女と過ごした記憶が走馬灯の様に踊り出す。

──何時も静かそうにしてるのに、何かしたいことがあると強引に引っ張っていく私の親友。

──あの日、初めて出来た彼氏と初めてデートに行くと嬉しそうに語っていた、私の大事な友人。

──そして、その日から一生会うことが出来なくなってしまった私の一番の友達。

………近付いてはいけないと頭では分かっているのに、身体が勝手に前に進んでしまう。

私は泣いていた。

駄目だと思っても耐えられない。

後2歩程でたどり着く。私はもう耐えられなかった。

「ふふっ。久しぶり!ゆり」

もう聴けないと思っていた声が聴けた!後1歩!後1歩でさえの所にたどり着く!

その1歩が永遠に感じた。

しかし、その永遠にも感じた時間が終わり、さえの元へたどり着く。

「──さあ一緒に行こう!ゆり!」

私はさえに触れられた事に頭が真っ白になってしまい、そのまま身を任せてしまった───


プーーーウ!!

電車のクラクションの音が聴こえる。

あれ?私、今何処に居るんだっけ?線路?このままだと引かれる?あれ?さえは?さえ!何処?……あれ?……あ、さえってもう居ないんだった……ふふ♪私、何やってんだろ?まあ、でもさえと同じ場所でさえと同じ様にさえの場所に行けるのだったら良いか……さえ待ってて───

バキバキバキッ!ボキッバキッ!!

にゃははは!気持ちいい!

骨がボキバキと砕ける音に私は快感を覚える。

ナルホド最近、人身ジコガ多い理由が分かる。

──バキバキバキ!!

アハッ!さよアリガトウ!電車に引かれるとキモチイイことヲ教えヨウトしてくれたんだね!

バキッ!ボキッ!バキバキッ!!

ふふっ♪気持ちいい!キモチイイ!アハハハハはは!

さよ!さよ!アハハは♪

ふふっ颯太待っててね♪今、迎エにイクから♪

アハハはハハはははハハはハハハハ!!


◇◆◇


俺は胸騒ぎを覚えていた。

こんな感覚は初めてである。そして、教師の方も何やら慌ただしそうに動いている。

その証拠にこの時間も急きょ自習となっている。

がらがらとドアの開く音がした。

瞬間、周りから聴こえていた話し声がピタリと止む。

「ちょっと颯太君?おいで」

「はい?」

ここから俺の悪夢が始まったのだった───


「…………ゆりがじさつ?」

「………………………まだ断定は出来ないが、な」

「……………………………………………………もう今日は帰らせて貰います。」

「ああ。こっちでどうにかして公認にしといてやるから、ゆっくり休め」

「……はい」


◇◆◇


ゆいが死んだ。その事が未だに信じられなかった。

「くそッ!学校が終わったら俺がツンデレじゃないことを証明させてくれるんだろ!これじゃあ出来ねーじゃないか!」

───ふふふッ私は何時までも待ってるよ?

「ッッ!!」

そうだ!ゆりが待っててくれないのだったらこっちから追いかけて行かないとな!

丁度ゆりが飛び込んだと言う通過の電車がやってくるようだ。

恐怖なんてものは無かった。ゆりが待っている。それだけで十分である。

───大好きだったんだぞ?ゆり

「……待ってろよゆり」


俺は躊躇なく、生と死の境界線を死の方向に思いっきり飛び込んだのだった───

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