枯れた森を抜けて
小さな洞窟に戻ると、ナコが穏やかな寝息をたてて寝ていた。
もう少しだけゆっくりとしていたいが、時間が無いと言っていたな。
終わってからゆっくりとしよう。
「起きてくれ」
体を揺さぶると目を覚ましたようで、あくびをしかけて口を閉じた。
「ふぁ……くさい」
おっと。急いで服を魔法で洗い、乾燥させる。ついでにナコも体ごと洗ってやった。
さ
「どうだ?」
「くさくない」
よし、それではとさっきの事を説明し、私が行ってくるからと言うと、反対されてしまった。
「一人は嫌、だからわたしも行く!」
「さっきは待てただろう?」
「いや、怖い……」
「だが危険だ」
「ここにいても変わらないよ!」
なるほど、確かにそうだ。この世界で安全な場所など無いのだろう。
「なら、私が守るしかないか。安心するがいい、私は強いからな」
そう言ってやると、少し笑顔になったようだ。
「それじゃあ城に行くか」
と私はナコを抱える。
「ひゃっ! き、急にお姫様抱っこ……」
なるほど、この抱えかたはお姫様抱っこと言うのか。
「さあ行こうか、ナコ姫」
広い森を駆け抜け、襲ってくる獣や木々を魔法で押し流したり蹴散らしたりしながら、私はなかなかいい気分だった。ナコは小さくなっているが。
枯れた森を抜け荒野に出ると、目の前には大きな建物群が聳えていた。城と城下町というやつだろう。
家々の間を抜けると巨大な門と壁に行く手を阻まれる。
うようよといる人だったらしきものの多さからこの町にどれだけの人が住んでいたのかが伺える。
もし世界中でこれが起きているならどれだけの人が犠牲になったのだろうか。想像もつかない。
閉まっている門を飛び越えて城へ入る。もちろん魔法でナコを守るのも忘れていない。
鎧を着ているものや身なりの良いもの達が襲ってくるが、無視して駆け抜ける。
ナコは目を瞑っているが、声は聞こえてしまうのだろう。
時折怯えたように震えている。
玉座の有る巨大な部屋に出ると、部屋の中央に何かが居た。
得体の知れない何かは人の姿をしているが、人とは思えない気配をしている。
「キヒッ、来たか、貴様らで最後だ、もうこの世界は終わり、だ!」
両手を広げ、耳障りな声で喚めきたてているコイツが……。
「お前が、魔神か」